第2話

 駅前まで行かずとも、すぐに食いついてきた。黒い車。


「おまえの胸センサーに引っ掛かってないのか」


「運転してる人間の胸をどうやって凝視すんのよ」


「それもそうか」


「どうする。引き剥がす?」


「逆だ。止める。軽くぶつけろ」


「まじで」


「どうせおまえの車じゃないんだろ」


「まあそうですけど。組織の所有する車ですけど」


 なおさら都合がよかった。地上げ屋の車にぶつけたあとの反応で、相手の所属が分かるかもしれない。


「はい急ブレーキ」


 身体が前に吹っ飛んで、シートベルトで戻された。


「ぶつかったわよ。誰が出てくの?」


「小間さんお願いします。おまえはいつでも出れるようにしとけ」


 小間が出ていく。


 黒い車。ふたり組が出てくる。


 小間。走って戻ってきた。


「すぐ出してください。警察でした」


「きゃああ」


 急発進。すぐ後ろから、サイレンと赤色灯。


「おかしいな、地上げ屋と警察が組んでて、その地上げ屋は今ここにいる。誰の差し金だこの警察は」


「すぐぶっちぎれるけど、どうする。引き伸ばす?」


「少し引き伸ばして、高速で引き剥がす。小間さん、警察の無線は傍受できますか?」


「できます」


 小間が袖でまたなにかぼそぼそ呟く。


「高速道路で高速で引き剥がすぜえ」


 すぐ高速道路に入った。みるみるうちに赤色灯が遠くなる。


「小間さん」


「いま聞いています」


 小間。袖に耳を近づけて、そして、離した。


「引き返してください」


「えっ」


「第三勢力と組んでる警察というか、地上げ屋とは別の勢力です」


「まじか。道路逆走は難しいよ」


「じゃあ、一度出て戻ってください。検問は敷かれません」


「うええ。逃げたり追ったり忙しいわねえ」


「あっ」


「今度は何ですか」


「市民病院に不審者出ました。医者のふりしたのを見破って、いま追ってますが、人が足りないのでこのままだと逃げられます」


「うわどうしよう。警察か不審者か」


「とりあえず一回高速は出るわよ」


 迷ったのは、一瞬だった。


「警察。不審者は詳しいこと知らない可能性ある」


「おっけい」


 高速に入りなおして、すさまじい速度で来た道を戻る。


「あっ、いたいた」


 警察車両。まだ止まったまま。


「車を止めろ。次は俺が出る」


「カードは私に」


 渡した。


「俺が逮捕されたら、気にせず逃げろ。どうせ証拠不十分だからすぐに釈放される」


「おっけ。どんと構えて逮捕されてこい」

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