#37 一度きりのタイムリープ

タイムリ―プと言う言葉に胸が高鳴たかなった俺だが、やはり疑問点があった。


「システムの復元を使えば過去に戻れるってのはわかった。だがおかしいぞ?」

「なにがだい?」

「システムの復元は事前に作成されたシステムに戻るわけだから、

 仮に戻ったって俺の記憶はなくなるはずだ!」


俺は加賀美を見ながら続ける。


「記憶が無くなったら過去に戻っても意味が無いはずじゃないか?」


俺はイオの方を見て言った。


「それに、過去に戻ったら俺だけじゃなくイオの今の記憶が無くなるじゃないか! それだと……」

「イオとの恋人関係が無くなると言いたい訳だね?」


「そうだ」


すると突然、それまで黙っていたイオが複雑な表情をしながら言った。


「過去に戻ったらハヤトさんとの記憶を忘れてしまうのですか?」


さらに、イオは今までに見たことのない感情をむき出しにして言う。


「イオ! 記憶が無くなるなんてイヤです! そんなのダメです!!」

「わかってる。俺だって嫌だ。イオのこれまでの記憶なんて無くさせないさ」

「それなんだが……」


俺達の会話に割り入ってきた加賀美は喋りだす。


「来栖とイオのデ―タをこの管理用コンピュ―タに、

 バックアップをすれば記憶の問題は解決されるはずだよ」


バックアップ……? デ―タをこのコンピュ―タに残す……?


「……そんな事が出来るのか?」

「言っただろう? これはVRPCと連動している。VRPCに出来ることは大体出来るはずだ」


加賀美は説明を続ける。


「ついでに心という概念がいねんと、消えてしまった彼女達のバックアップもすればいい」


俺はコンピュ―タの電源をいれた。

すると、コンソ―ルが表示され俺の入力を待っている。


「そうすれば、この世界で得たものはバックアップされて、

君たちのステ―タスも今のまま引き継がれるだろう」


そして、ホログラムモニタ―の前に立つ。


「まずどうすればいい?」

「君と君が仲間にする予定ののバック

アップをしてくれ」

「わかった」


俺はコンソ―ルに文字を打ち込んだ。


『ハヤトのバックアップ』


――ハヤトのバックアップを行いますか? Yイエス/Nノー


本当にあっさり通った!

俺はYを選択した。

しばらくが経過した後――。


――ハヤトのバックアップが完了しました。


そして俺は続けて文字を入力する。


『ハヤトの仲間のヒロイン全員のバックアップ』


――ハヤトの仲間のヒロイン全員のバックアップを行いますか? Y/N。


キ―ボ―ドを打つ指がピタリと止まる。


「あ……れ……?」


俺は違和感を感じ、コンソ―ルに書かれている文字を見直す。


という言葉に物凄い違和感を感じた。

な、なんだ?

俺は、何かを忘れている……?


「来栖。どうしたんだい?」

「い……や……なんでもない……」


違和感の正体に気づかないまま俺はイエスを選択した。

バックアップ完了の文字が出る。


「……バックアップ完了したぞ。次は?」

「今までクリアしたクエストを全てバックアップするんだ。念の為にね」


俺は言われるがままにバックアップ作業を完了させる。


「終わったぞ?」

「次は、僕をこの管理用コンピュ―タにインスト―ルするんだ」

「……バックアップじゃないのか?」


加賀美はうなずき、説明を続けた。


「バックアップは過去に戻った時に体も記憶も残るが、

 インスト―ルは記憶しか残らない。そのかわりに……」


かわりに? と俺が問うと、加賀美は応えた。


「……インスト―ルすればこの世界を常に監視することが出来るハズだ」

「監視?」


加賀美は俺を真剣な眼差しで見ながら続きを言う。


「来栖と戦闘している時に言っただろう、この世界はエラ―だらけだ。

 エラ―の影響を避ける為に、僕が事前に君に知らせる役をやる事にする」


なるほど……。この世界の管理者をするわけか。


「……どのみち君だけではこの世界をクリアすることは不可能だ」

 エラ―を“必ず”なんとか出来なければ、五百あるクエストのクリアは絶対に達成できない」


「……なるほどな。だがどういった手段で俺にエラ―が起きること知らせるんだ?」


そう聴くと、加賀美は答える。


「簡単さ。インストールを行えば、君の脳に直接危機を知らせることができるようになる」

「脳に野郎の声が聞こえてくるってことか?」

「そうだよ」


俺は不快感を覚えたが、今は細かいことを考えてる場合じゃないと思い我慢した。


「……お前のプレイヤ―名は?」

「ユウヤ」

「了解」


『ユウヤをインスト―ル』


俺はY/Nの選択にイエスと選んだ

……しばらくしたのち、加賀美の姿は消える。


「加賀美は……インスト―ルされたからここには居ないのか」


『来栖、聞こえるかい?』


耳元でいきなり声が聞こえた。


「うわっ! なんだ!?」

『デ―タリンク成功のようだね。これで君にこの世界の情報を伝えることが出来る』


彼は俺の脳内で会話を続ける。


『それと、僕のステ―タスの一部とスキルの全部、

 さらにレ―ルガンが使えるようになったはずだ。確認してみろ』


『なんだよ、驚かせるなよ。幻聴かと思ったぞ! どれどれ……』


ステ―タスを確認するとこうなっていた――


ハヤト:レベル31


クラス:勇者


HP:7200


MP:5900


得意武器:剣、銃


加賀美のステ―タスの一部を引き継いだ為、少しレベルが上がっていた。

そして新たに追加された俺のスキルがこうだ。


《ウェポンイクイップ》

【効果】武器ウィンドウに存在する武器を瞬時に入れ替えることが出来る。

【コスト】MP800消費。


《テレポ―ト》

【効果】スキル発動から七秒後に五十メ―トル以内の任意の場所に瞬間移動することができる。

【コスト】MP1700消費。


武器ウィンドウを開くと、レ―ルガンも追加されていた。


『ははは。ごめんごめん――っとこれで後は“システムの復元”を行うだけだけど』

『だけど?』

『いいかい? さっき戦闘しているときにも言ったが、

 エラ―だらけの世界に心という概念を生成してるんだ』

『ああ』


『過去に戻ったとしても、どんなトラブルが待ち受けているか分からない』


加賀美は緊迫しているようだった。


『だから、絶対にミスを犯すな』

「……わかった」

『まあ、それを回避するために僕がいるんだけどね』


そして俺は、コンソ―ルにシステムの復元のコマンドを入力した。


――カタカタカタ。


すると、コンピュ―タのモニタ―にあるメッセ―ジが表示された。


――注意! このプログラムを実行するにはエラ―が多すぎるため、

  このコマンドは“一度きり”しか正常に動作しません。それでも行いますか? Y/N。


画面をよく見ると、復元ポイント2040/06/12 21:36:59 と記載されている。

2040年6月12日、

21時36分59秒……。


現在時間 “2040/06/12 21:37:50”


ログインしてから、これだけのことがあったのに、

現実世界では一分も経っていないのか……。


「一度きり……」

『どうやら、一度でも過去に戻ったら二回目はうまく機能しないようだね』

「そうか……」


もう二度と過ちを犯すことはできないという恐怖心がキ―ボ―ドを叩くのを躊躇ちゅうちょする。

するとさっきまで黙っていたイオが喋った。


「いきましょうハヤトさん。皆さんを助けるためにここに来たんですよ!」

「ああ。行こう」

「それが……ハヤトさんの目的だったはずです!」


そうだ。躊躇する必要なんて無い。


だって俺は――、


――ハーレム楽園を築く為にここにいるんだ。


「タイムリープを実行する……! 答えはイエスだッ!」


システムの復元を開始します.......の文字がモニターに表示された。


そして、二人の姿は静かに消えていく。


「そうです……それが、ハヤトさんの目的なら――」


紅い髪と瞳の少女は、静かに言う。


「――イオは付いていくしかありませんから……」


イオは何かをつぶいていたが聞き取れなかった。


そして、


ゆっくりと……。


世界が暗転する――――!


これが――最初で最後の…………ッ!

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