第11話 お父さん、むくれる――タカシくん編
翌日、お父さんは食卓を占拠して仕事をするのは止して、趣味の砦として使っていた書斎で仕事をすることにしました。書斎の本来の使い方に戻したわけです。
朝から、集中して仕事をする、ことができるわけもなく、ぼうっとして床に寝転んでいました。なんとなくお母さんとは顔を合わせるのは気まずかったのです。
集中することもなく、途切れ途切れに仕事をしては、またふて寝です。ゲームは居間にあるからできません。なんだか親戚に泊まりに来た気分です。勝手が違うのです。本やマンガは集中できないので、やはり途切れ途切れにしか読み進められません。
一方のお母さんはそんなお父さんのことなどお構いなしです。
こうなって気づきました。昼間の家はすべてお母さんと子どものもので、お父さんの居場所はないだと。自分が顔を出さずとも、家はすべて順調に回転しています。困って、誰かが自分に声をかける様子もないようでした。
そんなこともあって、お父さんはふて腐れてしまいました。
食事はコンビニにわざわざ買いに行って、書斎で済ませます。誰もお父さんのことを食事に呼びに来ません。
二時過ぎに、昼ご飯を食べた後、弁当などのゴミを、袋に入れたあと、床に寝転びました。ウォークマンのノイズキャンセル機能を入れて、音楽を聴き始めました。なんとなく、居間が騒がしかったのです。子どもの声が聞こえました。きっと嫌がらせで、テレビの音量を上げているのだとお父さんは考えました。なんともおもしろくない。
お父さんは三十代の半ばを過ぎていました。最近は新しい音楽にも触れておらず、プレイリストには昔なじみの曲名しか並んでいません。そんななかから曲を選んで、再生するのですが一曲を丸々聞き通せず、曲を変えてしまいます。
やがて、食後の眠気に誘われて昼寝をしてしまいました。
お父さんが目を覚ますと、タカシくんが顔を覗き込んでいました。
「おおう」
と驚きの声を挙げました。
「出掛けようよ」
とタカシくんが言いました。
「どこに」
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