第10話 機能(?)


「お給仕って……?えぇ……?」

やべぇもういろんなものが奇想天外すぎる。

情報量が追いつかないって。


混乱しながらイオちゃんを見る。

さっきは怯えてたのに、どうしたんだろう。

「えっとぉ……どこだっけなぁ?」

イオちゃんはさっきからワンピースのポケットをゴソゴソ探っている。


「あったあった〜!」

そう言って自慢げに掲げたのは、水色の蓋がされたガラスのビン。

宝石みたいに透き通ったガラス。見事な模様が刻まれている。


「お、おう。なんのビン?」

「ふっふっふ……なんと!紅茶の茶葉です!!」


……はい。

きっと……神のところでは紅茶の需要が多いのだろう。

「あっ、あの……。」

「さぁさぁお立ち会い!美味しいお紅茶を淹れます!」

俺の言葉は聞いてもらえず、イオちゃんはるんるんと紅茶の準備に勤しんでいる。


陰キャの俺からするとすんごい可愛い挙動なのだが、これを神が作ったと考えると神の不審者感が増してきた。


イオちゃんはどこからともなく洒落たマグカップを二つ取り出し、俺にずいっと差し出した。

「はいっ!ちょっと持っててくださいね!」

「はい……。」


俺にマグカップを渡すや否や、

イオちゃんの右手に赤、左手に青の魔法陣っぽいモノが現れた。


ぽいモノ、と思ったのは、俺らがゲームやらアニメ作品やらで見る魔法陣しか見たことがなかったから。

そして、イオちゃんが何か特別なことをするようにではなく、自然に、慣れた手つきでそれを行ったから。


イオちゃんはさっきの茶葉のビンを取り出すと、何やら複雑な作業に入った。


素人の俺に分かったことは、なぜかビンが空中に浮いて貼り付けられたように動かないことと、赤と青の魔法陣を重ねたところからお湯が出たこと。


透き通った紅茶が俺の持っているマグカップに着地した。


「おぉーー!なんか……凄い……!」

「凄いんですか?絡繰少女部隊は全員できるので考えたこともなかったです。」

どんだけ紅茶飲みたいのだろう。


「ささ、飲んでください!」

「い、いただきます……!」


得体の知れない製法の紅茶。

警戒心が捨てきれないが、俺のために作ってくれたことがちょっと嬉しくて、普通に頂いてしまった。


少し含んで飲み込むと、ちょっと泣けるくらい美味しかった。

「美味しい、めっちゃ美味しいよ!」


「それは何よりです!これ以外思い出せてないので、せめて美味しく淹れようと思って……」

「気負わなくていいって。」


ここに来てから初めての食べ物がまさか紅茶だとは。

「……あれ、この世界って紅茶存在するの?めっちゃ今更だけどさ。」


イオちゃんはしばらく考え込んでから、

「最近の流行りなんですよね……神様の好物ってのもあって、3年くらい前から出回り始めたようです。需要が多いので、寂れてしまった地方に茶葉栽培を教えることでその地方を立て直したりしたこともありましたね。」

と答えた。


むむ、普通にまともな政治だ。

政治系が上手となると、クーデターとかで内乱起こすのは困難か……。


「紅茶は一応作れますが、それだけで生き延びるってのも無理があるので……町でも探しましょう?」


イオちゃんが俺のワイシャツを引っ張った。





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