第4話この勇者様は頼りない

僕は王座室で、バスディガン・ドルード王の質問に答えている所だった。


「なんという事だ!」


僕の説明を聞いて、王は横に置いてあった果物を拳で粉砕する。


(もったいない……)


平民出身の僕からすれば、その光景は信じられなかった。


「で?貴様は、その現場をただただ見ていたというのか?なぁ、ルイ・ラッセル一等兵」


「私共が、現場に到着した時には、時すでに遅しで……。自分の無力さに、不甲斐なさを感じます」


僕はそう言って頭を下げる。


「情報によれば、貴公は訓練場から、王子室まで走ったそうだな?そう考えると、当然と言えば、当然だ」


僕は、思わぬ回答が返ってきて、少し困惑する。


「すんでしまったことは仕方ないと思う。では、どのようにして、魔王軍から姫を取り返すかだ!」


そう言って、王様は手を叩く。


「入っていいのか?」


とても、偉そうな声が王座室のドアの奥から鳴り響く。


「入りたまえ」


カツカツと音を出しながら、1人の男が入ってきた。


「よう、俺が勇者だ!」


そう言いながら、男は王の前にまで歩いていく。


「よく、こちらに来ていただいた。早速だが、魔王軍についての説明と、依頼をしたい」


「さっさとしてくれよ。俺は、今回の件をさっさと終わらせて、美少女ハーレムを作りたいんだ!」


その無礼な態度に僕は苛立ちを覚えた。


「国王様の御前だぞ!口を慎め!」


「あん?選ばれもしていない、一等兵がほざいているんじゃねぇーよ。俺は、選ばれたんだ!異世界召喚だぜ?テンション上がるに決まってるだろ?」


(召喚……なんだそれ?異世界ということはあいつはこの世界の住民ではないと言うことか?)


そんな事を思いながら、僕は謝る。


「申し訳ございません。勇者様」


「わかればいいんだよ」


僕は、歯を擦り合わせる。


(なんで、屈辱を経験させられないといけないんだ!)

僕は、声に出そうな怒りを、なんとか、心に閉じ込めた。


「とりあえず、今の状況を説明するぞ。我が国はーーー」


こうして、長ったらしい説明が始まった。


勇者の名前は南部高河みなべこうがと言うらしい。


高河はあくびをしながら、王の話を聞いている。

いや、聞いていないのかも知れない。


「これで、説明は終わりだ」


横を見ると、高河は寝ていた。


「おい!話を聞いていたのか?」


僕は、高河の胸ぐらを掴む。


「あん?聞いていたさ!俺はチートスキルで魔王を倒し、ハーレムを築く!そうすれば、いいんだろう?」


(駄目だ、こいつ)


僕は呆れて、手を離してしまった。


「ルイ一等兵、勇者様に訓練場へと案内したまえ」


王は僕にそんな事を言ってきた。


「はい?」


「後、君には、勇者様の護衛を務めてもらうよ。頑張りたまえ」


僕は「はぁ……」とため息のような声を出して、返事をする。


こうして、僕は、駄目勇者の護衛を務めることとなった。

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