欺瞞な俺と天然な君

@bottomy

第1話

欺瞞に満ちた人生だった。

嘘の積み重ねが今の私を作りました

私は嘘をコミュニケーションを図るためのツールとして依存するようになりました。


4月、新しいクラスになり

たくさんの友達ができて楽しかった中学一年生。2年生もきっと楽しく過ごせると思い新しいクラスの席に着きました。運良く友達と席が近く、部活の話しやら友達の愚痴やら話してました。

程なくして担当教師の挨拶が始まり、クラスメイトの自己紹介が行われました。クラスメイトの顔と名前を覚えてHRホームルーム終わりに気が合いそうな奴に声をかけました。

コミュニケーション能力には自信がありました。


クラスにも慣れ楽しく過ごしてる時に、ふと1人の女の子が気になりました。

その子は一匹狼というか女の子には珍しく群れるのが嫌いなタイプだったと思います。

変わった子がいるんだな、その時はそのくらいで、私は友達と好きな女優は誰だとか今度何して遊ぼうかなんて話をしました。


2年生初の席替えがあり、私は例の女の子と隣の席になりました。名前は葵だそうで、簡単な挨拶を終わらせて抱いた印象は冷たい人だな、でした。

席が変わり授業が始まり、私が先生の出した問題を早々に終わらせて暇を持て余してる時、ふと隣を見ると真剣に問題を解いてる彼女がいました。彼女は真面目なタイプなんだな、と思い私はそれに合う話し方をしようと思いました。

それから彼女と話をする機会が何度かありましたが、あまり話は盛り上がらなくて私は焦りを感じていました。次第に私は彼女に嘘を見抜かれてるのでは無いかと、そう思うようになり、私の中で自己嫌悪の念がグルグル回り続けていました。

そんなある日、彼女から名前を呼ばれました。その時、私はやっとトドメをさしてくれるのか、そう思い彼女の方を向きました。

すると彼女は水のりで作った透明の膜を私に見せて、「ねぇ綺麗でしょ?」って笑顔で言ってきました。

私は自分の嘘が見破られてなかった安心感と彼女の突拍子もない行動にお腹が痛くなるくらい笑いました。

涙が出るくらい笑いながら、あぁとても綺麗だねって言うと彼女は、そうでしょ?ってすごく誇らしそうに言って私にも作ってあげると言って机に水のりを塗り始めました。彼女は天然でした。

私の欺瞞でかたどったコミュニケーションは彼女には通用しませんでした。


それから彼女について深く知りたいと思うようになりました。

今まで嘘で作り上げた多種多様の私はいなくなり、私はよく彼女と話すようになりました。

彼女は真面目そうに見えて授業中落書きをしていたり鉛筆や消しゴムで遊んでいたりしていました。彼女は実はよく笑う子でした。

彼女は頭がそれほど良くなかったけど、努力家でした。

そうやって彼女のことを知っていく度に

私は彼女に惹かれていきました。


そうして中学2年生の冬

私は葵と付き合いました。


本当に幸せでした。自分らしく生きるということを葵に教えてもらいました。

きっと私は葵に出会わなければ自分というものを失っていたかもしれません。


中学3年生の時、葵と夢の話をしました。

彼女は学校の先生になりたいといいました。

どうしてって聞くと、はにかみながら学校って楽しいじゃんって、さも当然のように言うのがまた彼女らしくて微笑みながら、じゃあ私は何になるのがいいか聞くと

葵は少し悩んだ後に、警察官と言いました。

理由を聞くとカッコイイから。葵らしいなと思いつつ、警察官も悪くないなって思い私の夢は警察官になりました。お互い夢に向かって頑張ろうねと約束し私と葵は別々の高校に出願しました。


受験が終わり、私は葵に自信があるか聞きました。すると、ニッと笑いピースサインをしてバッチリとひと言。

それなら高校が別になるから浮気とかし放題だなって言うと、ウチの方がしてやる!って笑いながら手を繋いで、まだ咲いてない桜並木を2人で歩きました。その時、私は葵に君といると自分らしく居られる。本当にありがとうと初めて伝えました。葵はきっと気づいてないだろうけど私は葵と出会えて本当に良かったと思っていました。


それから少しして高校の合格発表当日。

自分の番号を確認して学校に戻りました。

教室に入ると酷く重たい空気で、きっと誰か落ちたんだろうな、そう思いながら担当教師に合格を告げに行きました。

教師は笑顔でおめでとうと言った後に辛い顔に変わって話をしました。


最初はとても信じられませんでした。

きっと昨日送ったメールが返ってこないのも

いつまでたっても合否を伝えに来ないのも


次の日、地元の新聞には小さく交通事故の記事が書いており 見出しにはこう書かれていました。警察官の自動車にはねられ女子中学生死亡。


それから私は高校に行き、彼女と出会う前のような欺瞞に満ちた言動をとるようになりました。それは本当の自分は彼女のためだけにあると思っていたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

欺瞞な俺と天然な君 @bottomy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る