第14話 「好き」だと実感したとき

 晴天。空の果てまで見えそうなほど透き通った世界。少なくとも心にはそう感じられた。

 今日は純の家に行く日だ。

 心が純の家に行く予定は順調かつ早急に決定した。もう少しで純が迎えに来る時間だ。

 当初、不安で落ち着きのなかった心がなぜ今日という日をこれほど幸せに感じられるのか。

 その答えは

「ココロちん。まだ純さんは来ないんじゃないかな」

 今しがたやってきた理貴にある。

 心が理貴にお願いしたことは、「純の家へ行く時に着ていく服を見繕ってほしい」というものだった。

 快諾した理貴は、早速自分の服を持ち出し、心に着せていった。

 信頼している理貴に服を選んでもらうことで心の気持ちも前向きになる。

 心は、それまでの不安など元からなかったような気分でいた。

 気がはやる心は外の様子を見に出たが、純が来る気配はない。約束の時間まではもう少しあるのだ。

 そんな様子の心を見て理貴は微笑む。

「ココロちんは本当に純さんが好きなんだね」

 理貴の言葉に赤面する心。

 他者から言われると、「純が好き」という事を改めて実感する。そして、少し照れくさい気もする。

「お姉ちゃん、ぼくは……純さんが好き」

 心は理貴の方を向いて、自分の想いを言葉にする。

 純への好感が恋愛としての好意に変わったのは、ここ最近のことだ。

 心の初恋が終わったとき、純が自分に向ける好意へと向き合うことができた。そして、それまでと違う関係にもなった。

 しかし、まだ微妙な関係でもある。

 心と純は、お互いに好意を抱いている。その好意に向き合おうと決め、付き合い始めた。

 付き合い始めたのだが、心自身、どこかでまだ純との関係に不安やわからない部分もある。

 これはお互いのことを知らなさすぎるのが一つの要因だろう。

 それでも「純が好き」という感情に偽りはない。きっと純と過ごすうちにこの想いの答えもわかるだろう。

 そんなことを考えながら心は純を待ち続けた。

 心がふと上を向いたとき、青い空の中を雲がゆっくりと泳いでいた。

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