放課後、大塚駅近く

 6時間目が終わって、天文部の3人が集まった時に、「2人とも家に来ない?図書館も混んでいるだろうから、プチ勉強会でさ」と芽衣が提案し、他の二人が了承して決定となった。


 7時間目の授業中、芽衣も紗矢も心ここにあらずといった感じであったが、終業のチャイムが鳴り再び3人で集まった。


 「2人とも私の家分かるよね?大塚駅の反対側だから?」


 「あ、うん、だいたい分かるよ、飲み屋がたくさん集まっている方だよな?」


 「そうそう、私、ちょっとだけ部屋片づけるから、15分くらい時間ちょうだい、二人でゆっくり来て!」


 「あ、いいよ、なあ、紗矢」


 「う、うん、いいよ」もしかして、芽衣、私たちに気を遣ってくれているのかなぁ、などと紗矢はのんきに考えていた。


 「じゃあ、ダッシュで帰るから、お先に!」芽衣はほんとうに走り出しそうな勢いで帰って行った。


 「大塚駅のほうで少し寄り道していこうか?」


 「うん」え、なんかこれはデートですか?まさかの??紗矢が動揺する。


 2人は高校から大塚駅方面へゆっくりと歩きだす。


 午後の日差しが熱く、歩道にくっきりと2人の影を描き出す。文央高校の生徒もたくさん2人を追い越して行く。


 「そういえば、紗矢と2人で歩いたことってなかったよな」


 「え、うん、そうだね」


 「今日さ、多分7時とか8時とかまでだと思うから、帰り送るよ」


 「え?いいの?遠回りになっちゃうよ?」


 「大塚と池袋じゃほとんど変わらないよ、紗矢姫を一人で帰らせるわけにも行かないし」


 「あ、うん、ありがとう」最後のほうはほんとに小声になってしまった。


 大塚駅前の公園にベンチがあり、そこで2人は座った。途中、虎はコーラを買い、紗矢はお茶を買ってきた。


 ベンチのほこりを虎が払ってくれた。少し距離を空けて座る2人。

 

 「そうだ、コンビニに行ってお菓子でも買って行こう、手ぶらってわけにもいかないよな」

 

 「うん、そうだよね」

 

 目の前にある、コンビニに寄って適当にお菓子を買う。


 虎が払うと言ったが、割り勘でと紗矢が主張して、それが通った形になった。

 

 ポテチとグミ、チョコ、1.5リットルのジュースといった組み合わせとなった。


 そこから、数分あるいて「高坂」と書かれた立派な家の前に2人は着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る