第3話

 車を出た。


 ふたり。出てくる。


「警察手帳を拝見したい」


「誰だ、おまえは」


「ワイルドカード」


 相手の反応。ワイルドカードを、知っているらしい。


「あなたがワイルドカードだという、証拠がない」


「そりゃあ、警察の下っ端は俺の名前も顔も知らんだろうな」


「なにを」


 怒り出したひとりを、もうひとりが抑える。典型的な、ふたり一組。県警じゃなくて、もしかして。


「察庁のかたがた、ですか?」


 ふたりの反応。間違いない。


「そうか。国交省から伝があって、ここに来たわけだ」


 観念したらしい。警察手帳を見せてくれた。


「捜査用の偽装パチモンだけどな」


「いえ。充分です」


「地上げ屋の女を追ってたら、まさかまさかの主賓ご登場だからな。こりゃ参った。うちのボスからはワイルドカードにだけは注意しろと言われてたんだが、まさか女性だとは」


「おっ」


 一目で、女性だと気付いた。中性的な声、中性的な身体が取り柄だった。トイレも、だいたい空いているほうを使っている。


「見る目ありますね」


「そりゃあ、察庁勤めが長いと人を見る目も鍛えられるもんでね」


 喋っているのは、年長の方。若い方は、会話を聞かず周りを警戒している。


「あなたがたの上の方、指令を下したかたと話がしたい」


「どうだかな。俺らは遣い走りだから、なんとも言えん」


「では、別な情報をください」


「くださいって言ってもな。ワイルドカードにだけは注意しろと言われてたんだぜ。ほいほいと渡すのは」


「人を見る目は鍛えられるんですよね」


 年長の方。少し黙る。


「たしかにあんたは悪い人間じゃねえ。追ってたボインの姉ちゃんも、さっきすぐ車に逃げた兄ちゃんもだ。しかしな、こっちも立場がある」


「欲しいのは土地絡みではなく、あなた方が追っていた女、それを追跡していた人間です」


「俺たちの他に追ってたやつらか。さっき逮捕されたが」


「逮捕」


「ああ。街中で拳銃ハジキ使いやがった。ずぶの素人だ」


「ありがとうございます。こちらに接触したい場合は土地に来てください。特殊部隊がいます」


「ちょ、おい」


 すぐ車に戻った。


「小間さん。さっきこの女を追っていたふたり、街中で拳銃ぶっぱなして逮捕されたそうです」


「はい。無線も同じことを言っています。さっきのふたりの無線も傍受しますか?」


「おねがいします」


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