第12話 敵国侵入作戦 

え……。

メチャクチャ有利やん。

どんなハンデを食らっても、そのハンデの代償はもらえるものなのかもしれない。


「じゃあさ、目で見られなければ俺がいてもわからないわけだよね?」

「そうです。多分神以外そうです。」

イオちゃんの言葉がちょっと震える。


ただでさえダメ元のチャレンジ。

もらえるもんはもらっておこうと思います。


さっきから動揺しまくっているイオちゃんが何かぶつぶつ言いながら隣りを歩いている。

聞き耳を立ててもわからないワードまみれなのでスルーして進んでいた。


「……あっほら、町です!」

「……町?どっかの王国の首都とかじゃないの?」


草原地帯が終わってまもなく、巨大な町(?)が見えてきた。

しかしそれは、俺が想像していたファンタジーの王国とは全然違うものだった。


金属の巨大な塀と、それに勝る大きさなのであろう、城のようなものの尖った屋根の先端だけが見える。

この世界には、巨人でもいるのかと思えるビジュアルだった。


「あの塀ですと……まずいですよ!」

「なに⁈なにがまずいのさ⁈」


イオちゃんがオロオロしっぱなしなので、それほどまずいのだろう。

「あれ……フラムス共和国と言いまして……。我々ヴァイヤ神聖公国と戦争の真っ最中です……。」


運良すぎね?

そのフラムスの皆様を説得して戦争でヴァイヤ倒せば神も倒せるじゃないか。

一番最初にたどり着いた町がまさかこんなラッキーな町だとは夢にも思わなかった。


「てか、入れるの?戦争中でさ、イオちゃん軍隊所属なんじゃ……?」

「そこがキモですね。……侵入しますか。」


まぁ、一筋縄ではいかないだろう。

15キロ歩いているうちに、もう日が傾いてきている。

「じゃあさ、夜になるの待とうよ。多分正攻法じゃ無理があるからさ。」

「了解です!作戦考えましょう!」


かくして、「敵国に侵入しよう作戦」がスタートした。


「イオちゃんは持ち物って何持ってる?」

「大体紅茶用のものでして……。茶葉の瓶、カップ2つ、角砂糖がいっぱい……。それと、右手で炎系魔法、左手が水系魔法です。」


あぁ、だからお湯がつくれたのね。

どうでもいいけど引っかかっていたものが取れた。


「えっと……賢司郎さんの持ってる、なんですか?」

「ん?刃物だよ。」


刃物、といきなり言われてもピンと来ないのだろう、キョトンとして刃物を眺めるイオちゃん。

やっぱり刃物は存在しないのか……?


「一回だけ見たことあります。」

「ん?神のとこで?」

「確か切れちゃうんですよね、触ると」


そう。普通のちょっと厨二くさい刃物。


ふと、今まで疑問にすら思わなかったことに気がついた。

これ……包丁でもなければ、サバイバルナイフでもない。

何用の刃物だ……?


「それで……なんで賢司郎さんは刃物を持っているのですか?」

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