#43 氷の少女イオ

俺の目の前に身体中がカチコチに氷漬けにされているリシテア。


「リシテア! しっかりしろ!」

「お姉ちゃんっ!」

「リシテアさんっ!」


来栖くるす。落ち着くんだ。UIをよく見ろ』


俺は加賀美かがみに言われるがままUIをチェックする。


リシテア レベル16


HP:1800/2190


状態異常:凍結


「生きている……!」

「お姉ちゃんは生きているんですかっ?!」

「ああ、まだ生きている」

「よ、よかったですっ……」


「ホッとしましたわ……」


リシテアは生きていた。

だが、状態にかっているようだ。

これをなんとかしないとリシテアは固まったままだな……


しかし“凍結”状態になったって事は、なんらかの氷属性攻撃をモロに食らったって事になる。

イオはリシテアに対して氷魔法を放ったって事だろうか。

あまりイオが犯人だと信じたくはないが……。

だが、それならイオの髪の色が水色に変化していたことにも納得がいく。


……そういえば、少し前に樹の怪物、

《ブレイズウッド・モンスタ―》と戦う前にイオの炎魔法が殆ど機能しなくなっていたな。

あれはイオが氷属性に変化する前兆だったってことか?


「イオ……」


――髪の色が水色に変化していたイオ。

どうして髪の色が違うのにイオだとわかったか……

だ。

あの可愛い服装を“設定”したのは俺だ。

だから、アイツがイオだと確信した。


俺は“凍結”状態のリシテアを抱きかかえ、アイテム屋に向かうことにした。

あの店なら“凍結”状態を回復できるアイテムがあるかも知れないと思ったからだ。


――ガチャ


「らっしゃせ〜! 何かお探しですかぁ〜?」


女性の店員だった。


「……って! そ、その娘どど、どうしたんですかぁ?!」


「見ての通り“凍結”してるんだ。

 この状態を癒せるアイテムはないかなと思いまして」

「“凍結”回復アイテムならあります。 銀貨一枚です!」

「じゃあそれでお願いします」


俺はお金を払い、店を後にする。


「ありがとうございましたぁ〜!」


――カランカラン。


俺は店に出た後、宿屋に泊まっていた。

部屋には氷漬けになっているリシテア含め。全員居る。

そして俺は“凍結”回復アイテムをリシテアに使用する。

すると、氷漬けになっているリシテアの身体が少しづつ治っていく……。


「んっ……」


リシテアは目を覚ます。


「リシテア! 大丈夫か?」

「ええ……それよりもイオちゃんがっ……!」


リシテアは突然目元を真っ赤にして泣きだした。


「リシテア? ど、どうした?!」

「私……イオちゃんを助けて、あげられ、なかった……」

「相談に乗ろうと思って、いた、のに……」

「私っ! イオちゃんに何もしてあげられなかったっ!」


リシテアにしては珍しく感情的になって泣いていた。


「何いってんだよ? お前は悪くないだろ」

「イオちゃんは……言ってたわ……」


リシテアは神妙な顔をしながら言う。


「な、何を?」

「私の邪魔をするなって……」

「……え?」

って……」


「…………!」


そう、か……。そういう事だったのか。

どうして気づいてあげてやれなかったんだよ俺はッ!

俺は、バカだ。


「ありがとう」

「えっ……?」

「リシテアのおかげで、イオの気持ちがようやくわかったよ」

「俺……イオを探してくるよ」


◇◆◇◆


「探してくるって、一人でですの?」

「私もイオさんを探すのを手伝いたいですっ!」


コーデリアとレアは探すのを手伝うと言った。

その気持ちはありがたい……だが。


「いや、駄目だ」

「ど、どうしてですかっ?」

「お前らを失いたくないからだ」


「で、でもっ!」

「リシテア、レア、コ―デリア」


「…………」


リシテアはずっと黙っている。


「なんですの?」


「お前らは《ディオ―ネ》にずっと居るんだ。

 ここから外に出るな」


俺は今持っている金の殆どをコ―デリアに渡す。


「なんですの?」

「この金で好きなだけ遊んでいてくれ。レアとリシテアを頼んだぞ」

「……任せるのですわ! 

 大人しくここで待っていますから安心するといいですわっ!」


コ―デリアは、ほこらしく胸を張る。


「行ってくる!」


◇◆◇◆



俺は宿屋を出た後、《ディオ―ネ》にあるアクセサリ―屋に向かった。


――ガチャ


「へい!らっしゃい!」

「すみません。“凍結”状態を防ぐようなアクセサリ―ってありますか?」

「ああ、あるよ。これだ」

「じゃあこれをお願いします」


俺は“凍結”を完全に防止するアクセサリ―を購入し、店を出る。


「ありがとうございました」


アクセサリ―を装備した後、イオがいそうな場所を考えた。


「イオがいそうな場所……あっ」


イオがいる場所なんて一つしか無いと確信した俺はへ向うことした。


◇◆◇◆


俺はスキル:《テレポ―ト》を多用し、海底都市トリトンの入り口に来た。

兵士が一人立っていた。


「門を開けていただけませんか?」


「《トリトン》に入るには許可証が必要だ……はっ!」

「勇者様! どうぞ中へ!」


――ガラガラ


門がゆっくりと開いていく。


「あっ……ちょっと待ってくれ」

「どうしましたか?」

「俺の仲間の……青い髪の少女が通らなかったか?」


「ええ、さっき通りましたよ。

 勇者様の仲間だと認識していましたのでここを通しました」


「ありがとう!」


俺は門をくぐり《トリトン》の中に入った。


あちこちが魚で満たされているこのエリアを暫く歩いていくと――


「イオ……」


いた。


水色の髪に変化していたイオがぽつんと立っていた。


泳いでいる魚を眺めているようだった。


「――――—!」


俺が声を掛けると。イオは走って逃げていった。


「イオ! 待ってくれ! お前に謝りたいことがあるんだ!」


だがイオの足は止まらず、《トリトン》の出入り口の方面に走っていった。


俺は急いで追いかける。


すると、イオは剣を抜き出し。


「《アイスクリスタル》……」


突如――イオの剣から大きめの結晶状の物体が俺に向かって放たれる。

それを見た街で過ごしていた人々が悲鳴を上げる。


「ぐっ……!」


俺はクリスタルの衝撃で後ろに倒れた。


「こないで……ください……!」


イオはそう言うと、《トリトン》から外に出ようとする。


「待て!」


兵士数人はイオを追いかけ、捕まえようとする。

しかし、イオは氷属性の魔法を使って兵士たちを次―と“凍結”させていった。

その間に彼女は門をくぐり外に出たようだった。


俺は起き上がりイオを追いかけようと外に向かう。


「イオ……ッ!」


そのまま地下階段を登り、《トリトン》の外に出た。


だが――そこにはもう彼女の姿はなかった。

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