第5話この勇者ステータスが低い!
(なんで、僕がこんな事を……)
そんな事を思いながら、高河(勇者)訓練場に連れてきた。
まぁ、僕が一番現場に近かったのだから、この人の護衛を務めることを、仕方ないと言えば、仕方ない。そちらの方が、情報の交流が早いからだ。
「おい!」
いきなり声をかけられて僕はビクリと震える。
「なんでしょう?」
「女を用意しろ!美少女を5人ほどな」
「はぃ?」
僕は、彼が何を言っているのかが、全く理解できなかった。
「ふざけるなよ!異世界物の定番は、勇者が最強の力を授かって、ハーレムを築くのが定番なんだよ!」
「はぁ……」
納得できないが、ここで機嫌を損なう訳にはいかない。というか、この国に奴隷制度は存在しないので、どう探すのか迷っている。
世の中そんなに甘くない。“美少女を用意しろ”と言われても、無理なものは無理なのだが。仕方ない。
「わかりました。少々お待ち下さい。ところで、訓練についての説明はいかがいたしましょうか?」
「はぁ?訓練?そんな事をする訳ないだろう。早く帰ってハーレムを築くって何度言えばわかるんだ?」
(もう、こいつは殺した方がいいんじゃないのか?おっと!こんな事を思ってはいけない。この方は勇者なのだ!)
そう自分に言い聞かせて、僕は彼に向けて敬礼をする。
「本当にいいんですね?説明を聞いていなかったから知らないかも知れないですが、この世界にはレベルと言う概念が存在します。レベルは基本的に1から始まります。レベルは訓練を重ねるごとに上昇しますが、本当に訓練はいらないんですね?」
僕は一応、勇者のステータスを確認する。
南部高河(訓練なし)
LV…1。
攻撃力…5。
防御力…3。
加速力…8。(別名、素早さ)
総合値…16。(上記のステータスの合計)
ルイ・ラッセル(訓練開始から3ヶ月)
LV…8。
攻撃力…12。
防御力…20。
加速力…19。
総合値…51。
僕はこのステータスの対比に絶句する。
(僕の方が強い……。どうしようかな?)
僕は、もう一度説得を試みる。
「勇者様……とても申し訳ないのですが……このままでは、私共との戦闘にすら勝てません」
上手く言えないので、直球の言葉になってしまった。
「はぁ?選ばれた俺が?お前に?ハハハ!面白いこと言うな、気に入ったぞ!まぁ、そんなことは、どうでも良いから早く美少女を連れてきてくれよ」
そこまで言って、高河(勇者)は立ち去った。
「駄目だ……お終いだ」
僕はドサリと崩れ落ちた。
負けを悟ったからだ。
(彼は、もうすぐ“死ぬ”)
外に目を向けると、積乱雲が連なっていた。
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