第3話真実はある一言で

「おい……起きろ!起きろって!」


誰かが、僕を読んでいる?


「う……うーん」


「はっ⁉︎生きている!良かった!」


上官の声だ……。

だけど、目が開かない。


「早く、医務室へ!」


「はっ!」


兵士達が駆け寄って来たのを感じる。

だが、目は開かない。

僕は、自分の体が何かに乗せられた感覚になる。おそらく、担架だろう。


「しっかりしろ!気を保てよ!」


上官が必死に呼びかけてくる。


(うるさいな……目が開かないんだよ)


僕はなんとか目を開けようとする。

ピクピクと目は痙攣するものの、僕の視界は暗いままだ。


「じょ……上官殿……目が開きません」


僕は、必死に声を出す。


「何?失明か?」


「いえ……おそらく、疲労かと。後、もう一つ、いいですか?」


「なんだ?」


上官は、僕の小声に耳を傾けてくれたので、最後の力を振り絞って、こう頼んだ。


「水をいただけませんか?」


もう、声が出せない……。

喉が、カラカラなのだ。いつもよりも、貧血気味だし。


「わかった。とりあえず、この水を飲め!」


そう言って、上官は、僕の口に水筒を突っ込む。


「ゴホッ!」


思わずむせてしまったが、なんとか、喉の渇きは潤ったようだ。


「はぁ、はぁ。そうだ!上官!姫が拐われました!」


「あぁ、王子と姫が拐われたそうだな」


僕は、あの夜を思い出す。

違う!あの顔は……。


「違います!王子が拐ったんです!王子は……王子は!“魔物になりました”」


上官は、顔を青くする。


「なんだと……。王子が、魔物に……」


上官は僕に水筒を押し付けて、王様の元へと走っていった。

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