第29話 ターゲット

「魔法を使って縛ろうとしても、死なない程度に焼こうとしても、全くダメだったのです!動揺しているうちにスキをつかれ、私めはこのような姿に……ううっ」


途端に俺たちを囲む少女たちがざわざわとしだした。

「皆さんお静かになさい!この男が抵抗しないと言うことは、少なからず私たちの魔法を恐れていると言うことです!一気に燃やしてしまいましょう!」


「私の二の舞になってほしくないのです!その方法では意味がない!私は皆さんの忠誠心が消えてしまうことが悲しくてならないのです!!」


俺はハンズアップして成り行きをずっとみていたが、少女たちの慌てっぷりは半端なものではなかった。

リーダーちゃんとイオ、どちらについていいのかわからないのである。


(傍観してないで賢司郎さんも動いてください)

ボソッとイオが言った。

俺も頑張ってみよう!


「抵抗しないのは君たちの神にお会いしたいからだ。君らの魔法なんざちっとも怖くない。」

昔患ってた厨二病チックに喋る。

……古傷が痛むぜ。


リーダーの子は悔しそうにこちらを見た。

「E_502_O!あなた少し喋り過ぎです!拘束手段がないことを自らばらすとは…!今ここで全滅もあり得たのですよ!!」

俺はすかさず言う。

「ほらほらどうしたの?早くつれてってよ…!!」


リーダーの子は頭を抱えてしまった。

拘束が任務なのに、拘束の術がない。(と、思っている)

無理に行えば忠誠心を失うリスクがあるので皆が怖がって動けない。

当の本人は「自分を早く捕まえろ」とか言い出す。


人間の頭であっても打破は難しいだろう。


その先にそっとイオに耳打ちする。

(しかける?)

(はい。)

ターゲットはこの苦悩のリーダーちゃんだ。


「先程の言葉には語弊があります。拘束手段ならあります!!」

またしてもイオが高らかに宣言する。

「どっ…どうするのです⁈」


イオはすっとツルを編んで作ったロープを取り出した。

「魔法で縛ることはできませんが、物理的に縛ってしまえば動けません。それを知った私めはロープを作って縛るタイミングをはかっていたのです。絶対に破られないようにする結び方も学びました!」


おおー!!と言う声があがる。

「では、さっさとやってしまいなさい。」

「お任せください!さあ罪人よ、抵抗はおやめなさい!」

「はいはい。抵抗しませんよ〜。」

俺が手を下ろすと、そこにイオがロープをゆるゆるーっと巻きつけた。

もちろんおれでも一瞬で内側から解ける。


「さあ、拘束が終わりましたので貴方様に引き渡しましょう。」

「責任を持って連れて行きます。ほら、少しでも遅れたら焼きますからね。」

「へーへー。こんがり焼いてくだせぇ。」


俺はリーダーの子に連れられて歩いた。



「よかったですねE_502_O、直してもらえますよ。」

一人が私の肩に手を置いて言った。

「はぁ?」

そんなの御免だ。

私、あの人と一緒に神様を殺すんだから。

「えっ…?」

「ばぁ〜〜〜か!!」


目の前が一気に開けた気がした。

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