第12話 戻りました 1

「・・・・ル・・・・ルダ・・・ルダ君・・ルダ君!!」

「?!!」

「あ、やっと起きたですね。ちょっと思ったより時間が掛かっちゃってごめんなさいですの」


きれいな声だな・・まるで女神様の様な・・・・・・・・・・・・


「!?? め! 女神様!??」

「はい、女神ラフタラーテですの。ルダ君、今の状況は分かるですか?」


え? 状況? 僕、寝ていた?

どうして寝ていた? というより、この綺麗な女性は・・女神様? あれ? 僕、死にかけていた様な・・・・・そうだ! 魔獣に喰われて死にかけて、そこへ女神ラフタラーテ様が助けてくれて・・・


「足は!?」


僕は掛かっていた布団をおもいっきりはぐる。


「あ、ある・・僕の足がちゃんとある・・良かった」


少し動かしてみる。

うん、ちゃんと動く。


「女神様! 本当にありがとうございます!」

「いいの、いいの! こんな可愛い男の子の身体を作れて凄く楽しかったですもの。特にあそこは、念入りに仕上げたですの! 普段は可愛らしいのに、ここぞって時には野獣に変わるですの!」


いったい? 何を言っておられるのだろう?


「女神様? あそこってどこですか?」

「え? ああ! いえ! 今のルダ君は知らなくてもいいですの! 私がちゃんと隅々まで見て、触って、ちゃんと分かってますの。だから心配しないでいいですの!」


なんだか慌てていないか? そう言えば今、僕、裸だった。

それと関係があるのかな?


「女神様? どうして僕、裸で寝ていたのでしょう?」

「え? ま、まあ、それは、あれよ、そ、そう! そうよ、体を蘇生再生の治療をするのに服は邪魔だからよ!」

「そうなのですか。そんなに大変だったのですね。申し訳ありませんでした」


僕はベッドに座ったままで失礼だったけど、頭を下げてお詫びをした。


『う! 良心の呵責かしゃくが! 若い子を裸にして、あんな事やこんな事をしていたなんて言えないですの! でもこれは治療なの! そう! やましい事は一つもないですの!』


あれ? なんだか女神様が苦痛の表情で見悶えているけど、どうしたのだろう?


「そ、それより、体の具合はどうですの? 何かおかしな所はありませんですの?」

「体、ですか? ・・・・」


僕は、自分の体を触ったり、動かしたり、ベッドから降りて少し歩いてみたりしたけど、違和感は全然ない。それどころかなんだか軽くなった気がする。


「全然、違和感ないです! それどころか体が軽いというか、動きやすいです!」

「そう、それなら良かった。体を蘇生させるのに、私の身体と血を使っているからね、基礎身体能力が上がっているはずですの」

「か、身体って?! め。女神様! 僕の為にそんなことして大丈夫なのですか?!」

「ああ、大丈夫、大丈夫。こう見えて身体の再生能力は人とは違って高いですの。その私の体を蘇生の基盤に使用したからルダ君の体も私ほどじゃないけど強くなってるはずでずの。ちょっとした怪我や病気、毒なら耐性とか関係無しに無効化して回復するのですよ」


そこまでしてもらって良いのだろうか?


「あ、気にしなくていいですの。私の気紛れなのです」


ここまで良くしてもらったのが気に引けているのが顔に出ていたのだろうか?


「でも、本当によろしいのですか?」

「いいの、いいの。ルダ君がこの世界で思いっきり生きて頑張ってくれれば、私としてはそれで充分なのです」


この恩はいつかお返する事で、今は有り難く受け取っておこう。


「分かりました。この御恩に報いる様、精一杯がんばります!」


『うん、うん。ルダ君、精一杯頑張って、活躍するのですよ。あなたなら次期魔王の素質は十分にあるし、それにいい加減、貴族主義のこの世界にも活を入れないとですの。大変だけど頑張ってですの』


「何か、言われました?」

「あ、いえ。何でもないですの! それより問題なさそうだから、地上に戻してあげるですの。いい加減ご家族も心配されているはずですの」


そ、そうだ! 母さんも心配しているだろうし、それにシェリーの事が心配だ。僕だけでブルドのところに行ったのを気に病んでいるかもしれない。


「そ、そうですね! 色々ありがとうございました! 早速お願いできますか?」

「はいですの。取り敢えず服は破れているけど、それを着てですの。真新しい服で戻っても良いのですけど、不思議がられるても困りますし、私に会ったなんて言ったら変な騒動になるかもしれないですの」


それはそうか。


「はい。問題ありません。特に女神様に会った事は秘密にしておきます」

「そうしてもらうと助かりますですの。それじゃあルダ君、後は君の好きなように一生懸命に生きるですのよ」

「はい! ありがとうございます!」

「じゃあ、転送しますです。あれから3週間もかかってしまったからさぞ心配されているですの」


女神様が僕に向かって両手をかざされると、僕の足元に白く輝く魔法陣がスーっと現れ、光の柱が僕を包む様に立ち上がる。

それと同時に、血が付き破れたシャツを僕は着ていた。


さあ、みんなが心配しているから早く戻ろう・・・・ん?


「・・・・・ 3週間?」

「いやぁ~、念入りにルダ君の身体を堪能・・・調整したら結構時間、掛かっちゃった、のです! さあ、転送しますですの!」

「ちょ、ちょっと! 女神様!? 3、4日じゃなかったですか?」

「・・・・・さあ! 飛ばすですの!」

「ま、待って下さい! どう説明したら!」

「後は、まかせたですの!!」


僕の体が宙に浮き、瞬間、目の前の景色が大きくぶれた。

どう説明すれば良いんだ?

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