第24話 救出
待って、なんでそうなるの⁈
壊されたら流石にイオもバレてしまうし、そもそもなんで「壊せる」ことを前提で話してるの⁈
俺がパニックになりかけた途端、石が音を立てて動いて、水が止まった。
そして、茶髪のショートカットの少女が中から現れた。
「待ってお姉さん!壊さないで……!!ごめんなさい。私ここに勝手に隠れていたんです!」
「おっとっと。危ないねぇ。お嬢さんはなんでこんな所に?」
「私ね、お兄ちゃんと二人暮らししてたの。でもね、お兄ちゃんは兵隊さんになっちゃったから、一人暮らししてたの。そしたら、こわいおじさんたちに連れてかれて……変なことされたの…。」
女の様子を伺ってみると、女はさっきの会話のこともあって、ちょっと顔が赤くなっていた。
「それで…!ひとりで逃げてきて、ここに隠れて、たまに投げ込まれるコインで生活してたの…!ごめんなさい……。」
「なっ……なんてことを!こんな幼い少女に⁈わかった!私はこれからちょっとお仕事をしてくるけど、それが終わったら一緒にヴァイヤに行こう!お姉ちゃんとお姉ちゃんのご主人が守ってあげるから!」
「ひぐっ……いいんですか……?」
「気にしないで。これでもお姉ちゃんちょっとエライ人なの。守ってあげられるから…!ちょっとの間、ここで待っててね!」
「ありがとうお姉ちゃん!」
『お姉ちゃん』は少女に向かってサムズアップすると、急いでライの方へと向かっていった。
俺は女が遠ざかっていったのを確認してから、ライを噴水の柱の空洞から引っ張り上げた。
「……演技派だね。」
「あれ、こうするためのナイフじゃなかったんですか?」
「覗き込んだところを襲えるかなとか思ってたけど壊されるとは思ってなかったから…ナイス機転。ドアまで走るよ。」
イオの手を取って走る。機械のはずなのに、ちょっとあったかいのが不思議だ。
結局誰からも気づかれることなく、俺たちはライの家へと逃げ込むことができた。
『おし、ちゃんと逃げれたみたいだな!………あ、そうだ返事ができないんだ。じゃあ俺が今から言うこと耳の穴かっぽじってよく聞いとけよ!』
外では相変わらずライが踊るように攻撃を交わしつつ色々叫んでいる。
よくこんな時に通信できるな。
『一つ目!!通りに面した部屋の壁という壁に水をぶっかけろ!
二つ目!!裏口のドアを開けとけ!
三つ目!!さっきまでお前がいじってた赤い石、そこにあるよな!それを俺の方にぶん投げろ!届かなくていい。今すぐ投げてくれ!!』
砲丸投げはやったことがない。
けど、届かなくてもいいのなら……。
俺は静かにドアを半開きにして、そっと外に出た。
誰も俺に気づくものはいない。
民家の影に隠れながらライのいるところに近づいて、さっきの袋に入った石を思いっきり投げた。
やっぱり届かなくて、騒ぎながらライを取り囲む兵士の後ろ辺りで落ちてしまう…。
『おし。サンキュー!思ったより近かったな。』
ライが兵士の壁を軽く突破して、落ちかけたその石を拾った。
『あとは二人で仲直りでもしてろ。巻き込まれないうちに帰れ!』
「…お前がその不都合な人間かな?そうだな、私には時間がないから、10秒以内に死んだら許してあげようかな。」
「…お前が神の犬かな?かわいそうに。かわいそうだから10秒以内にブッ飛ばすかな。」
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