第15話 非日常――タカシくん編
タカシくんは白い階段を上がっていきます。お父さんもそれに続きます。
階段の上は、「イートコーナー」と呼ばれています。カフェやうどん屋、レストラン、中華料理屋、パスタ専門店などが並んでいます。
階段を上がると並ぶ店の中央に出ます。左右を見回すと、どの店にも電灯が点いていません。それどころか、通りを照らすライトも、電飾も、全て消えていました。
左手を見ると、ちょうど初夏の夕日が真っ赤に燃えていました。
夕日に照らされた店々は漆黒に沈んでいました。
店が全て死んだように見えました。
全ての店が閉店する時間ならば、こういう光景になることもありえます。
しかし、夕方にこんなことになるなんて。
定休日ならいざ知らず、明日も、あさっても、店が開く予定はないのです。
社会が死んでいくのを実感してしまいました。
タカシくんとお父さんの脇を、我が物顔で雀が飛びながら歩いていきました。
もうお前らの場所ではないのだ、と雀が言っているようでした。
暗がりからピエロが出てくる情景が頭に浮かびました。ピエロは手に風船の束を持っていて、お父さんの方へ風船を差し出します。背筋にまた寒気が走りました。
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