第16話 戻りました 5

あれ? 揺れている? 凄くフワフワして気持ちいいな。

なんだか雲の上を歩いている様な・・・・・?

雲? 空? そういえば僕、 空を飛んでいて、落ちて・・・


「あ!!」

「あ、気づかれました?」

「え?」


僕は、空から落ちていたのじゃ・・・


「少年、私たちの事が見えますか? どこか痛いところはないでしょうか?」


物凄く優しい声だ。お母さんともシェリーとも違う女性の綺麗な声だ。

と、言うことは今、僕、他の人といる?


「あ、あの、ここは?」

「ああ。警戒しないでも大丈夫よ。ここには私と、ファルナの二人だけだから」


あ、また違う女性の声だ。

こちらも優しい声だな。先程の女性ファルナさんと言うのかな? そのファルナさんよりも、もう少し僕達の歳に近い雰囲気があるけど・・

それしても、物凄く心地よい感触だな。

そんな事を思いながら、心地よい感触が何かつい手で触ってしまった。


「ん、あ、しょ、少年、あまり撫でないでほしいのだが」


最初の声の女性、ファルナさんが、少し困惑した感じで僕に喋りかけてきた。

僕は意識がまだはっきりしていないせいで、周りが良く見えていなかった。

なんとか声の主を見ようと頭を振ってみる。


「あ、んん、そんな、う、動かないでくれ、く、くすぐったい・・・」


あれ? なんだか頭に凄く柔らかい感触がする。

これなんだったかな? ああ! そうだ母さんが時々僕を膝の上に頭を乗せて耳かきしてくれている時の感触だ。


「しょ、少年、その、あ、あまり内腿をそんなに、さ、触らないで・・・ん!」

「こらー!! ファルナばっかりずるい! 私に代われ!!」


突然の大声に、僕の意識が急激に現実に戻される。

僕の目と鼻の先に赤毛を後ろで束ねた、綺麗な大人の雰囲気のある女性が、頬を赤く染めながら僕を見つめていた。

それにこの後頭部の感触と右手に伝わる滑々の温かく柔らかいこの感触・・・


「しょ、少年・・・・恥ずかしいから」

「ああ!! 何、1人で顔を赤くして見悶えているのよ! 今度は私の番なんだからね!」


大きな声が直ぐ横からしたと思った瞬間、僕の体が思いっきり引っ張られた。


「うっわ!!」


一瞬で目の前が真っ暗になった。

でも、また良い感触が顔全体を覆ったので、特に抵抗する事が出来なかった。

その上に凄く安心する良い香りがする。

このまま委ねたくなる気持ちになったけど、それも直ぐに終わってしまった。


い、息が出来ない!!


何かに完全に顔を覆われていて口も鼻も塞がれて、真面に息ができない。

ま、まずい! このままじゃ死んでしまう!


「あ、あん! そ、そんなに激しくう、動かないで! ぼ、ぼく! だ、駄目・・じゃない、もっと!!」


パッカーン!!

「いったあああい!!」


「プッハ!! はぁ、はぁ、はぁ・・・た、助かった」


何かとてもきれいな打撃音がしたと思ったら、いきなり呼吸が出来た。


「フィー様! 淑女にあるまじき行動ですよ! 下品ではありませんか!!」

「べ、別にいいじゃない! 誰かに見られているわけじゃないんだから!」

「私が見ております! 奥様からくれぐれもと言いつかっております! この事はご報告させていただきますよ?」

「ファルナ! 私を脅す気?」

「めっそうもございません。私の役目にございます」


「あ、あのう・・」

「あら、少年、ごめんなさいね。このアンポンタンのフィー様が変な事をして」

「い、いえ、僕の方こそごめんなさい。何かいけない事をしてましたか?」

「あ、べ、別にいいのよ。気にしないで」


そう言って、優しく微笑んでくれるファルナさん。


本当に綺麗な人だなぁ。特に瞳が綺麗でちょっとするどい感じが一段と美しさを増しているというか、こういう感じの女性は初めて見るな。


「ちょっと、何、見つめ合っているの!? あたしも混ぜなさい!」


そう無理矢理、僕と綺麗なファルナさんの間にもう一人の女性が割り込んで来た。

たしかフィー様とか言われていたな?


「フィー様、それより先ずはご挨拶いたしましょう。この少年のおかげで私達は助かったのですから」

「そ、そうね。美少年エキスを堪能するのは後回しにするわ」


今、何か物凄く悪寒が走った気がしたんだけど・・・

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