第12話 理由――タカシくん編

 お父さんとタカシくんの二人は、マンションからショッピングモールの方へ歩いて行くことにしました。二人ともマスクをしています。マンションとショッピングモールの間には鎮守の森があり、そのなかに神社がありました。鎮守の森には柏の木や楠などが生えていました。楓の葉は新緑の頃の若い緑から、ずいぶん濃くなっていました。家にいる間に、季節が変わってしまったようです。

 「あれなんだろうね」

 森のなかを通り抜ける途中、タカシくんがお父さんに言いました。

 「なんだろうな」

 森のなかにスーツを来た男と、十数人の若い男女がいました。若者たちはスーツを着ていませんでした。なにか学生にしては、若者たちの年齢にばらつきがあるし、スーツの男だけが浮きます。スーツの男は若者たちになにか訓示を垂れているようでした。何の集団なのか、見当がつきません。全員がマスクをしていました。何もない時期なら、異様な集団ですが、このご時世では違和感はありません。

 「集まって良いの」

 「だめだろうな。なんか大切な用事があるんだろうね」

 訓示を垂れているスーツの男はずいぶんと険しい顔をしています。

 若者たちはこちらに背を向けています。その表情はうかがえませんが、楽しんでいるようには見えません。

 「ほら、深刻な感じだろう」

 「うん。なんだろうね」

 わかんないな、と答えたお父さんとタカシくんは、横目でその集団を見ながら歩いていきます。

 「やっちゃんのお父さんが死んだんだって」

 「なに、誰が、なんだって」

 唐突なタカシくんの言葉に、お父さんの思考はついて行けませんでした。

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