第28話 DM
ずっと真剣にパソコンのディスプレイを眺めていたら、目が疲れ、肩が凝ってしまいました。ふと時計を見ると、午後五時を回っていました。
「今日はもう止めよう」
とパソコンをシャットダウンしました。
テレビはこの時間、各局がニュースをやっているはずです。テレビは見ないと決めたし、どうせ見たって扇情的なニュースが繰り返されているのは予想できます。
夕飯にはもう少し時間があります。漫画でも読もうかと本棚を見回します。でも、気分に合致する漫画がありません。そのまま「あーあ」と溜息をつきながら、ベッドに転がりました。頭の後ろで手を組んで天井を見つめていました。こういうときは「これからどうなるんだろう」という、不安だけが循環する思考が始まってしまうので、何かをした方がいい、と思うのですが、なんとなく手につかない時間が、ただただルーズに流れます。
ごろんと寝返りを打って、左側を下にして横向きに寝ると、足の先に窓があります。窓を見つめながら、外の気配に意識を集中してみます。しかし、平日だというのに、いつもより静かです。きっとみな家にいるのでしょう。
ダラダラとそのまま外を見ていると、スマホの画面が光りました。
何かの通知を知らせたものでした。
右手でスマホを持って、インフォメーション画面を見ると、それはTwitterからでした。TwitterのDMが来ています。
どうせ、業者とか、「ネットで稼ぐ方法教えます」というような業者の勧誘だろうと思いながら、スマホのロックを解除して、ログインしました。
Twitterアプリを開いて、DMを確認しました。
相手のアカウントはなんだか分からないアルファベットと数字の混じった羅列でした。アカウントの写真はデフォルトのままで、なにも入っていません。
『お仕事あります』
とそこには書かれてありました。
いつもなら、無視します。どうせbotによる自動送信だろうと思うからです。しかし、なぜかそのときは直接入力している気がしました。魔が差したのでしょう。返事をしてしまいました。
「どんな仕事ですか」
『儲かりますよ』
すぐに返事がありました。
『簡単な仕事です』
部屋の外は夕方になっていました。部屋には初夏の禍々しい夕日が差し込んでいて、ユミと部屋の調度品のシルエットを濃く、暗くしていました。スマホのブルーライトだけが、煌々と輝いていました。
その先は何も返事をしませんでした。ベッドの脇のテーブルにスマホを放り投げました。
そのまま電気を使わないようにしていたので、暗闇のなか、ベッドに横たわって、スマホの端末を見つめていました。気がつくと、夜の十時を回っていました。
あまり行動をしておらず、しかも食事をおろそかにしていたので、食欲がわきません。身体が疲れているということもなく、今日もまた眠れそうにありません。そんな夜が、ここのところ数日続いていました。
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