第35話 姉上
ライはぐぐーっと右手に力を込めるような仕草をした。手からバチバチと火花が散っている。
そしてその手をいきなりポケットに突っ込んだ。
石畳の床に落ちて跳ねる線香花火のような火花が全て消えた時、ライの手には緑に輝く小さな宝石があった。
「落としたら大変だからな。ちょっとポケットいじって特殊に隠してるんだ。」
「.....すごい。」
隣でイオも身を乗り出して宝石をまじまじと見つめている。
「姉上の石さ。これが光ってるうちは、姉上は無事だ。そして姉上に近づくほど、お互いが本来の力を取り戻す.....。」
なんか、俺が知っている竜人と似ている。
現代日本の超有名ゲームの話だけど。
「...すごい綺麗だけど、お前のに比べてすごい小さいな...。これはその...個性?みたいなもの?」
緑の光で俯いたライの顔が煌々と照らされる。
「姉上は...。ヴァイヤの血を引く者として神が侵略してきたときに勇敢に戦ったんだ。でも、戦闘の最中、神の部下の1人に毒矢を打たれてしまった。」
イオが泣きそうになっている。
「羽に毒矢が刺さってしまって、毒が回る前に、と姉上は自ら羽を切断した。でも1つの羽では飛べなくて、すぐに墜落してしまった。もう片方は墜落先に居た雑魚どもに切られた。.....俺の発見が遅かったんだ。ボロボロになった姉上と、割れた石だけが落ちてた。」
ライは、ここ、欠けてるだろと言って石をかざした。
「この石は、竜の力を閉じ込めたもの。この石が完全に割れた時に持ち主は死ぬ。砕けた石は輝きを失って黒くなる...。逆も然り。だから、姉上は生きてるって断言できるんだ。」
イオはちょっと離れたところで泣いていた。
「イオちゃんに全く考慮してなかった。悪いな...。」
「...残酷な話だ、って言葉でくくっていいのか分からないけど...。そんだけ邪悪なやつだってことは分かった。」
「.....姉上の命、今日はいつも以上に輝いてるな。お前が来てくれたこと、感じたのかもしれない。」
緑の光は、美しい夜空をかき消さんとばかりに辺りを照らしている。
この光をみているだけで、癒されるような...。そんな気分になった。
「きゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
突然、ちょっと離れたところに居たはずのイオの悲鳴が聞こえてきた。
首を締められ、四肢は力なく垂れている。
「賊ども、動くな。」
女の声だった。
その途端俺の後ろから、溢れんばかりの緑の光が押し寄せてきた。
その光に照らされ、女の顔が見える。
美しい金髪の、長身の女だ。
「陛下.....。気でも触れたのですか?!」
「.....姉上?!」
異世界より、お救いします。 十字路ミノル @minoru81
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