#60 ワスレナグサ

「フェ―ベ……? どうしてそこにいるんだ?」


そこにいたのは、髪と瞳の色が薄紫色に変化しているフェ―ベだった。

彼女は玉座に足を組んで座っていた。

そして彼女以外に五十程の兵士達が居た。


「はじめまして。勇者ハヤトとその仲間達よ……私が“魔王”だ……」

「なにを……言っている? フェ―ベが魔王? そんな訳無いだろ」


俺はフェ―ベの発言に脳の処理が追いついていなかった。

フェ―ベが魔王……だって? そんな馬鹿な……。

しかし。どれだけ周りを見ても魔王がいる筈のフロアに魔王はの姿は無く、

代わりに居たのはフェ―ベと兵士達だけだった。


「……ならば、私が魔王であるという証拠を見せよう。《悪魔召喚》……」


すると、地面から漆黒の穴が出現し、そこから見覚えのある悪魔たちが出現する。


『ケケ、ケケケ……ッ!』


その後魔王は悪魔を消滅させた。


「まさか……本当に……フェ―ベが魔王なのか……?!」


俺は、まだ信じきられなかった。

だって、どうして。どうしてフェ―ベが魔王になるってんだよ?


「どうして……魔王になったんだ……?」


俺は、恐る恐るいた。


「勇者よ……私はずっと待っていたのだぞ……お前が私を助けに来るのを……」

「だ、だから助けに来たんじゃないか――」

「――嘘を付くな! 私は十年以上も待った! だがお前は来なかった!」


魔王は怒りをあらわにし、肩をわなわなと震わせている。


「――――!」


そんな彼女を見て俺は、反省する……。

俺が、彼女をあんな独房に閉じ込めたから――――ッ!


「私があの独房で、どれだけ酷い目にあったと思っている……ッ?!」


魔王は玉座から立つと漆黒の鎌を構えた。


「―――!?」


「勇者など……ニセモノの存在なんだ……ッ!」


魔王はゆっくりと俺に接近する。すると同時に、

奥に居た兵士たちもこっちに近づいてくる。

フェ―ベは勿論だが、兵士たちを殺すわけには……。


「《スタンクラッシュ》!」


俺は即座に気絶属性の範囲攻撃を兵士たちにしかける。


「ぐわあああああああ!」


兵士たちは一瞬にして気絶した。


「雑魚が……まあいい。どのみち私の力で貴様らは死ぬのだからな……」


魔王は鎌を持っている手とは反対の手から黒球を作り出した。


「《ライオット・マテリアル》……!」


手から放たれた黒球は分裂し、俺達に迫ってくる――!


「《レンジシ―ルド》!」


俺は咄嗟とっさに広範囲防御スキルを発動させ、

ダメ―ジを軽減させた――が、それでも俺達のHPは二割減る。


「《スタ―ライトヒ―ル》!」


コ―デリアが味方全員を回復させる、

魔法スキルを発動させたことで、俺達のHPは全快する。


「助かったぞコ―デリア!」


俺達はコ―デリアに礼を言う。


「当然の事をしたまでですわっ!」


しかし、ダメ―ジ軽減させたのにこの威力か。ヤバいな……。


「《ウェポン・イクイップ》!」


俺は瞬時にエタ―ナルソ―ドからレ―ルガンに武器を切り替え――魔王をロックオンする。


「ほぅ……瞬時に武器を切り替えることが出来るのか……面白い」


魔王はまた、手から黒球を作り出す。

俺はそうはさせまいと、レ―ルガンを発射する。


――ヒュン


「な、なんだ……?」


一瞬魔王は高速で射出された弾に驚く。

咄嗟にレ―ルガンを回避しようとするが、被弾する。


「ぐッ……?!」


魔王のHPを見ると、ミリしか減っていなかった。

ど、どんだけ固いんだよ……ッ!

だが、さすがの魔王も俺の攻撃に驚いたようだ。


このスキを逃すまいと、リシテア達も反撃にでた。


「《テンペストスピア》! てりゃあああッ!」


リシテアは槍に小さな竜巻を纏い、魔王に連続突きを食らわす。


「《フロストソ―ド》! とりゃあああッ!」


イオは剣にしもエンチャントし、魔王に連続斬りを与え……、


「《サンダ―ボ―ル》!」


更にレアは魔王の目の前に、雷の球体を出現させ――フェーベに向かって射出する。


「《スタ―レイン》!」


コ―デリアは光の雨のたばを魔王の上から降り注がせる――!

そして俺は……、


「とっておきの技だ――! 《レ―ルガン三点バ―スト》!」


《レ―ルガン三点バ―スト》を発動させる。

一瞬でレ―ルガンを三発連続発射する強力なスキルだ。


――ダダダン!


「ぐぅ……ッ!」


魔王の残りHPは半分まで減っていた。


これだけ与えても半分……なのかッ……!


「貴様ら……よくも私をここまでやってくれたな……ッッ!」


魔王は続けて言った。


「いいだろう……ならば私も……本気を出させてもらうぞ……ッッ!

 貴様らまとめて……死ねッ!!」


魔王の漆黒の鎌が巨大なオ―ラに包まれる。

これはまずい……こんなの食らったら確実に死ぬ……ッ!


「《アンチ・ヘルバ―スト》……ッッ!」

「やめろ――――フェ―ベェぇええええええ!」


――ズド―ン!


魔王……フェ―ベが放った一撃。

俺達は吹き飛び――壁に衝突したようだった。

閃光が走り――俺達は暫く視界が見えなくなる。

そして、しばらくした後、視界は戻る。


あれ? なんで意識があるんだ?

あんな強力な攻撃を食らったら俺達は死んでいるハズ……、


俺はUユーザーIインターフェースを見る。


「えっ?」


全員……残りHP1で踏みとどまっている? なぜだ?


『来栖! よかった……成功したみたいだ』

『こんな時になんだよ加賀美かがみ?』

『君たちのダメ―ジコントロ―ルがなんとかうまく言ったみたいだ』

『それで俺達は死んでいないのか?』

『ああ……後はキミ次第だ」


加賀美との会話は途絶える。


「なぜだ? なぜ死んでいない?」


さすがのフェ―ベも驚いている。


「まあいい……勇者よ。今度こそ終わりにしよう」


フェ―ベは構え、ずるずると壁際かべぎわにいる俺に近づいてくる。

俺は起き上がり、おもむろにポケットからを取り出して彼女に見せた。


「その髪飾りは!? なぜお前が……ッ!?」


フェ―ベは驚いているのか、後ずさる。


「何いってんだよ、俺は勇者なんだぞ? 勇者はなんでもできる」

 そしてこの髪飾りはお前の為に用意したんだ」


「お前の為にだと!? その髪飾りの花言葉は【私を忘れないで】だ! 

 お前は私を忘れて旅をしていた……ッ!」


フェ―ベは俺に近づき鎌を向ける。

俺はここで殺されるかも知れない。

だからもうイチかバチかだッ!


「ああ、そうだな。それに関しては謝りたい。だけどさ――」

「だけど……?! 今更謝る気なのかッ……!」


フェ―ベは泣いていた。


「――だけど、この勿忘草にはもう一つ花言葉があるのを知ってたか?」

「――――えっ?」


魔王は俺の突然の新事実に驚く。


「もう一つの花言葉。それは、【真実の愛】だよ……」


「…………ッ!」


漆黒の彼女は黙り、しばらくした後口を動かす。


「私は……ずっと勇者を待っていたんだぞ――ッ!」

「――ああ。知っている」

「ずっと……ずっと……待っていたんだッ……!」

「ああ」


フェ―ベは鎌を仕舞う。


「その【真実の愛】とやらで……私を守ってくれるのか……?」

「勿論」


俺は即答する。


「なら……ずっと。私と一緒にいてくれよ?」

「ああ。それに、彼女たちもいる」


俺は彼女たちの方をみる。

彼女たちは笑っていた。


「これからお前は俺達の仲間だ」


俺は、フェ―ベを抱き寄せた。

魔王の抱きしめる力も徐々に強くなっていった。


「ああ、よろしく。ハヤト――――」


こうして、魔王もといフェ―ベが仲間になったのであった。

ようやく俺のヒロイン全員が揃ったわけである。


しかし、まだ俺は気づいていなかった。


今回の魔王の件により、《ジュピタ―》が大荒れした影響で……。

この世界の全クエストのクリアが達成不可になっている事に――。

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