#55 ミサイルを知る少女と悪魔迎撃

騎士達と解散した後、魔王を倒すために《ディオ―ネ》の城から出た。


街の様子はとても騒がしかった。

騎士達がなにかを運んでいるのが見える。

あれは……大砲の弾か?


外壁の天辺に大砲の弾を運んでいるようだった。

そして、その天辺を見ると、バリスタらしき兵器が大量に設置されていた。

バリスタは巨大な矢を飛ばす兵器だ。


「あそこに視えるのが大砲か……。で、あれがバリスタ……」

「ただの大砲やバリスタではありませんよ。あれは魔力で強化されています」


と、作業をしていた一人の騎士が外壁の天辺を指差して言った。


「魔力で強化? 少し前までそんな技術は無かったのに……あったっけ?」

「いえ。我々の技術はここ四ヶ月ほどで急激に向上しました。他の街でもそうだと聞いております」

「へぇ、そうなんだ……。それは凄いな。忙しいのに説明ありがとう」

「いえ。では私はこれで」


四ヶ月……か。やはり、“心”という概念をこの世界に創ってからだな。

……あれから随分と変わったな。この街も、この世界も。俺も……。


「さて! 俺達も準備をしよう!」


俺は元気よく声を上げてみた。


「はい!」

「そうしましょう!」


イオとリシテアも元気よく応答した。


「準備って、何をするんですの?」


コーデリアが質問をすると――、


「“みさいる”ですっ!」

「いや、ミサイルはこの世界では用意出来……今なんて言った?」


レアがこの世界で聞くはずの無い単語を口にする。


「みさいるでど―んです! すると、大爆発ですっ! まとめて倒せますっ!」


……な、なにを言っている?


「なんでレアが“ミサイル”を知っているんだ?!」

「えっ――?」


レアは眼を見開いて驚愕きょうがくをしている。

ミサイルでド―ン……まとめて、だって……? 

って……まるで現実世界の“ミサイル”のことを知っているみたいじゃないか!


「レア。なぜ“ミサイル“を知っている!?」

「わかりません……」


レアは俺が怒っていると勘違いしたのか、今にも泣きそうだった。

彼女は本当には判らないようだった。


「……レア、すまない。俺は別に怒っていないんだ」

「ほんとうですか……?」

「ああ、本当だ。……準備を急ごう」

「はいっ……」


◇◆◇◆


俺達は《ジュピタ―》に侵攻するために、《ディオ―ネ》の正門を出た。


「わたしっ……なぜ……みさいるなんて言ったのでしょう……?」

「レア、その話は今はいい」

「なんだか……“こことは別の世界”が見えましたっ……」


「――――!?」


俺は思わず息をんだ。

こことは別の世界だって? ……現実世界のことか? 


レアは現実世界を知っているのか――?!


「レア。その話、今度かせてくれ」

「今じゃなくてもいいのですか?」


「ああ、今は魔王を倒すのが先だからな」


……驚きの連続だが、今は考えるのを止める。


門を出ると、大勢の騎士達が待機をしていた。

……すごい数だ。これが300人か。


「勇者殿、準備が完了しました。いつでも行けます」

「分かった。では今から――」

「――大変です! 物凄い数の人影がこっちまで来ます!」


と、外壁のてっぺんにいた筋肉質の騎士が大声で叫ぶ。


「まさか、もう来たのか!? 敵はどこから?!」


いや、正門の外壁の上から監視している騎士から視える場所にいるってことは……。


「――正面からか?!」


と、筋肉質の騎士。


正面から、なにか物凄い足音のようなものが聞こえる。


――ドドドドド


俺は正面をじっと見る。

やがて、大量の影が姿を現しだす。

あれは――ッ!


「モンスタ―だッ!」


加賀美が言った通り、本当に真正面から来たのか!


「魔物? いえ、あれは……」

「私、本で見たことがありますの。あれは悪魔と言うやつですわ」

「悪魔、ですか……!」

「あくま、恐いですっ……」


様々な姿のモンスタ―がそこには居た。

人と同じくらいのサイズの者が殆どだが、中には人より一回り大きいモンスタ―も居た。

あの恐ろしい見た目……悪魔って奴か?

抉るような鋭利な爪のヤツや、巨大な鎌を持っている亡霊のようなヤツまで種類は様々だ。


というか……。

凄い数じゃね!? 百体……? 二百体……? 

いやもっとだ! 五百体はいるような……ッ?!



「た、大砲とバリスタ砲の装填急げッ!」


外壁の上にいる筋肉質の騎士は大声で言った。


「もう装填出来ていますッ!」


そう返事したのは背丈が低めで弱腰の騎士。


「準備出来ているんだな?!」

「はい!」


「総員、大砲発射準備――」

「発射準備完了!」


「――撃てぇ!」


――ド―ン!


魔力を込められているからだろう、青のオ―ラが込められた弾丸は、悪魔達に向かって飛んでいく。


――ドカ―ン!


刹那、爆発が巻き起こる。

爆発は治まり、ヤツらの姿が見えだす。

数十体、消滅していく悪魔の姿が見える。


この悪魔たちは倒れずにそのまま消えるのかッ!

やはり、俺の設定したモンスタ―とは違うようだ。

――魔王がこの悪魔を召喚したのか?


だが……。まるで数は減ってないような錯覚をするレベルの数だった。


「ケケ、ケケケ……」


悪魔たちは大砲など恐れずに、笑いながら更にこちらに直進してくる。

すると、さっき砲の発射指示をしていた騎士が言った。


「ここから先は通すわけには……ッ! バリスタ砲! 発射準備――!」


そう言いながら、一人の騎士はバリスタ砲の照準を地面にいる悪魔たちに照準を合わせていた。


「――発射!」


――ヒュルルルル!


魔力の込もった巨大な矢が悪魔に目掛けて飛んでいく。


――グササササ!


すると、矢に刺さった悪魔は消滅していく。

クソッ! こんなのじゃ火力が足りないッ!


「ケケケケケ……!」


「くっ……おい、お前!」


やたらと筋肉質のリ―ダ―格の騎士は細身の騎士に話しかける。


「はいッ!」

「正面以外に敵はいないのか?!」

「今の所、報告はありませんッ」


「……なら、他で待機している騎士全員を正面の防衛に回すよう連絡しろ!」

「ですがッ! それでは他の場所からの防衛ができませんッ!」


「このままだと《ディオ―ネ》に侵入されるッ! 勇者殿! それでいいですね?!」


……そうだな。他から敵が来ていないのならもう正面の防衛に特化したほうがいい。


「ああ、頼む」

「かしこまりました。 連絡をしろ! おい、お前ら! 次弾装填急げ――!」

「――はいッ!」


騎士たちは次弾の装填を急ぐ。


「ハヤトくんッ!」


緑髪の少女は緊迫した表情で俺を見る。


「どうした?」

「私達もさっさと《ジュピタ―》に侵攻しましょう!」

「ああ、そうだな……! みんな準備はいいかッ!」


「「了解!」」


と、彼女たちと騎士三百人は言った。


「俺達――」


俺達……じゃなんか気合入らないな……。


「――《ナイト・オブ・レギオン》出撃! 《ジュピタ―》まで侵攻する――ッ!!」

「「了解ッ!」」

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