#52 取り戻した記憶
俺と
『しかし、困ったものだねぇ……』
加賀美はそう言う。
『魔王軍が攻めてきていることがか?』
『勿論それもそうだ。それよりももっと大事な――いや、なんでもない』
『なんだそれ?』
『今度ちゃんと話すよ……今度、ね……』
加賀美は何か含みのある言い方をしていた。
『で? どの方面から攻めてきているんだ? まさか――!』
『来栖? 見当が付くのか?』
もしかしたら……だけど。
『石造りの街……《ジュピタ―》……』
『ほう、なぜ知っているんだ?』
当然の疑問を加賀美はぶつけた。
『それは……そのエリアにもう一人の、
……俺の仲間になる予定になる予定のヒロインがいる筈だからだ』
『……? 君がヒロインとして設定したのは
そう、俺は四人だとずっと思い込んでいた。
『いや、違う。全部で
『ま、まて! それならなんで今までその娘を仲間にしていかったんだ?!』
『忘れていた……』
俺がそう言うと、加賀美は当然のツッコミをする。
『忘れている? そんなこと無いはずだ!
君が創った存在だろう、そんな大切なことを忘れるか?』
加賀美はやたらと早口で喋る。
『君がこのゲ―ムを始めてから半年も立つんだぞ?』
『ああ、そうだ。だからなぜ忘れていたのか俺なりに整理したんだ』
『聞かせてくれるか?』
俺は頭の中で考えを整理して加賀美に話す。
『整理って言っても。簡単な話なんだ。このゲ―ムはエラ―だらけじゃないか?』
『ああ、そうだね?』
『だから、このゲ―ム【ワールド・オブ・ユートピア】にログインしたときに、
俺自身の記憶デ―タにもエラ―が起きた』
『つまり、その時に五人目のヒロインの存在も忘れたということか』
恐らく……俺がこのゲームにログインしたときにはもうバグは発生していたんだ。
『ああ、恐らくは。そして、さっき《ジュピタ―》という街の名前を思い出した時に……』
『“フェ―ベ”の存在を思い出した……ってことだね?』
『まあ、
俺達は心の中で会話を終わらせる。
しかし、エラ―ばっかだなこの世界は。
ここしばらく、エラ―絡みの大きなトラブルが起こっていないのが唯一の救いか。
……いや、今まさに魔王軍が攻めてくるとかいうトラブルが起きようとしているんだっけ?
「――くんっ!」
「―――さんっ!」
彼女たちはなにか俺に話しかけている。
「え? どうした?」
「どうした? ではなく、私達はなんども声を掛けていますのに無視しますから」
「あ、ああ、済まなかった。少し考え事をしていたんだ」
俺がそう言うと、コーデリアは納得してるのか、
していないのか……よく分からない表情をしていた。
「それでっ。まおう軍がどうしたのですか?
もしかして《ディオ―ネ》目掛けて攻めてきているとかっ」
幼女レアは俺が言いたいことを代弁する。
「実はそうなんだ」
「「ええ―!?!?」」
彼女たち一同は驚愕する。
「ま、ままままさか、ま、魔王がこっちまで来てますの―?!」
「でもどうして魔王軍? は、ディオ―ネ目掛けて来てるのかしら?」
「それは……恐らく俺が目的なんだと思う」
「「!?!?」」
また彼女たちは
「どうして、ハヤトさんが狙われているんですの??」
「それは……」
多分だけど。
「勇者だからじゃないかな。魔王が勇者を狙うってケ―スはあんまり知らないけど」
普通RPGゲ―ムとかファンタジ―小説とかだと、
勇者が魔王城に攻めに行って、魔王を倒し行くから。
魔王から勇者を狙ってくる話はあまり聞いたことがない。
「魔王ってのは強いのですか??」
イオは質問する。
「そりゃもちろん! 魔王っていうくらいなんだからとても強いはずよ!」
「魔王は恐ろしく強くて、きっと強大な力を持っているはずですっ」
続けてレアは言った。
「お兄ちゃん達を恐ろしい力で狙ってるんです……」
《ジュピタ―》はここから遙か北に進んだ場所か……。
「よし、話は大体まとまったし、今から魔王軍を
「え? こっちから迎え討つのですの?」
コーデリアはきょとんとしていた。
「当たり前だろ! このままだと街の住人に被害が及ぶだろ」
「え、ええそうですわね! 街の住人が殺されるのはイケ無いですわ!」
コーデリアはようやく納得する。
「そうね! なんとしても防がないと!」
「です!」
「みなさんっ魔王を倒しにいきましょうっ!」
「ああ、みんな準備はいいか?」
彼女たちはコクリとうなずく。
「今から俺達は、魔王軍本拠地――《ジュピタ―》へと向かい、“魔王”を倒しに行く!」
俺は説明を続ける。
「襲いかかる相手は問答無用で迎撃する! きっと壮絶な戦いになる――!」
石造りの
いや、俺がこの世界に来た時点ではもう半年が過ぎているから十年と半年か。
きっと、今でも幽閉されているのだろう。
もしかしたら、酷い目に遭わされているのかもしれない。
待ってろよ。必ず俺が……。
勇者の俺が、魔王を倒して、お前を救ってみせるからな――!
俺達は北に進軍する為、準備を進めることにした。
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