第2話 増田心待のいつもの朝

 ピピピピピ

 時計のうるさいアラームが鳴り響く。


「憂鬱だ」


 俺はそう一言悪態をつき目覚めた。

 そしてベットから飛び出し。俺は洗面台に向かった。


「心ちゃんハロハロー」


 このよく分からない挨拶をする女性は俺の母さん増田文代だ。

 みんなからふみちゃんという愛称で慕われている。


「心ちゃん、今日も学校でしょ、早く支度しなさい」


「分かったよ、母ちゃん」


 俺はそう言い洗面所で顔を洗う。

 今のは一見"普通"の会話だ、だが俺には違う様に聞こえる。


「心ちゃんハロハロー」→(この子起きるの遅過ぎでしょ、とっとと起きてよ全く、はぁー)


 こんな感じで会話と一緒に心の声も聞こえてくるのだ。

俺はこの謎の現象をトランステレパスと呼んでる。

 この時、疑問に思ったと思うが何故テレパシーでは無くトランステレパシーなのか、それはこの能力には普通のテレパシーとは違う特徴があるからだ。


 テレパシーは不O子先生の漫画で見た事があるが、あれは勝手に人の心の声が聞こえてしまうが、俺の持ってるテレパシーはの発動条件は相手を意識するか、その相手と話すと発動してしまう所にあるので、まだ多少は融通が聞く。

それでも、人と関わるとその人の本性を知ってしまう為俺はなるべく人と関わりを持たない生活をしている。

こんな事を思っている間に濡れた顔を拭き、歯を磨き部屋に戻って、制服に着替える。

 制服は白のカッターシャツに黒ズボン......いつも思うけど本当に目立たない社会人のお手本見たいだね、んーでも進学校だし多少はね。

 といつものように思いつつ俺は着替え、教科書が入ったバックを持って1階に向かった。

 「心ちゃんもう行くの?1500円置いておくから、それで昼ごはんと朝ごはん済ませて頂戴ね、頼んだわよ」→(早く学校行かねーかな、1500円もあげてんだ文句言わずにさっさと行ってくれ)


「母ちゃん、1500円ありがとよ、じゃあ行ってくるぜ」


 そして、母ちゃんは笑顔でこう言った。


「うん、行ってらっしゃい」→(良し、朝ドラ時間通り見れる今日は最高だなぁ)


 んーまあ、これがいつもだからなぁー今日はまだいい方か。そう思いつつ俺はドアを開け、歩いて学校に向かった。

 駅に向かう途中風が吹いた。その風はいつもと違い少し強く、俺のいつもの日々を壊すような風だった。


「んーどうしたものか」


 俺は今、重大な決断をしなければならなかった、それは、駅の近くのシックスイレブンで

 コッペパンを買うか牛すじおにぎりを買うかで悩んでいる....ん、そこまで重要じゃないって?

 おにぎりだと1回開けると全部食べなきゃいけない感覚になるけど、パンだと多少は残しておいて後で食べるって感覚伝わるよね?

 俺はそんな事を思いつつ時計を見る。


 7時10分


 あと10分で電車が来る急がねば。

 俺のいつもの登校スケジュールは家から駅まで40分、電車で1時間、そこから歩いて5分ぐらいで学校に着く。

 時間も無いしコッペパンにしよう、もし食べきれなかった時の事も考えて、俺はそう決めてコッペパンを入れ他のパン2個とおにぎり2個の入ったカゴを持ちレジに向かう。

 店員が商品を打っている、それが終わったのを見計らって俺は1000円を出した。

 ん、残りの500円はどうするのって?お小遣いとして俺の貯金箱に入ります♪

 店員は何も言わずにお釣りを差し出してきた、まぁこうなったのも最初この店に来た時めちゃくちゃ無愛想にわざと接したからこうなったのも仕方ないね、HAHAHA。よしお釣りも、貯金箱行きだな。

 そんな事も思いつつ、店を出て駅のホームに向かった。

そこで、俺と同じクラスメイトがいたが無視だ無視、あんなイケメンバレー部の奴と仲良くなれる気がしないしな。前に心を読んだけどあいつ、結構やばい事考えてるからな....


俺は改札を通って電車の中に入った。

 電車の中は蒸し暑く会社員が沢山いた。その中で俺はいつも本を読んでいる。今日は席が空いてるじゃないか。ラッキーその席に座り読書を始める。

 今日読もうとしていたのは俺マジという本だ。俺の青春ストーリーマジ最高という結構人気作品なんだよなぁーキャラもいいしストーリもいい、本当に最高だぜ。


 そして、1章を読み終わり気がつくと、目的地の西条駅まであと4駅だった。中途半端に読むのもあれだし今日の電車読書タイム終わりか....悲しいなぁーと思っていると目の前に約70歳ぐらいのおばあちゃんがいた。

 辛そうだなと思って誰か席を譲る人いないのかと思い周りを見渡すが誰もそんな気配が無い、はぁ面倒臭いな。


「そこのおばあさん、この席使ってください」


「おや、まぁありがとうね」→(ようやく譲る奴が出てきたか、まあ、感謝しとくぜガキ)


 え、何このおばあちゃん怖すぎなんだけど、本当に におばあちゃん?

 ちょっと怖いけど優しいヤンキーぽい感じだなと思いつつ席を譲り、手すりに捕まって西条駅を待った。


「次は西条駅、西条駅お忘れ物ないよう、お願いします」


 ようやく着いたか、そう思いつつ俺は電車を降りる。

 そこからは信号にも引っかからずに順調に西条学校に着く事が出来た。

 校門を通り、下駄箱に向かって上履きを履き3階にある教室に向かった。


 教室に入ると、いつになくうるさかった。

 席に座り、今日ってなんかイベントでもあったけと考える。

 基本的にそういう事を確認してない俺はこのクラスの情報屋みたいな事している丸メガネが特徴的な西宮承太郎の事を意識し、心を読んだ。


(このクラスに転校生が来るらしいという情報を職員室から入手した。ふふ、これを皆に伝えればもしかしたら俺もこのクラストップ層に近づける!!)


 こんな真面目そうな子がこの様な野心を持ってるとは恐ろしい.....

まあ西宮はどうでもいいや、問題は転校生である。

 女子にしろ男子にしろ関わりは持ちたくないな。だって、そういう子に限って心を読むと前のクラスのあの子と比較するとなとか思ってるんだもん。まあ気になるから見ちゃうんですけどね、やばいですね☆

 俺は関わりが持ちたくない=心を読みたくないとかでは無いのだ、。

 多少は読むけど、あまり深く仲良くはならない。

 仲良くなると喋ってる時の心の声が俺のハートをブレイクしてくるからね、本当にリアルは地獄だね。

 そんな事を思っている間にチャイムが鳴り担任が入ってきた。担任の名前は鈴木智、皆からはさとちゃんとか言われてる。


「さとちゃん今日転校生きちゃう系なの〜」


 oh......いきなり聞いちゃうのね、ちょっとびっくりしちゃったよ。


「さとちゃんはダメと何回行ったら分かるんだ。あと転校生の事何故知ってるんだ?まあ、話が早い事にこしたことはない入れ」


 そして教室のドアを皆見ている。その表情はおら、ワクワクスっぞと某ドラゴOボールのキャラのような顔だったり、不安な顔をしていた。


 まぁこれは心を読まなくても、クラスのグループや人間関係が変わるかもだしね、仕方ないね。と思っているとその転校生は入ってきた。


「おはようございます」


 その子はとても美しい黒髪のロングヘアーの女の子でとても綺麗な声だった。んーやっぱ、男子も女子もざわざわしていた。


「はーい静かにーでは鈴本さん、自己紹介を頼むぞ」


 へー自己紹介しろじゃなくて頼むぞ。なんだほぇー武士っぽくてなんか好き


「はい、鈴本新開です、好きな物は映画鑑賞と読書です。よろしくお願いします」


 その綺麗お辞儀に皆見惚れていた。だが俺はそれよりも驚いてる事があった。


(こ、こいつ、心が読めないだと!?)


 そう、先生には興味は無いが転校生には興味があった、だから意識を集中させたのに、聞こえてこない......

 そして、チャイムが鳴った、いつもなら読書をしていたのに.....

 この時、俺はいつもの日々が終わる事を何となく分かっていたのかもしれない.....


 続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る