第5話 心の悩み
純と食事をした日から、心と純は友人として交流する様になった。椛を経由して連絡先を交換し、SNSでやりとりするのが日課となった。といってもほとんどは心から文や画像を送信している。純からあまりSNSなどで自分から発信しないことを告げられ、椛からも心の方から発信した方が純が喜ぶと教えられたためである。
滅多に自分から発信しない純だが、心からの発信はいち早く反応し、それなりに会話のキャッチボールが行われる。
直接会う機会は少ないが、純がお土産を持って心の自宅まで訪ねてきたこともあった。 純はいつでも友人として努めてくれた。心はその関係に甘んじつつも申し訳なさや居心地の悪さのようなものを感じていた。心はまだ、純に自身の抱えていることを伝えていなかった。そんな関係を二月ほど続けた。
ある日の午後、自室にいた心のもとに連絡が届く。それは、心が先延ばしにし続けた、できることならうやむやにしたままでいたい連絡だった。その連絡が来てから心は少し躊躇いながらも返信した。そして、もう後戻りできないと思いながら純にメッセージを送信する。
「純さんに伝えたいことがあるから近いうちに会いたい」
作成した文章もなんだか素っ気無い。
ただメッセージを送るだけなのに緊張していることが心自身わかっていた。
心がなにか追加で言葉を送信するべきか悩んでいるうちに純から返信が来た。
「わかった。明日の夕方そちらに向かう」
純からの返信はいつも簡潔なものが多かったが、今回の文章は心にとって冷たいともとれてしまった。
そんなことを考える自分が嫌で言い聞かせるように呟く。
「純さんは冷たいんじゃなくて、ぼくに向き合ってくようとしてる。だから、真剣だから……あの文章なんだ」
心は段々と疲れるような体が重いような感覚に襲われた。モヤモヤとした感情に纏わりつかれ、ベッドでうずくまる。疲弊した心には自分の考えていることがわからなかった。
頭の中がかき混ぜられるような感覚のなか、はっきりと思い浮かぶのは二人の人物。一人は純でもう一人は女性。
女性は自分より一つ上の人で、心の初恋の相手だった。心にとって大切な人。
心は自身の感情から逃避するように初恋の女性について思い出していった。
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