第14話 ショッピングセンター――タカシくん編

 どんな職業でも安全でもない。

 どんな人間でも暴走するやもしれず。

 隠れるところもない。

 明日、自分たちが働いている職場のトップが、これにかこつけて人員削減を言い出すかもしれない。いや、せざるを得ない事態に発展するかもしれない。日本が良くても、世界が止まっている。世界の需要が無くなる。世界が全部止まるとはそうせざるをえない事態になるということです。

そのときに、生き残れるかどうかは誰も分からない。優秀だからと切られても、次の働き場があるかどうかもわからない。

社会が止まるとはそういうことなのだ。

 二の句が継げないまま、お父さんは歩きました。いつのまにか、お父さんはタカシくんのあとに続く形になっていました。

 鎮守の森を抜けると舗装された車道に出ます。車道を横切るとすぐにショッピングセンターの敷地に入ります。

 お父さんは恐怖と不安に包まれ、なんともいえない感覚のまま、ショッピングセンターにたどり着きました。

 入り口から中に進むと、脇にはテニスコートがあり、続いてスポーツジムの建物があります。当然一人も人がいません。それを抜けると、左手に空き地があります。空き地では毎年夏になると櫓を建て、盆踊りをします。また、季節ごとに各種のイベントをします。地域で活動しているダンス教室や音楽教室の発表会や地区のブラスバンドが講演をしたりします。アイドルがライブをすることもあります。今は櫓どころか、人がいません。

 お父さんはとても寂しい気分になりました。

 タカシくんは広場の向こうにあるショッピングセンターの建物の、外階段に向かって歩いていきます。確実に自転車屋さんとは違う方向に向かっています。ですが、タカシくんは導かれていくように階段に向かって歩いていきます。

 広場の真ん中には、バブルの頃に流行ったような、金属製のオブジェが立っています。オブジェは黒と赤で、三角錐が向かい合って立っているようなオブジェです。そのオブジェを中心に丸く、ブロックが敷き詰められています。

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