第28話 もう一芝居

「すみません…。貴女は、現在行方不明のE_502_Oではないですか…?」

「コードの確認取れました。やはり彼女はE_502_Oで間違いありません。」

イオは、しまったと呟いて、首の後ろを押さえた。

長い髪でいままで見えていなかったが、そこにはE_502_Oという文字が書かれ、しかも青白く光っていた。


「……。行方不明の仲間を捜索し、迎えに来ました。そちらの男性は誰ですか?」

髪を切る前のイオと髪色だけがちがう少女が一歩進み出て、イオに問いかける。しかしこっちはやたら無機質な声だ。


「……やだなぁ…。私E_……?なんてそんな名前じゃないし…。」

「……やはり、我らが神のお言葉は正しかったようですね。魔力をもたぬ男が、我らが仲間を洗脳して逃げた、と。」


別の一人が口を開く。

「かわいそうに……神に頂いた髪を切られ、忠誠の心の証である名前までわすれてしまうとは…。」


「指示通り、この男を生捕りにして神の御前に捧げようではありませんか。」

その言葉に俺たちは同時に叫ぶ。

「ヤバっ!!」

「ヤバいですね!!」


たくさんいる女の子達はぐるっと俺とイオを囲んで立っている。

全員同じような表情、同じ容姿、同じ白いワンピース。気味が悪かった。

さっきから喋っているのがリーダーなんだと思う。


「いつの世も、どの世界でも、神に逆らう者を裁き、その魂まで浄化するのは『炎』だと神はおっしゃいました……。」

その子がそう言うと、周りの子たちは全員、イオが紅茶のお湯を沸かすために使った赤い魔法陣を展開した。

「死なない程度に焼けてください。」


その時、俺はこの状況を打開するかもしれない作戦を思いついた。

まだ使えるアイテムがあるじゃないか…!!


「……イオちゃん、ロープ編んでたやつ、まだある?」

「……あります。」

「一芝居打とう。」

「言いたいことはだいたいわかりましたが…そのあとどうするんですか?」

「一応考えはあるけどマジの運ゲーになるから、失敗した時のためにイオちゃんは体力を戻すことに集中してて。」


「祈りは済みましたか?」

魔法が発動された。周囲が一気に熱くなる。


「………お待ちを。」

イオちゃんが他の子みたいな喋り方で声を上げた。

「E_502_O、システムが復旧しました。任務に戻ります。」


リーダーの子が応える。

「よかったです。お戻りなさい。魔法陣の展開はできますか?」

「それについて報告があります。まずは魔法陣を解除していただきたく。」

「…正当な理由がありますか?」

「あります。」

イオは高らかに言った。


「この者が魔法を使えないというのは、貴女の仰った通りです。」

「ではなぜです?」


「この者は魔法が使えない、同時に…魔法が効かないのでございます……ッ!!」


迫真の演技である。




 


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