#53 ジュピタ―奪還作戦

さて、《ディオ―ネ》を防衛する為の準備も急がねば。


急がねば……。


……まず、どうすればいいんだ?


そうだ。リシテアに頼もう。

リシテアはこの街の騎士団長だった筈だ。

騎士団長なら街の騎士を動かせるんじゃないか?


早速人頼みかよっていうのは置いておこう……。


「リシテア、この街の騎士たちを動かせるか?」

「ええ。勿論動かせるわ!」


あっさりそう答えた。


「ちなみに、何人用意できる?」

「五百人位かしら?」


「ご……ごひゃく?!」


俺は驚く。そもそもこの街に五百人も騎士がいたのか。


「ええ、この街はかなり巨大だもの」

「……そ、そうか。騎士たち五百人用意して――何か会議室みたいな所はないか?」

「会議出来る所? あるわよ! お姉さんについてきて!」


リシテアはどこかに向かっていくので俺達は付いていく事にした。


◇◆◇◆


しばらく歩いていくと、城の入り口に着く。

入り口には二人の騎士が居た。


「リシテア様! 今日はどういったご用件で?」

「今から騎士たち全員を集めて会議室に行くのよ! 他のみんなも集めてくれるかしら?」


「ぜ、全員ですか?!」

 

騎士の一人は言った。


「リシテア様がそういうって事は大事ですね……わかりました! 今すぐ全員集めてきます!」

 

と、もうひとりの騎士は言い、騎士たちを集めに行った。


「驚いた。リシテアは本当に騎士団長なんだな」

「本当にってなによぉ! 正真正銘騎士団長なんだからぁ!」


リシテアは巨大な胸を張りながら自信満々にそう言った。


「……それにしても、《ディオ―ネ》にこんな城があったとは……」

「そんなの立派な街なんだからあるに決まってるじゃない」

「た、確かに。……城って事は王様とかがいるのか?」


彼女は少し考えたあと、


「王はいないわ」


まさかの返答をした。


「……えっ? 王はいない? 不在ってことじゃなく?」


 んな馬鹿な。こんな立派な城なのにか?


「不在じゃなくて、いないの」

「どうしてだ?」


「王にはが必要だからよ。王を称える為。王が指揮を取るため。

 あらゆる状況に置いて名前が必要でしょう?」


 なるほどな……


「ああ、そういうことか。《ディオ―ネ》……いや、この世界に名前を持っている存在はほとんど居ない。

 だから王になる資格のある存在が居ないってことか」


じゃあ、《ジュピタ―》で魔王を名乗っている人物は名前があるってことなのか?

魔王は一体何者なんだ……? 


「だから、唯一ディオ―ネで、

 名前がある私が王にならないかって話もあったみたいだけど。断ったわ」

「どうして?」


「そ、そんなの決まってるじゃない! ハヤトくんと――」


リシテアは顔を真っ赤にしてなにか言っていたところで、さっきの騎士たちが戻ってきた。


「――リシテア様! 騎士――約五百名を会議室に集めました!」

「みんな、ありがとう! それじゃあ会議室に向かうわよ!」


「我々も向かいます!」


 騎士はそう言った。


どうやら準備は整ったらしい。

俺達は城の中に入った。


――ガコン。


城の中はとても豪華で、天井には巨大な灯りが灯されていた。

床は大理石、鏡面仕上げでぴかぴかだった。


真ん中にはレッドカ―ペットが敷かれており、二階へと上がる階段まで伸びている。

本来は、見張りの騎士がいるのだろうが、

今は全員、会議室とやらに居るのだろう――騎士たちは居なかった。


だが、恐らくメイドだろう――が部屋の掃除をしているようだ。


「おお―! とても綺麗な城だな!」

「本当ですね! 燃えてきました!」

「すごいですっ。これがおしろですかっ!」

「素敵な城ですわ―! まあ私の家に比べれば大したことないですけどっ!」


コーデリアの家どんだけ豪華なんだよっ!


「一階の奥に会議室があるわ。ついてきて!」

「おう!」


俺達はリシテアに付いていく。


階段の裏側に広間があり、会議室はその中にあるらしい。

そして、俺達はそこに入った。


――ガチャ。


中はとても広い空間だった。

そして、大きな机に椅子が円を描くように並んでおり、恐らく位の高いであろう騎士達が椅子に座っていた。

いわゆる、円卓えんたく会議ってやつか。


手前には、さらに大勢の騎士がまとまって座っていた。


「リシテア様! そして勇者御一行殿! お待ちしておりました」


一人の騎士がこちらにやってきて俺達に声を掛ける。


「ど、どうも!」


俺は大勢の騎士を見てたじろぐ。

みんな強そうだな……。


「こちらへどうぞ。こちらで今回の状況をご説明ください。」


俺達は部屋の一番奥の一段高い机に案内される。

机の真ん中に何かクリスタルのような物が浮かんでいる。

俺はなんとなく机の上にあったクリスタルを指先で突く。


「うわっ!」


すると、クリスタルは弾けて、代わりにホログラムの世界地図が目の前に表示された。

そして、そのホログラムは部屋の中央にも大きく浮かび上がる。


「なんだこれ!?」

「知らないの? 魔法結晶で作られた投影とうえいシステムよ」

「こうやって……指で地図を触れば――」


リシテアは地図を拡大したり縮小したりしてみせた。

成る程、スマホみたいな感じで使うのか。


「こうやって、線を書いたりできるわよ。ここで操作すると全てあそこにも反映されるの」


リシテアは部屋の中央を指差す。


「更にこの魔法結晶投影システムは、騎士達の机にもあるからみんなで意見を言い合う事もできるわよ?」


なんだこの技術……。これもこの世界に心を創った影響なんだろうな。


「すげぇ……。ところでこの技術はいったいどこから来たんだ?」

「最近 《ディオ―ネ》で作られたシステムよ。この技術は《ディオ―ネ》にしか無いの」

「まじかよ……」


《ディオ―ネ》恐るべし。


「ところで勇者様、ここにこれだけの騎士達を集めた理由を訊きたいのですが……」

「あ、ああ。それは、そうだ。この投影システムを使って話そうか」

「是非。ご説明ください」


説明か……基本引きこもりでコミュ障の俺には厳しい話だ。

いや! 勇気を振り絞れ来栖隼斗! ここはそもそも俺の世界なんだ!


えっと……ここはカッコよく……。


「え―こほん。では――これよりブリ―フィングを開始する! 作戦名は《ジュピタ―奪還》だッ!」

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