第38話 悪事の後日

 ホワイト・デュークとショッピングセンターで偶然に出会ってからも、ユミは完全に引きこもっていました。

 まるでCOVID-19に感染した人と濃厚接触して、自宅待機しているようでした。しかし、体調は熱が出ているどころか、むしろずっと寒く、食欲がない日々でした。体温を測ると平熱でした。

 この一週間、スマホで地域のニュースをつぶさにチェックしていました。というより、それしかしなかったと言っても過言ではありませんでした。地域ニュースで自分に繋がるニュースがないか、ずっと調べていたのです。

 特別給付金の申請は済ませましたが、一向に給付されず、「Bosque」を皆で訴えるという話も、その後音沙汰がありませんでした。

 五月の下旬になり、梅雨の足音が聞こえてきました。

 ユミたちと同じように、仕事を解雇された人の話がネットニュースに載るようになってきました。企業も倒産するところが増加してきました。日経平均株価だけが不気味なほど安定していました。

 ユミは仕事探しも手がつかない状態が続きました。

 ホワイト・デュークが自分のことを裏切らないとも限らず、警察が自分のことを内偵しているかもしれない、そんな恐怖がユミの頭のなかを占領し続けました。部屋のなかに閉じこもっていても、常に誰かに監視され続けている気分でした。そんな状況で職探しなどできる精神状態ではなかったのです。

 そんなある日、一本の電話がスマホにかかってきました。見知らぬ番号だったので出る気になれず、そのまま放置しました。胸が早鐘のようになりました。思い当たる節がありすぎました。十分ほどして勇気を出してスマホの画面を見てみると、充電マークの横に留守電があることを示すマークがありました。

 もう親や親戚にとっては鬱陶しい存在である自分に電話などかけるはずはないし、どこかの企業の営業だろうと、自分に言い聞かせました。以前通っていた美容室に、うっかり携帯の番号を教えて、そのあとでしつこく電話がかかってきたことがあり、それをユミは思い出しました。

 しかし、出たくない気分や出なくてもいい理由が、確認したいという怖い物見たさに負けてしまいました。

 メッセージを聞いてみると、留守電の主はどうもホワイト・デュークでした。折り返し電話するように、という内容でした。

 訳も分からず、顔が紅潮し、血圧が上がり、身体がフワリとする感覚がありました。

 すぐにも電話して、あのことを聞いて安心したいというのがユミの本音でした。しかし、上ずっている状態が落ち着くのを待たずに電話すれば、卒倒してしまうので、取りあえず水を飲み、落ち着こうと考えました。

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