Dream of ‘‘The Cicada‘‘

@Stouyu0926

第1話 プロローグ

 季節は流れ、12月下旬になった。今日も寒い。いやになるほど寒い。毎朝毛布の中から起き上がるのが苦痛で仕方がない。それに加えて朝からテレビのお姉さんが僕に現実を突き付けてくる。

「今日は12月24日、クリスマスイブですよ~。良い子のみんなはちゃんと夜更かししないで早く寝るんだよ~。さあ、今日の天気は・・・。」

 白銀の夢世界に繰り出される幼子の声が、どこか憎たらしく聞こえた。これが必然なのかもしれない。そう思うしか、その時の僕にはできなかったのだ。

 「こんな成績取っていたら、お前の希望する大学には行かれへん。もう時期も時期やし、願書書かなあかんのやで。最終決めるのはお前やけど、俺はその大学受けるのは賛成せん。」

 毎日のようにこれを思い出す。中高六年間お世話になった先生に言い渡された現実。いつまでも夢現のままではいけない。頭の中ではそう思っている。そして実際、体もそう思っているのかもしれない。そんなことは分かっていた。だけれど今の俺では無理なことも分かっていた。

 今日も参考書とのにらめっこの始まりだ。なぜなら俺は決めたから。「こいつ」が俺の前から消えるまでは走り続けようと。奇跡をおこしに行くために、この奇跡とともに。

 

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