第33話 同盟設立と強すぎる敵

むちゃくちゃな好条件だ。


前にイオが言っていたが、俺たちは文無しな上に街で戦闘をおっぱじめてしまった身。

そうでなくても神を追い、神に追われる存在。

そんなもんだからここの街、国から得られる物は元々なかったんだと思う。

(俺の知ってるのでは組合ギルドとかの利用など。ここにそのシステムがあるのかはもはや知ることは出来なそうだけど)


でも今の俺には、そういう好条件にあやかりたい、少しでもこれからの事を安定させたいって気持ちはそんなになくて、ただライたちの役に立ちたいという気持ちでいっぱいだった。


「ここまで助けてもらったんだ、喜んで奪還に協力させてもらう。むしろそんな条件じゃオツリが来るくらいだよ。」

「感謝する。イオちゃんも、改めてよろしく。」

「もちろんです!」


夕暮れ時、誰もいない廃墟のスラム街の一角で

俺たちは固く握手をした。


「よし、そうと決まればさっさと行動しないと俺ら殺されちまうな!」

「こんな大事なこと紙でやり取りしなくてええんかよ?!」

「いいんだいいんだどうせみんな...。」


そう言ったところでライは口をつぐんだ。

ここにいた兵士達がほとんどあの女に消されてしまったのを俺たちはついさっき目の当たりにした。

イオも思い出したのか俺の手をきゅっと握る。

もし隠れていた真桜が巻き添えになっていたら...と思うと胸がギリギリと苦しくなってくる。


「なあ、あの女の.....。」

「あの技だな、あれはほとんど禁忌さ。」


恥ずかしながら俺の体力的にすぐには無理だ、今夜は隠れてようか、と言うと、ライはボロ屋の影になってる石畳の地面にどかっと座り込んだ。


「あの女の魔法、タヌキには分かったか?」

「重力だってライが言ってたし...実際体も重くなったな」

ほんとに今日はイオのファインプレーに助けられた。その件を説明したらライはイオの頭をくしゃくしゃにしながら「えらいぞー!えらいぞー!」と言った。


「そう、重力に干渉するのさ。おかげで飛ぶのが辛いのなんの...。そのくせ自分の体を軽くできるから身軽なんだよな、チートだチート。」

イオの頭をポンポンしながらライはそう言った。


「ここに重力って概念あったんだな...。」

「ほう、ニホンにはあったのか?」

「あったも何も...常識だ常識。」


「3年前からだ...それまで俺達にはなかったのさ。その知識が。今でも頭ではわかっててもしっくり来ねぇよ。そしてその知識を持ち込んだのは例の神さんだ。」


「は?」


「アイツは様々な概念、知らない言語を持ってきた。そしてその絶対的な力で強制的にそれを広めた。今俺達が喋ってるのだってその変えられた言語なんだ。重力って概念もそう。そして俺たちがそれまで想像もしなかったようなその概念達を使った魔法を次々に作り上げて部下に使わせてる。」


「重力の魔法的なものはそれまでなかったと?」


「そりゃ、俺たちは水やら火やら光やら闇やら、ここに元からあったものを元にした魔法を使ってたからな。ここ3年で大きく変わったんだ。

さっきの女のやつは、重力を極限まで1箇所に集めるんだ。すると強すぎる力が生じてそこいらのものは跡形も無くなるわけ。それをごく小規模かつ一瞬でやったんだな。そう考えるとやっぱズルだズル」









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