第2話 幼馴染1
「女神ラフタラーテ様、今日の収穫がより良きものになりますようお願いいたします。そして僕に魔法力を授けてください!」
ルダは、村の出入り口近くに設けられた小さな祠の前で跪き両の手を顔の前で握りしめ一生懸命に祈りを捧げていた。
「ルダ! 早く行こうよ! 狩りの練習しないと負けちゃうわよ!」
村の出入り口となる、頑丈そうな木組みの門の先、森に入る手前の道で、鮮やかな赤い髪をした少女が、大きな声を出して手を振っている。
「シェリー、狩りに出る前にはちゃんとお祈りを捧げないといけないんだよ?」
「大丈夫! ルダより早く来てちゃんとお祈りしているもの。でないと、お父ちゃんとお母ちゃんにお仕置きされるんだから・・・・・・考えるだけで恐ろしいのよ」
シェリーの顔が一気に青ざめてない?
そんなに恐ろしいお仕置き何だろうか?
確か、シェリーのお父さんとお母さんは有名なハンターで、あ、ハンターって言うのは魔獣や害獣退治や遺跡の調査発掘、身辺警護と身辺調査、果ては街中清掃まであらゆる雑用を引き受けるいわゆる何でも屋だ。
そんなハンターの中でもシェリーの御両親は有名だったらしい。
今ではおばさんは引退して、おじさんだけ続けてるみたい。
今は長期の依頼で留守にしてるみたい。
「今度の収穫祭で行われる狩猟大会で良い成績出さないといけないんだからね!」
手を握りしめやる気満々のシェリー。
でも今年の大会もシェリーが優勝するんだろうな。
ご両親に相当ハンターとしての技術を叩きこまれているみたいだから。
「シェリーなら大丈夫でしょ? 見た目は華奢な可愛らしい女の子なんだけど、この村でなら大人でも勝てないんだから」
「か、可愛らしい? え? 本当に?」
「本当だよ?」
おかしなシェリー。
実際可愛らしいんだから他に言いようがないのに、そんなに嬉しいのかな?
「そ、それより早く行こう!! 狩り場の下見をして少しでも練習しなきゃ今度の収穫祭で良い成績あげられないよ!」
そう言って、僕の腕をギュッと掴むと、強引に引っ張っていこうとする。
「分かったから、ちょっと待って」
僕は、ラフタラーテ様の祠にもう一度手を合わせ、今日一日僕とシェリーが安全に狩りが出来る様お祈りをした。
「ルダって偉いね。他の子や大人だってここまで、女神ラフタラーテ様にお祈りする人いないよ?」
「シェリーだって毎日お祈りしているじゃない。シェリーも立派だよ?」
「そ、そうかな・・」
ちょっと恥ずかしそうに顔を伏せたシェリー。少し顔が赤くなった?
「世界を悪神から守った魔王様を見出した始めの女神様だもの。ちゃんとお祈りしないと罰が当たるわ」
「そうだね。僕も魔法力を授かるよう毎日お祈りしているからね」
「え? まだそんな事、お祈りしているの?」
「駄目かな?」
「べ、別に悪い訳じゃないけど・・それより魔力の向上を願ってもっと身体強化が上手く出来る様にお祈りした方がいいんじゃない?」
う、た、確かに。
シェリーみたいにとまでは言わないでも、もう少し魔力を上手く使って身体強化を安定させないと、狩りも上手く出来ない。
いつもそれでシェリーに迷惑をかけているもの。
「ごめん、もっと頑張るね」
「あ、ううん、べ、別に責めているわけじゃないから。ただもう少し上手くなってもらわないと、将来一緒にハンターとして生活していけないじゃない」
「え? 一緒に?」
「そ、そうよ! そしてルダと・・・家庭を・・・・きゃあ! 何を言わせるのよ!!」
い、いきなり顔を真っ赤にして叫び出して、殴りかかってくるたシェリー。
「ど、どうしたの? シェリー、顔真っ赤だよ?」
「今の聞いた!?」
「何を?」
「え、その・・・か、家庭・・・きゃあああああ!!」
だから何で殴り掛かってくるんだよ!
「僕にもう少し上手くなって欲しいってことくらいしか聞こえなかったよ? 最後の方は声が小さくて」
「・・・・・あ、そうなの・・ちぇっ・・・」
なんでそこで舌打ち?
「まあ良いわ。それともう一つ問題がるのよ。ブルドが最近しつこいの!」
「ああ、なるほどね」
ブルドとは、僕とシェリーの幼馴染の一人で2才上の金持ちの息子だ。
もうじき13才になるブルドは、最近シェリーに自分の嫁になれとしつこく尋ねてくるそうだ。
シェリーは、黙って立っているだけなら、村一番の美人、ん? まだ11歳だから美少女だ。
その噂は他の村にも広がっていて、この間は、他の村から宿を経営しているっていう30過ぎのオッサンが花束抱えて、求婚しに来たそうだ。
まあ、シェリーのお母さんの魔獣をも寄せ付けない威圧に屈して逃げ帰ったそうだけど。
「ブルドのやつ、私のハンターの夢を馬鹿にするのよ。そんな事をしなくても贅沢させてやるって言って! 私は嫌なの! お母さんみたいに自分の力で生きられる女性になりたいの!」
「僕もシェリーがハンターになって活躍しているところ見てみたい」
「本当?」
「うん、だって、狩りとかして身体を動かしている時のシェリー、格好いいもん!」
「えへへ、そうかな? ・・・ルダ そう思ってくれていたんだ」
「まあね。だから僕も、魔力操作を高めて、上手に使えるようになって少しでもシェリーに近づきたいと思っているよ」
「ルダなら大丈夫! あんなに頑張っているんだから、絶対に強くなれるよ! 私が保証する!」
「ありがとう、シェリー」
「・・う! か、可愛い・・その顔は反則よ」
なぜかシェリーの顔が赤くなったような?
「そ、それでなんだけど、もし、もしもだよ、私達がハンターになったら、その・・・パーティーを組んで・・ほしいんだけど・・・いいかな?」
物凄く真剣な目で、話してくるシェリー。
これは冗談とかではなさそうだ。
でも、まったく知らない者同士でパーティーとか組むよりは、気心の知れたシェリーと組むのは、いい話かもしれない。
「そうだね。それ良いかもしれないね。じゃあ僕達が成人してハンター登録できるようになったらパーティーを組もうか?」
「! 良いの?!」
「うん!」
「・・・・・・・・・い、いやったあぁああああ!!!!!」
シェリーが飛び上がって喜んでくれている。
そんなに僕とパーティーが組めて嬉しいんだ。
これはもっと頑張って成人するまでには、少しは出来る男にならないといけないな。
「よし! これでルダと四六時中一緒にいられる・・・そうしてお母さんの言う通りに既成事実を作ってしまえば・・・うふ、うふ、うふふふふふふふ」
な、なんだ? リーシェン、何かブツブツと独り言を言って気味の悪い笑い方してないか?
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