第22話 妹デートな日

 祝日の朝。


 今日は久しぶり休めると思ったが、やはり俺に休日はないらしい。


 昨晩、千代が突然ショッピングに行きたいと言い出した。


 珍しく景も乗り気だったから、仕方なく車を出すことになったのだが。


「おい千代~、まだか~」


「まだ~、あとちょっと~」


 千代はかれこれ一時間は服を選んだり化粧をしたりしている。


「兄さん、女の子をせかすのはよくないわよ」


 景は20分前に起きたばかりだが、もう準備を終えて俺の隣にいる。


「景はもう少し女の子してもいいと思うんですが?」


 景はばたばたしている千代を見ながら、


「私は千代ちゃんみたいに可愛くないから」


 と言って、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。


「そうかな~。俺からすれば、どっちも可愛いし似てるけどな」


「兄さんは何もわかってないわね、兄さんの癖に」


「む、俺が何もわかってないだと?」


「ええ、そういったのよ」


「ふ、ふーん。いいよ~だ」


「何を拗ねてるの」


「景ちゃん最近俺に対して辛辣過ぎませんか?」


「気のせいよ」


 そんな会話をしていると千代が準備を終えたらしい。


「お待たせ―! さあ、行こう!」


 一番最後に来た奴が、よく言うぜ。


「千代ちゃん、今日も可愛い」


「ありがとうお姉ちゃん!」


 うん。


 やっぱりどっちも可愛い。 






 マンションから一時間ほど車を走らせ、ようやく駅近くのショッピングモールに来た。


 道中、景と千代はスマホ画面を見ながら、あそこに行こうあれを見ようと話していたのが聞こえた。


 今日も荷物持ちだなと確信した時だった。


 まあ、俺はこれと言ってみたいものはないからいいのだが。


「お兄ちゃん、早く!」


「ちょっとペース早くないですか?!」


 今日はいつにもましてハイペースだ。


 普段三人で買い物に来ると、まず俺がダウンして、その後数分して景がどこかに消える。


 その対策なのか、千代は景の手をしっかり握っている。


 ああ、かわいそうな景。


「これお姉ちゃんに合いそうじゃない?」


「そうかしら」


 でも、こうやって二人で買い物をしているときは、本当に楽しそうだ。


 高校生であれだけ日常が忙しかったら、普通の高校生がしていることなんてめったにできないんだろうな。


 俺ももうすぐ卒業だし、そうなったら今みたいに、景と千代のそばで見守ってやれる時間も減るかもしれない。


「ねえ兄さん、聞いてる?」


「え? 何が?」


「やっぱり聞いてなかった! お兄ちゃんそんな顔してたもん」


 景と千代は俺の目の前にいた。


 二人とも、変装をしていることを除けば、普通の女子高生だ。


 俺の手は自然と二人の頭に伸びていた。


「どうしたの、兄さん」


「いや、何でもないよ。さあ次行こうか!」


「めずらしくお兄ちゃんがダウンしてない。これはいけるぞ!」


 その後、俺は夕方まで二人に振り回され、スマホの万歩計は5万と表示されていた。

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