誰かに与える勇気が欲しかった

二重跳び

勇気が欲しい人へ

 早速だが僕の自己紹介をさせてほしい。

身勝手で申し訳ないと重々承知の上だ。

初めに誰か名乗らないと気味が悪いだろう。


『知らない人』というだけで、それなりに抵抗があるものだ。

そんな人がする話なんてさらに気味が悪いと思わないだろうか。


あくまでも個人の感想だが…


 僕は福島勇仁ふくしまたけひとと名付けられ、生まれてきた。

今は高校生として生活している。


特技もなく、趣味の一つもなく、ほぼ何も持っていない。


要するに、その辺に居そうな普通な人物と思ってくれればいい。


ただ…、まあこれを言うのはあとにしよう。


というわけなので、これだけ知ってくれたうえで続きを見てほしい。


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 いつも通りと思われるある日のことだった。


その日、とても厄介で有名とされている先生の授業を、運悪く昨日の夜更かし

が原因か眠ってしまい、これまた運悪く、その先生に見つかってしまった。


その先生は本当に厄介で、授業中には特に注意をせずに肩を叩かれるだけだが、

その後の放課後に呼び出しをくらい、ありがたーいお説教を

職員室の隅で受けるという、学校なんかに居場所がない僕にとっては

まさに地獄のようなものだった。


「次からは注意するように。」

と、よくある注意の仕方で締めくくられ、ようやく解放された後だ。


 そんな地獄を味わった後、カバンを取りに教室へ戻った。

 

 壁に掛かっている時計を見て、ホームルームが終わってから

かなり時間が経っていたのだろう。


 運動部などで着替えている奴らもいない。

しーんと静まる教室と窓から差し込まれる夕日。

壁にまで伸び切った、机と椅子たちの影。

ちょっと幻想的で、一人きりの状況。



世界がこのままだったら、どれほどよかっただろうか。

なんて、柄にもなく思っていた

その時。


 ガラガラ…


不意に教室の扉が開くと同時に、一人誰かが入ってきた。


夕日に当たり、キューティクルが

ツヤッとした黒く、長い髪がさらりと流れる。


一目見ただけで心が奪われた。


 その音は、まるで僕の平穏も、音を立てて崩れるようにふと感じた

瞬間でもあった。



 物語は僕を、普通から遠ざけようと動き出す。


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あとがき


一話を読んでいただき、ありがとうございます。


誤字、脱字、不明な点がありましたら知らせてくれると助かります。


それと、レビューの方も辛口でも結構です。


評価の方もつけていただけると幸いです。


これからも温かく見守っていただけたらと思います。






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