間章
箇条ゆらの考察 3
花宮里穗について。
御宇佐美しのぎについて情報を得るため、今回アポを取って会う約束をしていたのだが、彼女が待ち合わせ場所にくることはなかった。
その上連絡もつかないという徹底ぶり。あまりの対応にショックを受けつつ、先輩の嫌われ具合に感嘆していたのだけど……どうやらそうではないらしい。
花宮里穗のご家族に連絡を取ったところ、彼女は昨日から帰ってないという。
つまり、五月一日に被害にあったと考えるべきだろう。
待ち合わせに来ないのはもちろん、連絡しても出ないはずだ。彼女はすでに行方不明者なのだから。
連続誘拐犯でないと仮定すると、やはりあの影の仕業とみるしかない。
考えすぎ? いや、もう受け入れよう。居なくなった生徒も、先輩が踏み切りに飛び込もうとしたのも、あの影はすべて説明できてしまう。
思えば、神社で初めて遭遇したときもそうだった。先輩はあの影と対面した際、高確率で我を失っている。踏み切りも同様だろう。先輩を追いかけたのも、実はさらうつもりだったと考えれば違和感もない。
あの影はなんなのか、未だにつかめない。
まさか本当に、先輩の言うとおり御宇佐美しのぎなのだろうか? しかしそれでは生前の在り方とギャップが生じてしまう。
それもこれも、すべて情報不足のせいだ。
花宮里穗に話を聞けなかったのは痛い。
もしかしたら、先輩のお姉さんの人物像を詳細に知ることができたかもしれないのに。そこから、影と御宇佐美しのぎの関係性を断つことができたかもしれないのに。
私は、どうすればいい?
先輩は、あのノイズがかった影とお姉さんを重ねてる。
アレを追いかけて、手の届かないどこか遠いところへ行ってしまいそうで、怖い。
怖くて仕方がない。
どうしたら、彼を捕まえられる?
どうしたら、彼をつなぎ止めることができる?
だれか教えて。私はどうすればいい?
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