15話 家族旅行〘前編〙

今日は家族旅行の日です。家族と言っても実際は家族じゃなく、一緒に住んでいる家族同然の人達との旅行だ。

外を見ると、まだ日は登っておらず辺りは暗い。どうしてこんなに早く起きているかと言うと、今回の旅行の目的地がかなり遠いからだ。今回行く場所は、南の都市、このディル大陸屈指の温泉の都、ここから馬車で半日と言ったところだろう。

「たのしみだね!」

まだパジャマ姿の繭が。同じくパジャマ姿の緋莉に話しかける。

「そうですね!」

と言って笑顔で頷いている。

出発までもうすぐとなったので、

「忘れ物無いかだけ確認してね」

とみんなに言う。すると全員自分のバックを見直し始めた。今回の旅は2泊3日なので、忘れ物は絶対にできない。だから僕も自分の持ち物の見直しを始めた。


最終確認を終え、遂に出発の時刻となる。

「じゃあ行きますか!」

僕がそう言って玄関のドアを開ける。みんなもそれに続く。

馬車に乗れる店まで来て、目的地を告げる。お金を払って馬車に乗った。ここからは半日ズット馬車に乗りっぱなしなので、馬にもよろしく、と挨拶をしておく。

全員で馬車に乗り込み

「れっつごー!」

とみんなで言う。すると馬車はゆっくり動き始めた。

そして、2泊3日の家族旅行が始まった。


#

時刻はお昼。真上にある太陽が地面を照らしている。涼しい風と暖かい日差しがいい感じに合って春の朝の様な暖かさを再現している。その所為か僕以外の3人は全員夢の中だ。僕ももうすぐ限界でウトウトしている。

すると突然大きな門が遠くに見え始めた。南の都市全体を囲う壁の唯一の入口だ。

「みんな、あれ見てよ。」

寝ているみんなの肩を揺すって起こし、その大きな門を指さす。起きた3人は、寝起きの目を擦り僕の指が指す方向を見る。そしてその目を大きく見開いて、

「すごい…」

などと声を漏らした。その衝撃で目も覚ましたようだ。

大きな門の真下で馬車を降りる。ここからは歩きだ。

ぐぅぅ〜

すると突然誰かのお腹の音がなる。多分顔を赤くしている繭が音の主だろう。今の時間はお昼過ぎ、僕もお腹がすいているので、

「まずお昼ご飯食べよっか。」

そう僕が言うと、みんな頷いたので、(繭は他の2人より沢山頷いていた。必死になっていて可愛い。)南の都市の探索も兼ねてお昼ご飯を食べれる場所を探しに行った。

暫く歩き、1つのレストランを発見する。いわゆるファミレスってやつだった。中に入り注文をする。繭以外がハンバーグカレー(の様なモノ)を頼み、繭はいつものようにパフェだ。届いたパフェを見ると、桃とバナナのパフェだった。美味しそうだ。

「美味しいね!」

と、笑顔で繭が言ってる。本当に美味しそうに常に笑顔で食べていてこっちまで笑顔になれそうだ。


お昼ご飯を食べ終わり、泊まる旅館へと向かう。地図を見て歩いていると徐々に森の中へと入っていく。道を間違ったのではと少し怖くなったが、旅館は景色がいい所にあるイメージなので、森の中にあっても普通だろうと納得した。

森の中を歩いて数分後、いきなり視界が開けて大きな建物が見えた。地図を確認すると、今見ている建物が泊まる旅館らしい。予想以上の大きさに驚いた。

「大きいですね!こんな所泊まるの初めてです。」

と緋莉が感動したように言う。

「そうだね、私も初めてだから楽しみだよ。」

と繭が返している。そもそもこんな大きい建物は見るのすら初めてだ。

入口に行くと、ここで働いているスタッフに話しかけられる。

「すみません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

丁寧にそう言われ、僕が慌てて言葉を返す。

「予約していた、秋雨うときです。」

予約と言っても村長のヤマトさんに泊まることを先に言って貰っていただけだ。

「ヤマトさんからお話は聞きいております。私に着いてきてください。」

そう言ってその人はホテルの中へと進んで行く。僕達も慌ててそれに着いていく。中はとても広くて綺麗だ。

「秋雨様のお部屋は最上階のプレミアムルームとなっております。」

フロントでそんな事を言われて驚く。ヤマトさんにいい部屋お願いしますとは言ったがここまでとは思っていなかった。ちなみに最上階は18階だ。

「こちらが鍵です。オートロックなので忘れないようにお気を付けください。」

と言って2枚のカードを渡してくる。南の都市は発展しているので、鍵もカードになったらしい。便利でいいと思う。

「朝ごはんと夜ご飯はバイキングです。この券を持って、15階の会場までお越しください。」

続けてそう言って、4枚の紙を2セット渡して来た。朝用と夜用だろう。

「では着いてきてください。」

入口にいたスタッフが、そう言って手招きをする。それに着いて行きながら、僕は旅館の中を見ていた。お土産を買えるお店もある。

「大浴場は2階にあります。ここを右に曲がって真っ直ぐです。客室は左なので間違えないようお気をつけ下さい。」

分かりやすく館内の案内もして貰った。後で自分達で回る時に回りやすくて助かる。

そして遂に僕たちが泊まる部屋に着いた。最上階全フロアが客室となっていて、自分の家より広いかもしれない。

「ゆっくりおくつろぎください。」

そう言ってスタッフの人は、来た道を帰って行った。

部屋を見て回ると、大きなベットが四つと大きなお風呂。更に露天風呂も付いていた。部屋に露天風呂って豪華過ぎない?

「ふかふかだ〜」

ベットをゴロゴロしている繭がそんな事を言う。もうくつろいでいる。茶眩は1人で部屋を見て周り、

「すごい…」

と声を漏らしていた。緋莉は早速旅館によくある浴衣に着替えていた。見ないようにしておこう。

夜ご飯の時間まであと3時間くらいだ。特に何もする事が無いので、他の人の希望を聞くことにする。

「みんな行きたいところある?」

すると繭が、

「ここの地下プールあるらしいよ」

と言った。それを聞き、

「私も行きたいです!」

と緋莉。

「水着は?」

と僕が聞くと、

「借りれるよ」

と旅館の案内を見ながら繭が答える。茶眩も行きたそうな顔をしていたので、荷物を片付けてから行くことにした。


#

バシャーンと水飛沫の音がする。僕達は今旅館の地下にあるプールに来ています。

「たのしーね!」

ウォータースライダーを終えた繭が大きな胸を揺らしながらやってくる。

「そうだね。」

プールに来てから1度も泳いで無いけどウォータースライダーで遊んでるだけでとても楽しい。ちなみに泳いで無いのは泳げないから。そもそも4人のうち誰も泳げない。なんで泳げないのにプール行こうって言ったんだろう。

「またやる!」

そう言ってまた列に並び始めた繭の後ろに僕も並ぶ。どの体勢が1番早いか調べてる途中だ。そんな事をして夕食までずっとウォータースライダーをし続けた。


#

夕食会場に着いた僕達は、受付の人に席へ案内された。

「バイキングって初めてだから楽しみ〜。」

と繭が言っている。僕も初めてだからとても楽しみだ。

「僕待ってるんで先にご飯とってきて良いですよ。」

と茶眩、お腹空いてるだろうから断ろうと思ったが、

「なら私も残ります。おにぃ達は行ってきてください。」

と緋莉も言ってきた。2人で仲良く話し始めたので、

「じゃあ貴重品とかよろしく」

と言って、ご飯を取りに行った。


全員でご飯を取ってきて揃った所で全員でご飯を食べ始める。僕はお肉が多め、ステーキを初めて食べた。繭はスイーツ多め、普通のご飯も食べて欲しい。茶眩は海鮮物が多かった。カニとかイクラとか普段の生活じゃあまり食べれないのを沢山食べていた。ちなみに緋莉はそれを全部合わせた様な感じだ。沢山食べていた。僕も食後のデザートとしてプリンとか食べた。すごく美味しかった。


部屋に戻り、お風呂に行く準備をする。今日は大浴場へ行く。

「じゃあまた後でね。」

大浴場の入口で繭達と別れる。鍵は僕と繭が持っている。

大浴場の中に行くと、結構な量の人がいた。カゴに脱いだ衣服を入れ、タオルを持ってお風呂へ行く。

カッポーン

と何処かからか音が響く。結局何の音なんだろうね、あれ。体と頭を洗い、湯船に入る。横に茶眩もやって来た。

「あったかくて気持ちいいですね。」

笑顔で茶眩が言う。こんなにリラックスできるお風呂は初めてで僕も気持ち良い。

「そうだね、あと此処も露天風呂あるけどいく?」

そう言うと茶眩が頷いたので、一緒に向かう。

「さむっ」

露天風呂へ続くドアを開けると冷たい空気が肌を包んだ。急いで湯船に向かう。湯船に入ると、今まで寒かったのが嘘のように体があたたまる。

そのまま色んなお風呂に入って楽しんだ。


#

部屋に戻ると繭は既に戻っていた。

「そろそろ寝る準備してね。」

と繭が言う。僕ももう眠くなってきた。

全員浴衣に着替える。動きやすくて良い感じだ。

「それじゃあおやすみ。」

そう言ってベットに入り込む。ふかふかで気持ちいい。

「電気消すね。」

繭がそう言って部屋の電気を消す。真っ暗だ。

僕はふかふかのベットに横になりながらその気持ち良さに夢に誘われた。




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