紗矢とパパとママと

 紗矢が、父と母にドライブ中に勉強会の承諾をもらおうと聞いてみると「みんな連れてきなさい」の一言だった。


 いつも思うのだが父も母も紗矢にはとことん優しい。


 何をするにも反対されたことがない。


 一度飛んでもないことを言って反対してもらおうかと思うこともある。でも、例えばアイドルになりたい!と言っても、頑張れで終わるような気もする。


 横浜までの道のり、助手席には母が座って、まるでデートしているかのように仲が良かった。


 多分、自分が生まれてからずっと変わっていない。何で弟や妹が生まれなかったのか不思議なくらいだ。


 「パパ、私に好きな人ができたって言ったら驚く?」


 「そんなことないさ、紗矢が小学生でもね」


 「それは、パパとママが3歳の時から付き合っているからでしょ?」


 「人の運命なんてどうなるか分からない。自分の心には素直でいなさい」


 「はーい」全然驚かない人だなと思った。


 そんな紗矢を乗せたまま、レクサスは首都高を横浜方面へと向かった。

 

 横浜に着くと3人でランチになった。紗矢も145センチと小柄だが母も同じくらいしかなく、やせていて童顔である。たまに姉妹に間違われる。


 ステーキ(たぶん高級な)を食べるが、紗矢も母も全部は食べられず、父に食べてもらう。


 そこで、母が父に「あーん」をして食べさせていた。


 紗矢は顔が真っ赤になるほど恥ずかしかったが、3歳から一緒の2人のすることだと思うと、それはそれでうらやましかった。


 食事の後、横浜スタジアムへ移動して野球観戦をした。DeNAと巨人の試合だった。


 紗矢は野球については詳しくないが、父も母も巨人が好きらしい。


 試合終了まで観ていると混むからと8回表の攻撃が始まったところでスタジアムを後にした。

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