#42 異変
「ハヤトくん! あの魔物は倒せたの?」
「ああ、倒せた」
「それは良かったわ!」
「あんな強そうな魔物を一人で倒すなんてすごいですっ!」
レアは目をキラキラとさせている。
「凄いだろ? なんたって俺は勇者だからな!」
「勇者すごいですっ!」
「ハ、ハヤト様なら倒せると思っていましたわ……」
コ―デリアは目元が真っ赤になっている。
「お前、泣いてただろ」
「そ、そそそそそんなわけないでしょ! どど、どうして私がハヤト様を心配して泣くのですの?」
「俺は心配してるなんて言ってないぞ」
「なな、ななななななっ……!」
コ―デリアは口をあんぐりと開けわなわなと肩を
「さて、問題は解決したし《ディオ―ネ》に戻ってみんなでパ―ティだな!」
「ぱ―てぃですっ!」
「ええ! そうしましょう!」
コ―デリア以外のメンバ―は《ディオ―ネ》に向かって歩いていく。
「わ、私を置いて行かないてくださいましっ」
硬直が解けたコ―デリアがすたこらと付いてくる。
そして俺達は《ディオ―ネ》まで戻った。
外はすっかり真っ暗だった。
「う―む……」
パ―ティとか言ったものの……何をすればいいのやら……
「ハヤト様。どうしましたの?」
前から思っていたけど、こいつの様付けってまるで……。
……俺は何を考えているんだか。
「ハヤト様?」
「いや、なんか奴隷みたいだと思ったから」
……間違えて喋ってしまったっ!
「な、なにがどどど奴隷ですの?」
「いや、なんでもない。忘れてくれ……」
「気になりますわ―!!」
そうじゃなくて、だ、な。
パ―ティ……ねぇ……。
俺は歩きながら辺りを見渡す。
雑貨屋に武器、防具屋、アイテム屋。
アクセサリ―屋に帽子屋。後は酒場に……。
貸し切り出来そうな店でも無いかな?
いや、そもそもどうやって貸し切るんだ。
ん? 待てよ?
俺は勇者な訳だから、勇者の権利を使えば店を貸して貰えるんじゃないか?
悩んでいると、一人の男に声を掛けられる。
「おや? あなた方は伝説の勇者達ではないですか。何かお困りでも?」
「あなたは誰ですか?」
「私はそこにあるパ―ティ会場を経営している者ですが……」
と、男はすぐ近くにある建物を指差す。
指差した先には大きな建物があり、看板には『パ―ティ会場』と記載されていた。
「あっ! もしかして、そこの会場って空いてたりしませんか?」
「空いているも何も、さっき閉店しましたよ」
「そうですか……」
俺はガックシとする。
「――ですが、勇者殿が使いたいというのでしたら是非うちの会場を使ってください!」
「…………本当ですか!?」
俺は考えていなかった返答に驚く。
「ええ、勿論ですとも。自由に使ってください。
うちに出来ることならなんでも用意させていただきますよ」
「りょ、料金は……」
「お金は必要ありません! ささっどうぞお入りください!」
俺達はパ―ティ会場の中に案内される。
◇◆◇◆
「おおっ……」
会場の中はとても広く、机や椅子が多く設置されていた。
大きなシャンデリアがいくつかあり、部屋はオレンジ色にライトアップされている。
そして部屋の奥にはパフォ―マンスでも披露する場所だろうか――がある。
そこでパフォ―マンスを繰り広げている人がいた。
「凄いですっ!」
「ええ、凄いわね!」
「豪華ですわ……まあ、私が住んでいた所と比べるとしょぼいですけど」
コーデリアの家はどんだけ豪華なんだよ!
「皆様。席にお座りください。豪華なディナ―を用意
と、さっきの男が言った。
「ありがとう。しかし、本当にこんな豪華な場所タダで借りてもいいんですか?」
「別に構いません。
むしろ、勇者達には何度もこの世界を救って頂いていますから。これは
とくになにも救ったりなんかしてないけどな……
この世界の勇者という設定が効いているんだろうか。
「本当に助かります」
俺は男に礼をして、席に座る。
「ほら、みんなも座ろうぜ」
彼女たちも席に座る。
暫くすると豪華なディナ―が運ばれてきた。
みんな目をキラキラさせている。イオを除いては。
「どれどれ……」
そして、俺はそれをフォ―クで掴み、食べる。
――ぱくっ。
「うん! 美味い!」
「美味しいわね~」
「美味ですわ……コホン。まあまあですわね」
「ぱくっ。…………おいしいですっ!」
そのまま、みんなで談笑しながらディナ―を美味しく食べていたのであった。
そして、食べ終わった後。ずっと無言で食べていたイオが立ち上がり――、
「……リシテアさん。少し外に行きませんか……?」
そう静かに言った。
「ここじゃダメなのかしら?」
「少し相談したいことがあって……」
「いいわよ。相談なら何でも
そう言ったリシテアは席を立つ。
「ハヤトくん、少しイオちゃんと外に行ってくるわね」
「ん? ああ、わかった」
リシテアとイオは外に出る。
「最近、イオさんの様子がヘンですの……」
コーデリアは首をかしげる。
「そうだな。何か悩み事でもあるようだ」
「でもそれはきっと……」
「きっと?」
――きゃああ!
「な、なんだ?」
「外でなにかあったのですの?」
「誰かが悲鳴をあげているようですっ」
外で悲鳴のようなものが聞こえた。
俺達は急いで外に出る。
――リシテアが倒れていた。
「リシテア!?」
俺はリシテアに近づき身体を揺さぶる。
「冷たっ!」
リシテアの身体は
「お兄ちゃんっ! あれっ!」
レアは一人の少女を指差す。
何かから逃げるようにこっちから離れていく少女がいた。
水色の髪だった。
「ま、待て!」
俺は追いかけようとするが、
リシテアの事が気になりここから離れられなかった。
俺の声に反応したのか、さっきまで走っていた少女はぴたりと止まり。
「もう、あなた達とは一緒にはいられませんから……」
少女はそう言い残し、離れていく。
「イオ! 待ってくれ――ッ!」
そして、
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