16話 家族旅行〘中編〙
ふかふかのベットで目を覚ます。着ていた浴衣は少しはだけていた。他の3人はまだ寝ている。僕と同じようにベットや衣服は少しぐちゃぐちゃになっていた。
ふぁぁ〜と小さく欠伸をし、ベットからおりて着替える。
僕の着替える音で目が覚めたのか、繭がベットから起き上がる。
「おはよう、起こしちゃった?」
起こしちゃった場合申し訳ないのでそれを聞いてみる。
「おはよう。丁度目が覚めただけだよ。」
と返され安心する。
僕と繭が着替え終わったタイミングで残りの2人が目を覚ました。
「おはようございます!」
と元気に言われる。なので
「おはよう」
と繭と一緒に返す。
茶眩と緋莉が着替え終わるのを待ち、朝ごはんの会場へと向かう。
朝ごはんはパンとご飯が用意されていた。選択は勿論自由だ。あとはウインナーとかの朝ごはんに合いそうなおかずがある。あとフルーツも。
「今日は僕が待ってるから先にご飯取ってきていいよ。」
他の3人にそう言い、昨日と同じ席に座る。すると、
「なら私も残るよ。」
と繭が言う。
「ありがとうございます。」
と2人は頭を下げて言う。そしてご飯を取りに行った。
2人が戻って来るまで繭と二人で今日の予定と食べたいものを話し合った。今日は南の都市の中心地に行く予定だ。繭も楽しみにしているらしい。
全員がご飯を取ってきたので、いつものように手を合わせ全員でいただきますをする。僕はいつものようにご飯、ウインナー、目玉焼きを持ってきた。あと珈琲。茶眩と緋莉はパンだった。バターやジャムを塗っている。美味しそうだ。繭は勿論フルーツ、みかんやりんご等を食べている。それでお腹が空かないのか、と聞いたが、
「朝はあんまり食べれない。」
と返された。普段は食べてるんだけどな…。
そのまま雑談をしながら朝ごはんを食べる。緋莉は相変わらず沢山食べていた。
食事が終わり部屋に戻る。それぞれで今日の準備を行っていた。僕がベットに腰掛けながら歯を磨いていると、繭が何かを持って近付いてくる。そしてそのモノを僕に見せつけ、
「これやりたい!」
と言ってきた。よくそれを見ると、髪飾りを作れるお店のパンフレットのようなものだった。
「緋莉とお揃いで作りたい。」
そう言ってる繭に反論は無いので、
「分かったよ」
と返し、歯磨きの続きをする。繭もそのまま自分の準備をしに戻った。
#
南の都市の中央。(これからは央都と呼ぶ)に行くため、旅館を出た。ここからは央都がよく見える。
央都は中央に王城があり、そこから碁盤の目上に道が伸びている。西洋版の京都や札幌に例えれば分かりやすい形をしている。その央都は5つの区に分かれているらしい。王城がある所が王区、そこから右上が商業区、左上が工業区、右下が居住区、左下が経済区だ、ホテルのパンフレットに書いてあったから多分正しい。
僕たちが今から向かうのは経済区。名前の通り経済を
行うところ、つまり沢山のお店がある所だ。僕達が泊まった旅館は居住区の端にあるので、結構な距離を歩かなければいけない。
1時間ほど歩いてやっと居住区と経済区の境目に来た。目の前には沢山の人とお店がある。北の都市の街なんて比べ物にならない量だ。まるで異世界に転移した気分になる。
「異世界に来たみたいですね!」
僕の心を読んだのかそんな事を言う緋莉。その言葉に
「そうだね!」
と返す繭、茶眩は無言で頷いていた。自分と同じ事をみんなも感じていると思うと嬉しくなった。
旅館で貰った経済区の地図を見て、最初の目的の髪飾りを作れるお店に着いた。ここで一旦繭と緋莉と分かれて行動する事にした。お昼頃に僕達でここに戻ってくる事になった。
「じゃあまた後でね!」
そう言って元気に2人に手を振られながら僕は茶眩と区内を見てまわることにした。
#
2人と別れた後に緋莉と一緒に店に入る。髪飾りを作れると言っても簡易的なリボンとかを作れるお店だった。2人で話し合い、お揃いのリボンを作ることにした。
「おねぇは元気だから赤色のリボンですね。」
そう緋莉に言われる。どちらかというと緋莉の方が元気な気がする。
「緋莉ちゃんは食いしん坊だからオレンジで」
と言うと、ちょっと怒ったように
「食いしん坊じゃ無いです!」
と返されたので、私は笑って、
「ごめんね」
と返す。このお店では、色付けから出来るらしい。今の会話はその色決めの為だ。
結構緋莉はオレンジに決めていた。私は赤だ。2人並んで、今からリボンになる布に色を付けていく。2人で静かに作業していると、昨日の大浴場での会話が思い出された。
#
「私...茶眩の事好きだと思うんです。」
「......えっ?」
突然の告白に変な声が出てしまった。
「最近茶眩と一緒にいると胸がドキドキするんです。」
そう言う緋莉の顔は大浴場の熱さや恥ずかしさで真っ赤だ。
「今まではただの幼馴染だと思ってたんですけど、あのお祭りの日から意識するようになっちゃって。」
あのお祭りと言うのは、緋莉が攫われたパンプキンパーティの本祭の事だ。あの日は大変だったよ、ほんとに。
「でも茶眩は私の事ただの幼馴染としか思って無いと思うんです。」
声には出せないが、確かにそうだと思う。特に昔から繋がりのある緋莉と茶眩だ。長い間幼馴染だと思ってた異性が自分の事を好きになるなんて考えるのは難しいんじゃないだろうか。
「なら無理矢理異性として見てもらえば?この立派な胸で!」
冗談でそう言い、緋莉の胸を掴む。緋莉は
「ひぇっ?」
と可愛らしい反応をしたが、すぐ怒ったような顔になって、
「私は本気なんです!」
と言ってきた。そこでふと緋莉が家に来た日の事を思い出す。その日は私達の家で同じ様な相談を私がした記憶がある。その言葉をずっと覚えていた私は、そっくりそのまま緋莉にその言葉を返した。
「気持ちを込めて、茶眩が好きだって気持ちを伝えれば必ずそれは伝わるよ。」
すると緋莉はとてもいい笑顔で
「そうですね、ありがとうございます!」
と返した。
#
「おねぇ? おねぇ!」
そう言われ、過去を思い出していた私の意識は戻される。
「考え事ですか?」
そう聞かれ、
「ちょっと過去を思い出してた。」
と答える。緋莉はなんの事だか分かって無さそうだった。
手元を見るとさっきまでは白かったリボンがオレンジに染まっている。無意識のうちに作業していたようだ。完成したリボンは少し乾かす必要があるらしいので、2人で小さな椅子に座り乾くのを待つ、その間2人で色々と雑談をして楽しんだ。
#
もうすぐ日が真上に登るので待ち合わせの場所に向かう。繭達が髪飾りを作っている間僕達は経済区を回っていた。
待ち合わせ場所に着くと緋莉と繭が既に店前で待っていた。頭にはそれぞれオレンジと赤のリボンが結ばれていて後ろでひとつに束ねられている。
「可愛い…」
自然とそんな声が漏れた。すると繭が顔を赤くして、
「恥ずかしいからやめて!」
という。茶眩も
「似合ってますよ。」
と言うと、今度は緋莉が顔を赤く染めて、
「恥ずかしいっ…」
と言ってリボンを解いた。
「とりあえずご飯食べに行こ。」
と小さな声で繭が言い、逃げるように歩き出した。それに続きで緋莉も歩いていく。僕達も間を開けてそれについて行った。
お昼ご飯はファミレスに行く。僕と茶眩はスパゲッティ、緋莉はそれの大盛りだ。勿論のこと繭はパフェ、今回はいちごパフェだ。毎回美味しそうに食べてるのがとても良い。
昼ごはんを終え、経済区を4人でまわった。服屋さんに行ったり小物を買ったりしてとても楽しい。特に茶眩に女性用の服を着せた時に滅茶苦茶似合っててとても面白かった。
そんな事をしているともう日は暮れ空は綺麗な夕焼けに染まっていた。僕達の村から見る夕日とはまた違う美しさがある。
「綺麗だね。」
繭がそう言う。
「そうだね。」
と返し、旅館へと帰る。明日にはこの楽しい旅行が終わってしまうのが惜しい。だから残りの時間も家族全員で楽しめたら良いなと思う。
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