#51 魔王の力

私とアレクサンダ―は武器を構えたまま一歩も動かない。

ヤツは私がこの最上階まで無傷で来ているのを見て、

私を相当の実力者だと思っているのか、様子を見ているようだ。


流石王……賢い判断だ。


王が構えている武器は、とてつもなく大きな大剣だった。

それを王はまったく重そうにもせず、軽々しく持っていた。


「なぜ、お前はもともといた看守を殺し、あの頭のくるった男を手配した?」


私達は武器を構えながら会話をする。


「その看守には、以前から不適切な行動が確認されていた。だから処分することにしたまでだ」

「あの金髪の男は不適切ではないのか?」


私がそう言うと、アレクサンダー王は、


「男はを奪おうとして私を殺そうとしていた疑惑があった。

 だから、もう一人の名前のある君――フェ―ベに合わせ、

 どんな反応をするのか偵察はんを呼び、監視していたのだ」


そう発言した。

そうだったのか、私はてっきり王が私をいたぶるために、あの男を手配したのかと思っていた。


話の途中にも関わらず、先に動いたのは王だった。

王は私めがけてダッシュし、目に止まらぬ速さで大剣を振る。


――ブォン


私は王の大剣を鎌で弾く。


ガキィィン――と高い音が鳴り響く。


アレクサンダ―は大剣の一振りを弾かれたにも関わらず、特に焦る様子は無い。

そして、話を続けた。


「……そして、私の予想は当たっていた。あの男は君の名前に酷く動揺し、

 更には私を殺そうとしていたという決定的証拠も掴んだ」


アレクサンダーは「だから」と話を続ける。


「その男も処分するところだったのだ、だが――」

「私がその男を殺した、ということか」

「……そうだ」


ほう、この王はあの狂った男を処分しようとしていたのか。


――だからといってアイツを手配したのは変わらないのだ……!


更に王は激しい連撃を重ねる。

私はその度に鎌で弾く。


「弾いてばかりでは私は倒せんぞ?」

「フンッ……そうかな……?」


相手の攻撃の速度は緩むこと無いどころか、剣戟の速度は増していく――。

私はその攻撃に怯むこと無く全てデスサイズで受け流す。


「ぬっ……ッ」


王はまさかここまで剣戟けんげきに付いてくるとは思っていなかったのか、

徐々に顔に曇りが出てくる。


「巨大な大剣にも関わらず、この速度で攻撃を繰り出せるとは……大したやつだ」

「君こそ……流石ここまで来ただけの事はあるようだ……な……ッ!」


王は流石に剣を振るうのに限界が来たのか。後ろにステップして距離を取る。


「まさか、囚われていた君にこんな力があるとは思わなかったよ。だが、これならどうだね……」


アレクサンダ―の大剣は白く輝き出す。

大剣の周りには青い粒子のような物が浮いていた。


王はなんらかのスキルを発動させるつもりだろう。


「いいだろう……ならば私もほんの少し――」


私はアレクサンダ―に対抗するため、スキルを発動させる準備をする。


「これが……私の全開だッ!《オメガバ―スト》! ハアァアアアアアッッ――!」


そして、王はそのまま輝く大剣を振り下ろす――!


「――本気を見せてやる……!《カオスドライヴ》ッ!」


私はアレクサンダ―への対抗として、

鎌から巨大な漆黒のオ―ラを出現させ、それをヤツの大剣にぶつける――!


――ズドオオオオオン。


刹那せつな――爆発が引き起こる。

強大なエネルギ―同士の衝突。

そして、爆発は収まっていき、相手の姿が見えていく。


「がはっ……」


アレクサンダ―は吐血している。

ヤツの大剣は真っ二つになっており、地面に落ちていた。

私は《オメガバ―スト》のエネルギーをも上回る力で、大剣ごとヤツをつらいたのだ。

吐血し、倒れている王に近づく。


「私の勝ちだな……」

「君の……その力は一体――」


「――さよならだ、哀れな王よ」


私は王の首をねて、トドメを刺す。


目の前には、さっきまでアレクサンダ―が座っていた玉座があった。

私は玉座にどんと腰を降ろしてみる。

まるで王にでもなった気分だ。


すると、異変を感じたのか、さっきまで兵士や騎士達がこちらに来る。

さっきまで寝ていたニ百人か。


「アレクサンダ―殿! 無事――!?」


兵士たちは刎ねられた王の首を見て驚く。

そりゃそうだろう。あそこまでの力を持った王が死んでいるのだから。

そして、玉座に座っている私を見る。


「まさか……貴様がったのか!?」

「そうだ。と言ったら、どうする?」

「殺す!」


全員が、私に牙を向け、襲いかかってくる。

ほう……よっぽど王に忠誠ちゅうせいがあるのだろうな。


「二百人か。いいだろう……」


私は玉座に座ったまま。スキルを発動させた。


「《悪魔召喚》……ッ」


私は鎌を横に払う動作を行う。

すると、地面から無数の“穴”が出現し、

そこから様々な種類の悪魔型のモンスタ―がわらわらと出現する。


兵士たちの数は二百。かなりの数だろう。

だが――こっちの悪魔の数は五百に近い。


「な、なんだこいつらは!?」

『ケケケケケ……』


「――殺せ」


私は悪魔たちに指示をする。


『ケケケケ……!』


悪魔型のモンスタ―は兵士達を次々と殺していく。

兵士たちは応戦するも、数で圧倒されていく。


「く、くそッ!」


私は悪魔たちに攻撃をやめろと指示する。

すると、悪魔達の攻撃は止まる。


そして、私は兵士たちに言う――


「いいか、私に従え。私に歯向かうものは殺す。これからは私が王――」


ハヤト、貴様が勇者だと言うのなら……、


「―――私が、魔王だ………ッ!」


私は話を続ける。


「これから我々、“魔王軍”は、勇者がいるとされる《ディオ―ネ》へと侵攻する――ッ!」


◇◆◇◆


加賀美が俺――来栖 隼斗の心のなかに語りかける。


『“魔王軍”を名乗る連中が《ディオ―ネ》まで攻めてきている!』


俺は加賀美かがみの発言内容に驚いた。


「魔王軍? 魔王? そんな存在は俺は設定していないぞ?」


わけがわからない。魔王とか何の話だ??


「魔王ってなんですか?」


イオは頭の上にくえすちょんまーくを作り、疑問状態だった。


「魔王……きっと恐ろしいのよ」


そのイオの質問に対し、リシテアはそう答えた。


「魔王? それって……いわゆる悪魔の王みたいな感じですの?」

「そうですねっ。わたしの知っているまおうはそんな感じですっ!」


コーデリアとレアは魔王について思ったことを述べる。

俺は加賀美と心のなかで会話をする。


『加賀美、“魔王”ってのは何者かわかるか? 名前は?』

『わからない……。ただ分かることは……』

『分かることは?』


そういうと、加賀美は少しの間静かになった後、


『……魔王軍とやらが《ジュピタ―》から《ディオ―ネ》まで、

 真っ直ぐ侵攻してきているといことだけだ……ッ!』


魔王軍が攻めてきていると言った……。

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