第20話 許してください。
「おはよ、イオちゃん。」
「ん〜………。」
「お、起きたな。」
ぱっちり目が合う。
しかし俺が話しかける前にイオちゃんはかけてあった学ランでささっと顔を隠してしまった。
それ以降もなんとなく無口。
会話は最低限。
「あっれ、嫌われちゃったんじゃないですかぁ?」
「うっせーな。」
「まぁそうですね。あの後結構大変でしたもんね。タヌキさん?」
「黙れやトカゲ族!」
そんなイオちゃんに対して俺も目を合わせられない。
徹夜で作戦会議をしている中、イオちゃんの熱がおさまらず、学ランが焦げてしまう事態になった。
そこで大慌てで風呂場(のようなもの)を借りて水につけたのである。
機械とは言え会って一日の女の子の服を脱がせるハメになったことに未だに罪悪感を感じている(イオちゃんはずっと気絶していたのだが)。
「まぁいいでしょう。今日は忙しくなりますよ……。」
ライが、なけなしなものですが、と朝ごはんを出しながら言った。
ちょっと固めの普通のパンもどきだったので普通に食えた。なんか、食文化似てるんだな……。
そんなことを考えてぼーっとしてる間にイオちゃんはさっさと食べてしまっていた。
「……イオちゃん?」
「…………。」
「……ごめんなさい。」
「……私、まだ許してないですからね。」
これは一生許してくれないのではないか、と思うほどにその言葉が重くのしかかってくる。
「だってだって……!酷いじゃないですか!!そのまま置いてってどうするつもりだったんですか⁈」
何も言えない。
有能っぷりに引け目を感じて先走りました。
そう叫べたらどれほどいいだろう。
「……ほんとは仕方なく連れて行った、って正直に言ってくれればよかったのに……!」
「違う!それだけは絶対に違う!!」
肩を掴もうとしたその手を軽快にすり抜けて、イオちゃんは泣きながら外へ飛び出して行ってしまった。
「まずいですよタヌキさん!これで計画がバレたら死んだほうがマシなくらい拷問されます!!」
「…………っ!」
「バレないうちに止めましょう!もうそれしかない!」
俺はライが言い終わる前にドアを勢いよく開け、昨日のジャンプばりに飛び出した。
同じ頃、フラムス中央部、王宮にて。
「あぁーーもう!ったく面倒だなぁーー!」
「そう仰らないでくださいよぉ」
二人の女性の声がとある広間に響き渡る。
「そう仰るなってさぁ!よーく言うよなぁ!!だってこれノーギャラなんだぜ⁈」
「……?ご主人様がノーギャラで委任なんてするの見たことないですよ〜?」
一人は背が高く、ポニーテールにした深緑の髪を振り乱しながら大声で喚いている。
対照的にもう一人は大きな杖を持った小さな女の子であった。
「あぁあぁ渡されたさ!きっちり10万パル頂いた上になでなでしてもらった!!」
「私もおんなじです。身にあまる光栄じゃないですか?」
「私にはヴァイヤの国民を統治する仕事があんの!それに命かけてんの!それ以外のことはボランティアなの!!」
ぎゃんぎゃん喚きながら短いスカートをバサバサさせる相方に困りはてる少女。
この構図は数年前からである。
「……とりあえず今日私達が本部から派遣された理由を言いましょうかね。」
「あ、それ聞かされてなかったよね。」
「えーと、配下になってるフラムス共和議会の監視。ご主人様からのお手紙を届ける。」
背の高いほうの女子はどうも気に入らない様子で聞き返した。
「ならどーしてこんな軍勢が豪華なわけ?ヴァイヤ軍最高指揮官の私と、神の従者長のあんたと、絡繰少女部隊が50人?戦争でもする気なら楽しいんだけどさ。」
「これ、最後の指令ですが……まぁ戦争ですね。」
二人の顔が変わる。
「ゲームの為に派遣した絡繰少女部隊である、現在行方不明のE_502_Oの捜索、任務失敗の可能性が高いのでその代行で、もしターゲットを発見したら攻撃可能。ただし生捕りで。」
「時間の無駄だ。早速探してぶちのめそうぜ。そのターゲットは私に探させて頂こうか。」
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