高校生の悩み

 たった一人、この教室に入ってきただけで雰囲気が変わる。

いや、静かなことには変わりはない。種類が違う。さっきまで夕日から感じる寂しさをもたらしていた教室が、今では氷のような静かさがピンと張る。


 しかし、その空気もほんの一瞬の事だった。

彼女は一言、はっきりと「キミが、福島君?」と発した。


僕は彼女を知らない。普通、知らない人、しかも異性に話しかけられたら

戸惑うだろう。それは僕も例外ではなかった。 


「・・・!」


実際、僕が学校の中で話したことがある生徒は片手で数える程度である。

情報も限られている。


だが、

「私は寺田リノ キミ聞いたことはあるんじゃないかな?」


どこか馴れ馴れしい雰囲気。そしてこの顔。

この学校にいるならだれでも知っているであろう。


 寺田リノ 皆辺高校 2年A組は、僕の先輩にあたる人で

学校ではトップの美少女とまで言われているらしい。

女子バスケに所属し、県大会決勝まで大きく貢献した有名人。

 黒髪に華奢な体、柔らかい眼差しを持つ清楚な雰囲気、

誰もが憧れる

・・・なのだが、ある噂で心証は最悪だ。

 

 その噂は・・・

「キミ、だんまりは良くないと思うなぁ」

そう、僕が聞いた噂とは・・・

「まさか私、シカトされてるの・・・?」

 

「・・・」

僕は、あくまでもとは

関わらないように努める。


「えっと・・・お願いだから聞いてくれないかな?」


『人は繋がれば痛みを分かち合える』

といった言葉は正しくない。

人は繋がりの数だけ傷が増える。


「いっ一応私、この学校では有名人だと自負してるんですが・・・

聞いてます・・・?」


だからこそ、必要な時に、必要最低限の交友が

最小限の傷で抑えられる唯一の方法である。


「ええ、僕はあなたのことを知っていますし聞こえていますが何か用ですか?」


一番手っ取り早い方法は、『興味を無くさせる』である。

こちら側も興味がないアピールをすれば、自然と相手は寄ってこない。

 

『好きの反対は無関心戦法』の完成だ。

と、思ったが・・・


「キミのお姉さんから聞いたんだけど、キミって凄い能力の持ち主だって?」


「・・・ぇ」


僕は動揺を隠せなかった。

確かに僕には四つ上の姉がいる。

でも問題はそこではない。

バレている・・・僕のが・・・


もう使うまいと思っていたが。



あとがき

ちょっとだけ書いてみようと思ったところ、予想以上に難しく考えていました。

また、休止するかもしれないのでご理解のほどよろしくお願いします。


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