第13話 戻りました 2

「ちょっと! どう説明すれば良いんですか!!」


・・・・・・・・・・・「はっ!?」


さっきまで居た白い壁の部屋から一転、真っ青な空が僕の目の前に広がっていた。


「ラフタラーテ様!!!」


と、叫んでみたけど、女神様の返答はありません。

まあ、命を救ってくれて体もちゃんと直してもらったのだから、それで文句言っても仕方ないのだけど、出来たら言い訳を考えてもらいたかった・・・

まあしょうがない。

これからの事を考えよう・・・・さて・・・ん?

なんだか強い風が下から吹き上げてくるのだけど?

・・・・違うか、足元がなんとも頼りない・・・

僕は足を動かしてみる。


「スカ、スカ、スカ」


何だか抵抗感がない。

僕は下を見てみた。

遥か下に森の樹々が見える。

周りは一面の青空! あ、眼下に見える雲がゆっくりと流れている・・・・

なんだ、堕ちてるのか・・・・・・・いい?!


「ぎぃやあああああああああああああ!!」

「お、堕ちてる! 堕ちてる!!」


下から吹き上げる空気が一気に体に襲い掛かってきた!

なんだこれ! 

ラフタラーテ様!! どこに送ってくれてるんですか!


はっきり言ってこの状況最悪だああ!!

せっかく帰ってこれたのに、結局死ぬ事になるのか?

・・・・・・・・・・でも、何だろう?

ラフタラーテ様への怒りはあるけど、恐怖感は無いぞ?

何だろう、

この状況で落ち着いてる?


「恐怖を感じない? なんとかなる気がするのは何でだろう?」


『それは、ルダ君の身体が私の身体を使って蘇生されているから、強化されているのと魔力操作も魔法も使える自信、それと負に対する耐性が発動しているせいなのです』


突然、頭の中にラフタラーテ様の声が聞こえて来た。


「ラフタラーテ様?!」

『ごめんですの。急いで転送したのは良いけど、高度の選択忘れてましたですの。位置は村近くの街道沿いにしているので、そのまま落ちれば良いですの』

「いいですの・・・って、このまま落ちたら死んじゃいますよ?!」

『大丈夫ですの。私の体を使って構成された強化体と魔力操作もスムーズにできるはずだから、身体強化もかなりのものですの。魔法を使わなくても、それだけで十分着地できますの』

「ほ、本当なのですか?」

『大丈夫! 私を信じなさいですの!』


それが一番危ない気がする。


『それに、ルダ君自身そんなに焦ってないのでしょ?』


まあ、確かに。耐性があるといってもそれとは違う、言いにくいけど何とかなると思っている自分が居るのは確かだ・・・。


『だから大丈夫! そのまま落ちなさいですの』

「え~!? それで良いのですか?!」

『良いですの! それじゃあ!!』

「え? ラフタラーテ様!?」


・・・・・・・・・・・・・・


「逃げたか?」


物凄く無責任な言い方にしか聞こえないけど、今は信じるしかないか。

取り敢えず魔力操作を全開で身体強化!


「・・・・・うん、なんだか良い感じ。上手く身体強化出来てる気がする。魔法はまだ自信ないし、女神様も使わなくても大丈夫だって言っていたけど・・・あの女神様だからなぁ~本当に大丈夫だろうか?」


ふ~。大丈夫! 

地上に無事に着地出来ると信じて・・・・あれ? 森の中の・・・あれは街道かな? 何かいる?


僕は、自分が落下していく先の地上を改めて見ると、何かがうごめいているのが分かった。

最初はゴミの様な粒にしか見えなかったけど、近づくにつれてそれが人と大型の生き物である事が分かった。


「・・・あれは・・・人が襲われている?! それにあの大型の生き物・・魔獣? ドラゴモドキだ!」


それは、3頭の大型魔獣、ドラゴモドキと十人程の甲冑を着た騎士が戦っていた。


「ちょ、ちょっと待て。このまま行ったら、どう見てもあの中に落ちて行かないか?」


一気に不安になってきた。

女神様の言う通りなら、僕は大丈夫だとしても、その下にいる人達って大丈夫なのか?


「まずい、まずい! まずい!! まずいって!! なんとか、かわさないと!」


と、思ってもただ落下している僕に何が出来るんだ?

魔法なら空を飛べる? ・・・・そんな魔法あったとしてもまだ知らないじゃないか!


「あ? でも騎士の様な人達、ドラゴモドキに圧されてる? 魔法師もいるようだけど圧倒的に火力不足みたいだ」


このままならあの人達死んでしまうんじゃ・・・でも、僕が落ちてもただじゃすまないかも?


「ええ~い! どっちにしても駄目なら、僕が上手くドラゴモドキに落ちれば、騎士様達の加勢になるかも・・・・って! 駄目だ! どうやってそんな一点に向けて落ちれるんだよ!」


その間にもどんどん、地上が近づいて来る!


「もう駄目だぁ!! せめて大声だして気付いてくれたら逃げてくれるかも」


とにかく目一杯に空気をお腹に取り入れてから、思いっきり声を吐き出した。


「みなさあああああん! そこをどけて下さああああああい!!!!」


あ! こっちを見てくれ・・た?

しまったあぁあ! 人が大声を上げて空から降って来たに驚いたのか、僕を見ながら、口をあんぐりと開けて固まってしまってるよ!


「え~い! ままよ!! なんとかドラゴモドキだけに!! 


ドゥッガアアアアアンン!!!!


轟音と共に、地響きが鳴り大きな地震の様に地面が揺れる。

土煙が爆発的に舞い上がり、大小の土の塊や石が飛びあがって行く。

何が起こったのか、見当もつかない騎士たちは、ただ茫然とその異様な光景を見上げるしかなかった。

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