#59 コーデリアの本気

沢山の罠。それに死体。

広間は簡単な迷路のようになっており。

あちこちに罠が仕掛けられていた。


その迷路のような道をゆっくり進んでいく。


皮肉なことに、死体のお陰で罠がどのように作動するのか分かるため、

俺達は安全に進むことが出来た。


「そんな……どうして……。こんなの酷すぎる……」


リシテアは仲間の騎士達がむごい死に方をしているのを見て、ひどく落ち込んでいた。


「こんなことなら……先に行かせなせければ……よかった……っ!」


しばらくした後、リシテアは落ち着きを取り戻した。


「行きましょう。魔王を倒さないと……!」

「ああ、行こう」


俺達は六層へと階段を上る。コツコツと、上っていく。

やがて、六層に辿り着いた。


五層の時と同じくまたしても通路があり、

その奥には扉があった。


「ここが、六層……」


俺は通路を進み正面に見えた扉を開ける。

そして、俺達は扉の中に侵入した――。


視界の先には、巨大なモンスタ―がいた。大きさは人間の三倍程はあるだろうか。

表示されている名前は《デ―モン》。

あれも、悪魔の一種だろうか? 人型で、頭部には二本のツノが生えている。

人型だと思われ、手のようなものがあるが、指はなかった。


武器のようなものは持っていない。果たしてどのような攻撃をしてくるのだろう。

恐らくアイツも悪魔の一種だから、属性は闇のハズ。

だからコ―デリアのスキルが役に立つはずだ。


『…………』


ギロッとこちらを向いたデ―モンと俺たちの目線が合う。


「くそっ気づかれたッ。みんな、準備はいいか?」


「ええ、大丈夫よ」

「私に任せるのですわ!」


「わたしもっ準備万端ですっ」

「イオも行けます!」


俺たちは武器を構え、臨戦態勢りんせんたいせいに入る。


◇◆◇◆


『ゴォオオオ……』


デ―モンは雄叫びを上げたあと、俺達にドシンドシンと、すごい勢いで迫って来る。

やがて俺に近づき、手のようなもので殴りかかってきた。


「……ッ!」


俺は咄嗟とっさに左右にステップをし、回避していく。

そして回避したあと、直ぐに剣で反撃する。


「ハァッ!」


『ゴォオオオ……』


デ―モンは怯むことなくさらに腕で追撃していく。


「こ、コイツ……怯まないのかっ……」

「《ブリザ―ド・スト―ム》!」


後方にいたイオは高威力の魔法スキルを繰り出した。

竜巻と吹雪が合わさった技だ。


デ―モンのHPを見ると、1割削れていた。

残り九割……ッ!

しかし、俺はデ―モンの後を絶たない攻撃にひたすら回避し、少しずつ反撃するので精一杯だった。


武器ウェポン装備イクイップ》でレ―ルガンに切り替えるスキも無く。

また、レ―ルガンを発射するための十分な距離を保つことも出来ない。


攻撃がやまないので、《テレポ―ト》スキルで距離を離すことも出来ないでいた。

何故ならば、《テレポ―ト》スキルを発動させるには七秒間のタイムラグがあるからだ。


その間にもデ―モンの攻撃は止むこと無く。やがて俺は被弾する。

デ―モンは《シ―ルド》を発生させるスキすら与えてくれない。


「くそっ……」

「ハヤトさん! 大丈夫ですか!?」

「お兄ちゃんっ!」


苦しそうにしている俺を気にかけているイオとレア。


「心配ならいい! 今ヤツが狙っているのは俺だ! そのスキに他の攻撃を与えてくれッ!」

「わ、わかりましたっ」

「はい!」 


俺を信じているのか、イオとレアは自信を持って答えてくれた。

そうこうしてるうちにレアは強力な雷魔法スキルの発動準備を完成させる。


「《ネオ・スパ―ク》!」


イオは杖から強力な電撃を放つ。


さらに、リシテアもデ―モンに近づき――


「《疾風連続突き》!」


リシテアは渾身の一撃を放った――。


『…………』


デ―モンのHPは残り三割になっていた。

そして、さっきまで俺を狙っていた攻撃が止む。

その間に俺は後ろに交代し、《ウェポンイクイップ》を発動させ、レ―ルガンに持ち替えた。

おかしい……。奴はなにかの準備をしている?


すると――ヤツの巨大な眼が赤く光ったのが見えた。


「……ッ! みんなヤツの眼から何か来るぞ……ッ! 《レンジシ―ルド》!」


俺は新たに覚えたスキル。《レンジシ―ルド》を発動させる。

すると、俺を含めた全員の全方位にあおい盾のエフェクトが反映される。

これは、《シ―ルド》の上位互換技であり、味方全員にダメ―ジ軽減効果が反映される。


そして、俺の予想通り。《デ―モン》の眼から赤いレ―ザ―ビ―ムが放たれる。


――ピン


刹那――ドカ―ンと、爆炎ばくえんが巻き起こる。

くそっ……なにがどうなってる? 周りが見えないッ!

暫くすると、爆炎は収まり、視界がクリ―ンになった。


俺はUIを見て驚愕した。

全員のHPが残り三割前後になっていたからだ。


《レンジシ―ルド》でダメ―ジを軽減したのにも関わらず、この威力だと……ッ?!


「みんな! 大丈夫か!?」

「ええ、大丈夫よ!」

「大丈夫です!」

「だいじょうぶですっ!」


そういえばコ―デリアはどうしたんだ?

さっきから無言だ。

俺はコ―デリアが気になり、コ―デリアの方を見る。


すると、コ―デリアは魔法を詠唱していた。

実は言うと、戦闘が始まってから、彼女はさっきからずっと詠唱していたのだ。


「あれも……悪魔なら……私の攻撃が効くはずですわよねハヤト様ッ!」

「ああ。そうだ! まさか?!」

「見てなさい……。私の必殺技……!」


コ―デリアは魔法スキルの詠唱を完了させ――。


「ホ―リィイイイイ――――」


コ―デリアは力を振り絞り、


「――――ライトレ―ザァアアアアアアアアアアッッ!」


杖から強烈なレ―ザ―を放つ――――!


――ズシャ―ン!!


『…………』


デ―モンはコ―デリアの必殺の一撃をまともに喰らい、消滅していった。


「ハァ……ハァ……」


全身全霊の力をデ―モンにぶつけた金髪の彼女は息切れをしていた、


「コ―デリア……お前……」

「どうしましたの……ハヤトさん……」

「お前……! すげぇよ!」


「ハヤト様……ありがとう……。ですけれど私……疲れましたの」


コ―デリアはぐったりとしていた。


◇◆◇◆


「ああ、お前はよくやったよ。さんきゅ―な」

「コ―リデリアさん凄いですっ」

「本当に凄いです!」


「流石はコ―デリアちゃんね! でも、私は……」


リシテアは何かを言いかけていた。


少し休憩した後、七層への階段を登っていった……。

俺たちのHP,MPは非戦闘状態になると徐々に回復していく仕様だ、助かった……。

俺達は慎重に階段を登っていく……。


そして、やがて通路にたどり着く。

通路の奥には今までとは違う豪華で巨大な扉があった。


「さて……。みんな、準備はいいか?」


みんなはコクリとうなずく。


俺は喉を鳴らした後、豪華な扉を開いた――。


――ギィィィ……


「待っていたぞ……ハヤト……」

「なっ――!?」


俺は信じられない光景を目にした。

一瞬。髪と瞳の色。髪の長さが違っていたから気が付かなかった。

だが、あの服装を選んだのは俺だからすぐ気づいた。


魔王がいるべき場所――玉座に座っていたのは……。


――フェ―ベだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る