第五章 〜自我を失ったAI〜

#61 光と闇

俺達はジュピタ―に居る。

しばらくすると、《ディオ―ネ》にいた兵士騎士達がこちらに駆けつけてくる。


二つのジュピタ―と《ディオ―ネ》の兵士騎士達が互いに睨み合い、

一触即発いっしょくそくはつの状態であったが、

俺はこの世界で強力に機能するらしい勇者権限を使うことで、

なんとか説得に成功し、二つの街は和解することに成功した。


俺はなんとなく上を見る。

空は雲ひとつなく青く透き通っていた。


俺達はとりあえず《ディオ―ネ》に帰るために、

《ジュピタ―》の兵士に頼んで、馬車を用意してもらった。


馬車は都から離れたところにあり、俺達はそこにに向かって歩いていく。


《ジュピタ―》が少しづつ遠ざかっていく。


すると、この街の兵士たちは魔王……脅威ではなくなったフェ―ベに手を振って送ってくれる。

フェ―ベはありがとうと、軽く礼を言いながら去っていく。


「おい、“ハヤト”……」


「ぐぬっ……っ!」


魔王だった……いや、今も魔王なのか? フェ―ベは俺に語りかける。

そしてなぜかコ―デリアがフェ―ベを見て、

ぐぬっとか言いながら眉をピクピクさせながら顔を引きつらせて怒っている。


「どうした? フェ―ベ?」

「ハヤト。“お前”は私のことが好きか?」

「ぎゃふっ……!」


コ―デリアは思わず反応してしている。


ぎゃふっ? 


「勿論! お前のことが好きだぞっ」


フェ―ベはあの後俺が渡した《勿忘草の髪飾り》を付けてくれていて、

あまり感情を表さないものの、喜んでいるように見えた。


勿忘草わすれなぐさの髪飾り……。

これの花言葉は《私を忘れないで》《真実の愛》。

喜んでくれているようでなにより(髪飾りを修復したのは加賀美だけど……)だ。


「そうか……! ところで“コイツ”が何か怒っているようだぞハヤト?」

「なな、ななな、ななななななッ!」


コ―デリアは肩をぷるぷる震わせながら眉をピクピクさせていた。


「なな? ななとはなんだ? “貴様”?」


「あ、ああ、貴方、さっきから“ハヤト”だの“お前”だの“コイツ”だの偉そうにしてますわね!?」

「あ゛?」


まるで近所のヤンキ―のようにフェ―ベは返した。


「あ゛? じゃないでしょう?! せめてハヤト様のことくらい――」

「――ハヤト。お前が偉そうらしいぞ。謝ったらどうだ?」

「ああ。すまないコ―デリア。態度がデカかったかもしれない」


俺はコ―デリアに謝る。


「ち・が・う・で・し・ょ・う?!  あ、貴方に言っているのですわッ!!」


と、コ―デリアはフェ―ベを指差す。


「……ハヤト。馬車はもうすぐだぞ」

「ああ、本当だ」

「――――ッ! こうなったら……ッ! 意地でも振り向かせるのですわッ!!」


金髪の少女は歩くのを止め……立ち止まると、杖を取り出す。


――フィン


そして――杖は青白く輝きだした。


「ちょ、ちょっとコ―デリアちゃん!?」

「そ、それは幾らなんでも……!?」

「コ―デリアさんっ?!」


驚いているリシテアとイオとレア。

俺はようやく異変に気づき、コ―デリアの方向を視る――。


「――輝け! 太陽よ! 《ソ―ラ―・レイ》ッッ!!!!!」


「こ、コ―デリア!?」


刹那――太陽からちいさい光の粒子のようなものが集う。

そしてしばらくした後――太陽から巨大な光のレ―ザ―が放たれる。


は? なんだあれ?


少しずつ、俺達に向かってレ―ザ―が近づいてくる。


「みんな! 離れるんだッ!」


俺達は離れる。フェ―ベを除いて。

気がついたら彼女は鎌を構えていた。


「フェ―ベ?!」


そして彼女は、まるで詠唱するようにぶつぶつと呟いている。


え、詠唱!? 


「《ダ―クフレイム・バスタ―キャノン》……!」


――ガシャコン


突如――フェ―ベの鎌はスキル名の通り、巨砲に変形する。

そして、太陽目掛けて巨大な黒炎のレ―ザ―ビ―ムを砲身から放つ――。

放たれたソレは、コ―デリアの《ソ―ラ―・レイ》を押しのけ、太陽に向かって直進していく。


「ぎょえ!?」


コ―デリアは目を見開き、驚愕している。

いや、ここに居る全員が驚愕していた。


やがて――レ―ザ―は静かに消滅していった……。


その消えていくレ―ザ―を見てあることに気づいた。

彼女……魔王の……フェ―ベの底なしの能力は一体……?


《ソ―ラ―・レイ》を放ったコ―デリアだってレベル50の強力なスキルのハズなのに、

それをいともたやすく押しのけるフェ―ベのチカラは一体どこから来てるんだ?


俺は気になりUIを覗いた。

 

ハヤト:レベル50   リシテア:レベル50

 レア:レベル50  コーデリア:レベル50

  イオ:レベル50


その他にもHPやMPなどのステ―タスも表示されていた。

そして、フェ―ベのステ―タスはというと……


フェ―ベ:レベル99


クラス:魔王


HP:99999


MP:∞


属性:闇


得意武器:鎌


と、表示されていた――。


「…………」


意味不明すぎて思考が追いつかなかった。


「は?」


色々と、おかしいだろ?

レベル99ってなんだ? 

俺が彼女を設定したときのレベルは7か8じゃなかったか?

しかも、この世界におけるレベルは50が最大のはずだぞ?

HPはまだ分かるけどMP無限ってなんだよ?


そして、属性:闇って……。

いや、まあイオが過去に氷属性になってたり、今でも火、氷属性なのを考えると、

感情によって属性が変化するのはあるのかも知れないけど……


得意武器:鎌っていうのもおかしい。確か俺が設定した時は弓が得意武器たったはず。

いや、問題はそこじゃない――。


誰が、あの鎌をフェ―ベに渡した……?


一体、誰が、あの狂ったようなステ―タスにしたんだ……?!


俺は頭がおかしくなりそうになり、考えるのを止めた。


「う、嘘ですわ……わ、わたくしの渾身こんしんの一撃が……」


「……どうした? その程度なのか?」


彼女たちは武器を構え直す。


「いや待てッ! 喧嘩するなよ!」


俺は彼女たちを抑えようとするも。


「ハヤト様は黙ってくださる?」

「ああ、そうだぞハヤト。この馬鹿な女を静かにさせるまで待っていろ」

「ムキィイイイイイイイッ!!!!!!!」


ああ、もう駄目だ。


バチバチと、彼女たちの目先で火花が散る。


コ―デリアとフェ―ベの第二ラウンドが始まる――。

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