第18話 真希から伝えること
心と真希が出会ってから少し日数が経った頃、心のもとへ真希から一緒に出かけないかというお誘いがあった。
心自身もちょうど真希とどういう付き合いをしていけばいいのか考えていたところなのでこのお誘いはありがたいことだと思った。
真希と約束した当日、二人はショッピングに出かけた。
最初に向かったのは心のお財布事情では来れそうにないブティックだ。真希は自分の服ではなく心の服ばかり選んでいた。
「いや〜私ってば一人っ子だから、心くんといると弟や妹ができたみたいで嬉しくてね」
そう言いながらにこやかに服を選ぶ真希。
「心くんも気に入った服があったらどんどん言ってね。心くんは男の子だけど女の子の服も似合うから選びがいがあるよ」
普段は自分で選ばず、店員などに全て任せているという真希。贔屓にしている店員も少し驚いたようだったが真希は気にしない。
「気に入ったのがなければオーダーメイドもできるから言ってね」
流石にそこまで真希にしてもらうわけにはいかないが、心も店内を見て回る。
気になったワンピースがあったので手に取ろうとしたとき、不意に値札が目についた。心の予想よりもゼロの桁が多い、服を万が一にも汚したりできないと服から手を離した。
「そのワンピース気になった?」
いつから見ていたのか、そばに来ていた真希が心に声をかけてきた。
「いえ、ちょっと見てみようと思っただけです」
返事に困る心。
「そうなの?」
と真希は返してきたものの、それ以上は何もなかった。
その後、心は真希の勧めで採寸して、オーダーメイドの服を一着購入することになる。純と付き合うのなら一着くらいオーダーメイドの服があった方がいいだろうという理由だ。
緊張しっぱなしだった心だが店員の方も困惑している。担当してくれた店員は心を女性だと思っていたが男性だったのだ。驚きくのも無理はない。
服は出来次第心の自宅に発送してくれるとのことだったが、なぜか真希は心に大きな袋を渡してきた。
「これは心くんのね」
どうやらさっき選んでた服を全部買ったらしい。
カードで購入していた真希がいくら払ったのか心には想像もつかなかった。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言って荷物を受け取る心。ブティックのロゴが入った袋の重さは衣類の物理的な重量以外の重みを感じた。
「ちょっとお茶しようか」
真希は車を呼んで行きつけのカフェに移動した。
「荷物は車に置きっぱでいいよ」
とのことだったので、手ぶらで店に入る。
カフェは綺麗で落ち着いた店だった。
席に案内されると真希は飲み物などをいくつか注文した。心はよくわからないので真希のおまかせになった。
待ち時間で真希は今日の本題とばかりに話を振ってくる。
「心くんは純とどこまで進んだの」
いきなりの質問に心はお冷が口の端から出るかと思ったが、真希に隠すこともないだろうと正直に答える。
「キスまでです」
「もうキスまでいったの!」
食いつき気味な真希に面食らう心。一驚する心をよそに話は続く。
「なんでこんな話をしたかっていうとね。心くんは素直な感じだけど、純はどんなふうに恋愛するんだろうって気になったの。心くんの前だと恋する男子だけど、朴念仁なところもあるからさ。想像つかなくって」
「朴念仁かどうかはわかりませんけど、純さんって普段は冷静な人ですよね」
「そうそう、興味がないのか表に出さないのかわからないときがあってね」
そのとき真希のカフェラテが運ばれてきた。一口飲んでから真希は話を再開する。
「急になんでこんな話をしたかっていうとね、私、昔純のことが好きだったの。あ、今は普通にいい友人というか幼馴染みって感じなんだけどね。純から心くんのことが好きだと聞いて、どんな感じなのか気になったの」
心にとっては初耳だったが、純を好きになる人が自分以外にもいたことは十分に予想できたことだ。
それでも心は少し動揺した。
運ばれてきた紅茶に口をつけた心は「あちち」と言ってしまった。
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