第3話 鈴本新開はよく分からない
んーまあ、心が読めなくてもいいか、チャイムが鳴り終わった後、俺はそんな事を思っていた。
だって、黒髪ロングのちょっと可愛い女の子がクラスで目立ったり、よく喋ったりしてない子に話しかける事なんてね。そんな事滅多に起きないからね、もしそんな事起きたら、びっくりして死んじゃうかもーと適当な事を思っていると。早速、教室の窓側の席に座っている、新開に話しかける人が居た。
「俺は西宮承太郎、ねぇ新開さんって映画鑑賞が好きなんだよね?どんな映画が好きなの?」
そいつは、西宮承太郎だった。んー君まだいたんだ。
こういうモブキャラみたいなやつは1話限りの出落ちキャラなのに、なんで登場してるんだろう、もしかしてコイツこそが真の主人公!?キャーっカッコイイ、そんなわけないか。
そんな事思っていると新開がとんでもない事を言い出した。
「西宮くんねよろしく、私が好き映画は、君の肝臓を食べたいとか6月は君の魚とかかな、あとはアボンジャーズのキャプテンアポリカンが好きだよー」
とんでもない事というのは、前者の2つの作品も俺が見た事あるような有名な作品だったが、アボンジャーズ系の作品って、確かに有名だけど女子があんまり見ないんだよね...絶対コイツ彼氏居るわ。こういう系が好きな人って大体彼氏が居るんだよね。
ふっふーん推理力ピカイチなこの名探偵心待でしか分からないね。
そう思っていると、いつのまにか沢山の生徒に囲まれていた、新開と目が合った。
目が合ってしまった....まあ何にも起きないはず。きっとそう、だが現実はそうはいかんと言わんばかりに新開は立ちこっちに向かった。
あっ、俺の席って教室の1番後ろのドアに近い所だから御手洗いとかに行こうとしてるんだよね、分かりますとも。そんな考えも虚しく俺の机の前に彼女は立っていた。
「ねえ、貴方さっき目が合ったよね、名前なんて言うの?」
彼女の目は軽蔑とか不快とかそんなのはなく、ただ純粋に俺の事を知りたい。そう思わせる顔をして聞いてきた。
てか聞かれちゃったーどういう事言えば関わりなく過ごせるんだろうか、そう思った理由は周囲の人の気持ちを読んだら(誰、ああ君か転校生を変な目で見んじゃねー)とか(我らが未来のアイドル新開ちゃんがこんな良く分からん男と話すとはけしからんとか)、心の中だからって好き勝手言っちゃってくれちゃって、お仕置きが必要かな?
うん、お仕置無理だね、皆にフルコンボだドンとか言われて殴り倒されちゃうよ、これ以上この女に関わると他の人に襲われそうだなぁ。
心を読めないのは久しぶりだが、1番相手が納得してつまんないと思えるような言い方をすればいいんだ。
「俺は増田心待、新開さんだっけ、今後ともよろしく」
ここで普通に名前を言ってよろしくとか言っとけば、ふーんとか言ってどこかに行くだろう。
何故かって、答えはもちろん高一の時こういう挨拶をして興味を持たずにどっか行った人知ってます。ちなみに心を読んだら、つまんなとか思われてたみたいなんですけどね、可哀想だね、まあ俺の事なんですけど。
「君は心待君って言うんだね、良かったら趣味とか教えてよ♪」
凄くいい笑顔だちょっと可愛いって思っちゃったかも、だけどなぁ肉食系女子だと思うんだよね。もしかして俺も標的になってるのかな。まあ、こういう時は本当の事話して幻滅して貰うに限る。
「趣味はゲームとアニメと読書かな、好きなアニメは俺が恋するのはお前だけだよ、通称俺恋かな」
ふっふーんこういう系のアニメだせば相手は関わらないようにするだろう。実際周りの人は関わりたくなさそうな目してるし、勝ったなGAHAHA。
「そのアニメなら知ってるよーメインヒロインの墨須ちゃんと主人公の城市くんの恋がいいよね」
「だろ、俺は特にサブヒロインの佐知子が可愛いかな。ツンデレキャラが良いんだよ....やっぱ無し今の無し」
周りの雰囲気が何だこれは!?と言わんばかりの顔をしてる。心さえ読めれば、大抵こういう時キモイとかそういう感じの事を思われて、作品の推しを話さずへーとかだよねーなんかの適当な言葉言って終わるのに........はぁ最悪だ。
「ふふ、君って面白いね、また話そうね」
ふぇぇーこの子怖いよーもしかしたらキモオタとか思ってんじゃないの、面白いってそういう事だよね。まあ関わりが無くなるならいいや。
あと1年で自分の進路を決めれば、俺の事をキモイとか思ってる奴と関わらず、就職か進学先で他の人と話せるからね、いやー楽しみだなーだけどそこでも同じ事起きて無限ループだね。やばいですね☆
こんな事を思っていたが俺はこの時、新開が見せてくれた最後の笑顔をどこかで見た事がある気がすると感じていた、まあ、笑顔がいい女性って割と多いからね、他人の空似だろうね。
キーンコーンカンコーン
おっ、授業が始まったな俺はペンを取り出し授業に集中した。
という訳で授業に集中した結果無事に昼休みまで来た訳だが、英語、国語、美術の授業中やたらと新開と目が合った、俺もしかして狙われてるのかな....殺されるのかな、まるでホラーだぜ。
と思いながらも、朝買ったパンやおにぎりが入ったビニール袋とオカオーラと財布を取り出し外のテニスコートの近くにあるベンチへと向かった。
昼休みのテニスコート近くは快適な場所なんだよなー何が快適かと聞かれたら滅多に人が来ない穴場なんだよなー日が当たるからって理由でみんな来ないんだよね、俺はそんなの気にしないけど。
おにぎりを1つ食べ終わり、もう1つ食べようとした時、足音が聞こえてきた。
「ハアハア、探しましたよ心待君」
ん、すぐ後ろには女子が居るじゃーないか、もしかして新手の幻覚使いか!?
まあ、そんな訳はなく、後ろに居たのは新開だった。
「なんで、新開が居るんだよ、てかなんで俺を探したの?」
「それはですね、君と話がしたいんですよ♪」
「え、でも授業中仲良そさそうに周りの人と話してたじゃん、どして俺?」
「あまり言いたくないんですけど、私がアニメを好きと知って自分の好きな作品を教えてきたり、この人にわかだなと思える人が多くて、貴方なら割と語れて、学校案内もついでにしてもらえそうだからって理由ですね」
ええ、ついでの方が大切じゃね、学校生活を大切にしようよ。てか俺、学校生活大切にしてなかったね、やっぱ大切にしなくていいよ。
「それってシックスイレブンのコッペパンですよね?」
「ああそうだ、この苺ジャムを付けて食べると美味し......あれ、無いじゃん」
いつも学校の前の日に苺ジャム財布に入れてるのにまさか悪質な窃盗犯の仕業!?そういえば昨日おやつのパンに使ったんだったいっけねーってどうしよう....
「もしかして苺ジャム無いんですか?じゃあ仕方ないですね、ちょっと待っていてください」
慌てて校舎の方に戻る新開、何しに行ったんだろう。
新開を待っている間にオカオーラを1口飲み、もう1つのおにぎりを食べていると息を切らしながら、赤い何かが入ったタッパーを持ってきた、もしかして血!?
「ふっふーん、これは私が苺ジャムに色々な調味料を入れて調整し、ちょうどいい味になってるナイスな苺ジャム、通称ナイスジャムなのです」
この子って以外と痛い子なのかな、ナイスジャムは無いな、てかこれ美味しいのか.....
まあ、出された物はしっかり食えって母ちゃんが言ってたしな、食わなかったらクソがファッ....とか心の中で思われてたし、コッペパンをを1口分ちぎり、そのジャムを付けて食べるか迷った、だが食うしかない、食わなきゃこの子は怒る気がするから。
パク、ん、これは.....
「う、美味い、市販のジャムより甘みがあってそれがうざくない程度になっている、これが真のジャム....」
「オーバーリアクションなんだから、ふっふでも喜んでくれて良かったかな」
ああ、これは本当にナイスなジャムだな、コッペパンをよく噛んで食べていると。
「私も食べていいかな、んー美味い、あっ私先生に呼ばれてたんだったではまた後ほど」
嵐のように去ったな、俺は新開がちぎって食べ残ったコッペパンを見て、これどうしよう...やっぱ迷惑な奴だなぁーと思わず声が出てしまいそうだった。しかも学校案内の話とかどうしたんだよ。俺何も教えてないんだけどな。
でもそれ以上に俺はあのジャムの味を忘れられずにいた。
授業がようやく終わった。本当授業中何も起きねーな、可もなく不可もなく普通の授業だった。
何も起きない方が俺にとっては嬉しいけどねHAHAHA。
教科書をバッグに入れSHR(ショートホームルーム)も終わり、俺は下駄箱まで向かった。今週はなんと掃除が無いのだ、だから早く帰ってゲームしてとっとと寝て、今日と同じ事をやる、変わらない毎日だなぁー最高!
なんなら今日は新作の大乱闘オリックスブラザーズをやるしな。今日はいつもと違うな、やっぱいつもと違う日も最高だな。すると足音が聞こえる。
ん、俺は後ろを振り向く、視線を感じたけど気のせいだな。うん、なんか新開のような姿が見えたけど気のせい、よし逃げよう、下駄箱に上履きを入れ外靴を出し急いで校舎を出る。すると
「待ってください、一緒に帰りましょう、いや、一緒に帰ってください、これは命令です」
うん、逃げる決心が固まった、俺は駅に向かって走った。
逃げている間、俺は昼休みにくれた彼女のジャムの味と会話を何故か忘れずにいた 。
続く
俺は貴方の気持ちを知りたい ココナ @kokonatan
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