第一章 脱出篇
第四話 理不尽
序章
突如太平洋上に降り立ったもう一つの巨大な日本列島。
新たな超大国、
そんな激動の時代の中で、幼馴染の剛腕美女、
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雨漏りの音が聞こえる。
一定のリズムで
記憶を辿るに、彼はどうやら何者かに
全身に意識を巡らせ、五体の無事を確認する。
それほどの恐怖が
お陰で判ったことだが、どうやら体は拘束されていない。
今度は自分の置かれている空間の様子を探ってみることにする。
注意深く耳を澄ますと、呼吸音が
どうやら
ガラキリガラギリガラキリガラギリと音を立て、突如四角い光が差し込んできた。
誰かが扉を開けたようだ。
男の影がバケツを持って歩いてきて、
「起きろ!」
男は怒鳴った。
一人寝覚めが悪かったようで、男に蹴りを入れられていた。
「おい何すんだ、やめろ!」
瞬間、男は
「お
「あ……。」
仄暗い中で対面した男の顔には見覚えがあった。
殴り倒される前のわずかな記憶がスローモーションで蘇る。
そう、間違いなく
男は部屋の明かりをつけた。
そこに囚われていたのは
見た所いずれも若いが、三十代の男もいれば十代の少女もいた。
そして、その中には
「
中学の同窓生にして大学の同期、
高校の同窓生、
「
「
二人は戸惑いを隠せない。
勿論
そしてもう一つ、二人の顔にはマジックの様なもので数字が書いてあった。
「なんだお
男はそう言いながら懐から薬剤包装を取り出した。
八個、人数分がセットで繋がっており、男はそれを一つ一つそれぞれの目の前に落とした。
「二時間
「はあ? ちょっと待てよ!」
囚われた男の一人、3と書かれた男がすかさず声を上げた。
目つきの悪い、いかにもガラの悪そうな男だった。
「いきなり
この場に囚われているのは
宛らチンピラとガチの極悪人といった
女性陣は
この場と状況についての思いは怒りを覚える者、未だ戸惑う者、ただ打ちひしがれて嘆くものと様々だったが、薬を前にして思ったことは皆
しかしこの抗議の言葉に、この場を支配する犯人の男は冷たい笑みを浮かべて言葉を返した。
「なるほど、こんな何が起こるかわからない薬は怖くて飲めないと……。まあそれも結構。お
そう言うと男は水の入ったバケツをもう一つ部屋の真ん中に置き、扉を開けたまま部屋から出て行った。
廊下から男の不気味な笑い声が響いていた。
女性陣は
雨音が聞こえないという事は、上で何らかの水漏れが発生しているか、雨が止んで間もないという事だろうか。
「駄目だ……。建物自体が閉ざされてる。ガラス窓はあるが分厚すぎて割れそうにねえ。」
「ガラス窓? ってことは外が見えたのか?」
「ああ。見た感じ山の中だ。」
音の鳴る方へ行くと、3番の男がガラス窓を殴っていた。
「っ
ぶらぶらと降られる男の手は真っ赤になっていた。
そもそも監禁している犯人が部屋の扉を
三人は元いた部屋へと戻った。
「出る手段は無かったようだな。」
囚われた最後の男は壁にもたれて座ったまま凶悪な顔を獣の様に歪ませて笑っていた。
「いけないよお
極悪人、その言葉で何か思い出したように
「どこかで見たことがあると思った。お
金目の物を漁っていたところ5歳の子が起きてきたため、父親まで起きて来るとまずいと思い首を絞めてこれも殺害。
結局家主が起きてきたので何も盗まず逃走したが、行き当たりばったりの
裁判ではその身勝手な犯行動機と経緯、さらに子供を含む二人の殺人で死刑の判例があったことから、検察側は十分な証拠を持って死刑を求刑した。
しかし判例の事件と罪状が大きく食い違っていたことから弁護側は量刑を争い、最高裁まで巻き込んで裁判が続いていた。
そしてその中で世間を
「逮捕された事件以前にも年少期から七人も殺していたと、その中には両親まで含まれていたと打ち明けた……。」
その声に、先程まで独り言を言っていた女とそれを慰めていた二人は身を寄せ合って震えていた。
「どうも裁判の旗色が悪そうだったんで、いっそ
ぞっとするような声だった。
他人の命を何とも思っていない、この世のありと
彼はおそらくこの場にいる中では最年長であろうが、到底頼りになる大人ではなかった。
狭い部屋を不穏な空気が支配する。
そんな場を収めるべく、二発の手拍子が鳴らされた。
「脱線はそこまでにしとけ。」
年長者の一人は
あとは子供と、どうにも他人事のように他の人間を見ている女だ。
とはいえ消去法で仕方なくというわけではなく、
「さっきの男は何か
直視が
常人には大抵備わっている、こいつは次の瞬間殺しにかかってくるという事はまずないだろうという当然の安心感がこの
背丈はおそらくかつて直接会った中で最も長身の
ここでビビらないほどの胆力は
幸いなことに争うつもりは無いらしく、
「
「あ、じゃあ!」
突然声を上げたのは1番の、おそらく十代の少女だった。
「折角だからみんな自己紹介しましょう!このままお互いの事を何も知らないとやりにくいし。」
先程までと打って変わって何とも間の抜けた空気が部屋を流れる。
塞ぎ込んで独り言を呟いていた7番の女まで、脇の少女をわけもわからず開いた口が塞がらない様子で見ていた。
「せっかく顔に落書きしてくれてますし、この順番で行きましょう。まず1番の人は…。あれ? 1番の人、いませんか?」
彼女は場を和ませようとしているのか、本当に自分が1番だと気づいていないのか、周囲を見渡して1番の顔を探していた。
「1番は君だよ。じゃ、自己紹介お願いします。」
「ふえ? あ、そういう事ですか……。」
少女は軽く咳払いして立ち上がった。
⦿
「えー、ではまず
⦿
手を挙げて聴いてもいない情報まで喋った
おそらくこのうら若き乙女は日頃からこの
大きな目をした、15歳という年齢よりもさらに幼く感じる顔立ちは実に愛らしく、先程の天然な振る舞いも厭らしさを感じさせない。
体格的にはこの場で最も小柄な
しかし
無理をしているんだな。――そう察したのは
拍手を始めたのは次に控える2番の
それに続くように
「ありがとうございます、ありがとうございます。では次、2番のあなた! あなたが2番ですよー!」
マイクを手渡すようなジェスチャーを受け、
⦿
「2番、
⦿
「イエーイ! では次、3番のお兄さん!」
指名された男は頭をかいて渋々自己紹介を始めた。
「3、
「じゃあ次は僕か……。」
⦿
「4番、
「5番、
「6番、
⦿
「えー? だってお互いの事よく知った方が良いじゃないですか!」
「とにかく、
「もー……。」
今の流れに乗り気じゃない
漫画であれば「むー。」だとか「ぐぬぬ……。」だとか、そういう書き文字が脇に添えられていただろう。
不機嫌な様子の
彼女は座ったままか細い声で自己紹介を始めた。
⦿
「
⦿
「うわ、ヒモかよ……。」
3番、
学校を出たら働くつもりの彼からしてみればヒモ男の生き方は理解できないし、そんな人間を養う女はもっと理解できなかったらしい。
「彼の何がわかるのよ! いい男だったのよ! あの時だって
察するに巻き込まれて殺されてしまったのだろう。
「わ、悪かったよ…。そんな事情があったのか……。」
これには流石に
「おーい!」
「これ、
ただでさえ微妙な空気になった場をさらにややこしくする
それを遮ったのは
「あ、悪いな。そういえばアンタが言う事
「いい度胸だな
「そんな義務はないね。」
笑う
そんな中、
「ちょっとアンタ達! 自己紹介が終わったんなら本題に入りましょうよ。アンタ達はどうすんの? この薬。」
すっかり忘れていた。
あの男が言っていた、飲まなければ確実にこの後死ぬという胡散臭い薬の話だ。
「人攫いの言うことだぞ? 信用できるか?」
「同感だな。」
「
慎重派は
「
「おお、急にべらべら喋るようになったな姉ちゃん。だが
「ちょっと怖いけど、確かにこんな風に人を集めていきなり毒殺も無いかなって。」
「どうでもいい、何もかも……。」
「うーん……。」
「飲むこと
「どうでもいいからそっちで決めて……。言う通りにするから……。」
心底投げやりといった答えが返ってきた。
「じゃあこうしましょう。
「ほー、上手く
一々茶々を入れる
そしてバケツの水を
「うわ、みんな同じ
「唾で飲めるんならいらねえだろ。」
彼は水には手を付けず、そのまま飲み込んだ。
続く
「何事もなさそうね……。」
その様子を見て
「じゃ
その様子に
残りの二人も渋々後に続いた。
⦿⦿
争いの種は無くなり、再び
部屋では
それと
「やべー予感がするな……。」
天井を見上げる
「窓から外を見たところ今雨は降っちゃいねえ。じゃこれはなんだ? 少し前まで結構きつく降ったってことだ。そしてここは山ん中……。」
丁度言い終わるや否やのタイミングだった。
突如大きな爆発音の様な轟音が響き渡り、部屋は大きく傾く。
「きゃあ‼」
「何だ⁉」
「畜生、土砂崩れか‼」
⦿⦿⦿
誰かが自分を優しく包み込むように抱き締めている。
まるで幼い頃に戻ったようだった。
そして懐かしき幼い少女のイメージが
「
その面影に気付くと同時に、
⦿⦿⦿
どうにか這い出すと、既に何人かは
「他のみんなは?」
そう言うとほぼ同時に
歪んで割れてしまった眼鏡から悲しそうに
「死ぬかと思ったー‼」
年上の威厳も何もない姿で彼女は
一人足りない――。
同時に、予想された、しかし決して見たくはなかった
だがほんの少し前まで元気に動いていた人間については全く初めての事だ。
人形のように動かない命を失った幼い体が、
青白い顔の目尻から
先程語っていた彼女の夢は、余りにも理不尽な予期せぬ形で破れてしまった。
他にもやりたいことは沢山あったろうに、二度と叶わないまま終わりを迎えてしまった。
罪悪感と無力感に
照りつける太陽すら冷たく感じてしまうほどの不条理に、誰も何もできない。
残された七人が立ち尽くす中、聞き覚えのある声が響き渡った。
「『
「どういうことだ! お
男はその腕を軽くひねって
「やめておけ。今のお
藻掻き苦しむ
その様子を見て、
「もうやだ……帰りたい……。」
男は
「帰れるさ、
突如告げられた突拍子もない目標。
彼らは本気でそんなことを考えているのか。
「そういえばその
高らかと名乗りを上げる声はどこまでもおどろおどろしく
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・
西暦2010年(皇紀2670年) 3月3日生
身長 152㎝
3サイズ B99 W61 H96
血液型 B
・
皇紀2654年(西暦1994年) 10月10日生
身長 186
体重 84
血液型 B
次回更新は、9月11日㈮
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