第22話 少女包囲網V.S.少女ライ
「そうと決まれば最後の打ち合わせですね!」
「もうお前敬語じゃなくていいよたまに本性出るし」
さっきライに投げられた物をどかしながら答えた。
「……え、なにしてんの?」
「女装。」
ライは元々着ていた緑の服(これに金髪だから絶対日本人が見たら某勇者にしか見えない)の上にちょっと黄ばんだフリル付きエプロンをし、下にスカートを履き、三角巾を深めに被った。
「完璧にそこらの町娘だろ?」
元々華奢だからか、そう違和感はない。
遠くから見たら女の子に見える……かもしれない。
「表に出たら言ってやるんだ。『ヴァイヤ兵よー!助けてー!兵士さぁーーーん!!』ってな。お互い都合が悪くなるだろ?」
「そこいらのヒラの兵士も八百長しってんのか?」
「もちろん。あいつらはそれで甘い汁を吸える。ヴァイヤはフラムスを支配できる。win-winだな。」
全くひどい国家だ。
「厄介ごとが起こったら、親玉出てくるだろ。そんで俺が本気出して倒すだろ?はい楽勝ー。」
「……騒いでる間に俺はイオちゃんを探す……と。そうだな?」
「半分正解、ってとこかな。もう場所はわかってる。さっき探したかんな。広場に噴水があっただろ。」
「ん……?あそこにどうやって隠れんだ?」
「あの噴水さ、作ったのヴァイヤかフラムスか知らんけど魔法石でできてるんだよな。んで石から水垂れ流してる。そこに隠れれば魔法感知は石の魔法でカモフラージュされる。俺は見つけたけどね。」
「じゃああれだ、親玉に噴水に近づかれたらバレて終わりだな?お前さんは見つけられたんだもんな。」
ライは頷くと、パチンと指を鳴らした。
みるみる金髪が伸びていく。
「それじゃ、健闘を祈るよ。タヌキさんっ!」
そう言うライの声は完全に女の子の物だった。
さぁ、相手の親玉がどんなやつだろうと、やってみせる。
噴水の中のイオちゃんが見つかってしまう前に俺が助け出してみせる。
なんたって、イオちゃんはちゃんと自分で判断して、俺を信じて待ってくれているんだもの。
そのうち騒ぎが起こる。
それまでちゃんと大会前みたいにストレッチして待っていることにした。
ライは『本気を出す』って言ってたよな。
まさかの竜化とか胸熱なことがおこるのだろうか。
竜人族っていうくらいだからな……。
ふと俺の目に止まったのは部屋の隅に押しやられている赤い袋。
さっきライから投げつけられた物だ。
なんかどうしても気になってしまって、袋を手に取るとずっしりと重たい。
巾着袋のように縛られた袋の中身を取り出すと、中からは大きな赤い石が入っていた。
なんだろうこのアイテム。
男子が興奮する感じの厨二くさい模様まで入っている。
あいつ……まさか大切なもんを忘れてったんじゃ…?
俺が石に気を取られていたその時だった。
「キャーーーー!!助けてぇ!お助けぇぇえ!!ヴ、ヴァイヤ兵よぉっ!!兵士さぁーーーん!早くやっつけてぇぇぇぇえーーー!!!」
「……おっぱじめやがったな……!」
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